第二話 目覚めし力は……
今回は少し短めです。
「ほわっつ」
一瞬思考停止。
「『色欲』です」
同じことを二回も言われた。
色欲。てっとり早く言うと、エロい欲望のこと。
「誰がそんな力もっとんじゃー!」
「貴方ですよ貴方」
「なんで僕が色欲なんだよ! 憤怒とかじゃないの?!」
「力はランダムに宿る人を選んでいるみたいなので、男だからパワー系という縛りはありません」
その逆もまた有りです、と続く。
少しでもテンションあがったのが馬鹿みたいに思える。
「あれ、どうしたんですか」
「なんでもない……とりあえず、この超能力はいらない、返上するよ」
「一度宿った力は簡単には取り出せないんですよ」
「じゃあ、この力は使わない……っていうか、相手の心を覗きこめる力なんて……」
……気になるあの子の意中の相手とかがわかったり……。
「いやいやいやいやいや!」
首をぶるぶると左右に振って煩悩を振り払う。
「とにかく、僕はこんな力要らないからな!」
「あ、色欲の力は」
カフカが何か言おうとしているけれど、無視して部屋の外に押し出す。扉を閉めて、制服に着替えながら思う。
もし、あの子にこの力を使ったらどうなるのか、と。
「いや、だからだめだっつーの!」
男女問わず、もし片思いの相手が自分以外の誰かを好きだと知るのは、辛い。幸いにそれが自分だとわかっても、きっとその人に好かれようと思って、力に頼りすぎることになる。多分。
部屋を出ると、カフカは壁際に体育座りしていた。
「実里さん、色欲の力のことなんですけれど……」
なおも説明を続けようとするカフカを手で静かに止めた。
「いい。行ってくる」
「朝ごはんはどうするんですか?」
「学校で食う」
別にカフカが悪いわけじゃない。ただ、自分に宿った力が色欲という、なんというか、釈然としない力だったから、拗ねているだけだ。
「天使だか何だかしらないけれどさ、もう人の家に勝手に入るなよ。安いアパートなら知ってるから言われれば案内してやるし、教会なら近くにあるから紹介してやるからさ。僕が帰ってきたら、引き払ってくれよ。朝飯なら台所に菓子パンがあるからそれを食って、冷蔵庫に昨日の残り物だが野菜炒めがあるし、カップ麺と合わせて昼はそれで凌いでくれ。火は絶対に使わないでほしい」
「……実里さん、優しいですね」
「よしてくれよ。まだ君は怪しい人物ってことで僕の内心評価は微妙なんだ。ただ、超能力とか天使の話は本当みたいだから、無碍にできない心持ちってだけだ」
「それは優しいってことじゃないんですか?」
「いや、これはただのお人好しって奴らしい」
ドアを閉めて、ため息一つ、登校スタートだ。
「後、チャイムが鳴っても出るなよ!」
先ほど初めて会った女の子に家の留守を任せるなんて、と思ったが、天使を追い出したら罰があたりそうだし、何より、ドアを閉める寸前に、『いってらっしゃい』と目の前に浮かんできた言葉が、警戒心を解いてしまったのだろう。そう言うことにしておこう。




