母さんを思い出す
両親は、神父さんに捕まってしまいました。想像通りの展開ですが、ぼくを神父さんに預からせて欲しいそうです。そして、魔法などを教えたいってことらしい。なんなら、ぼくを養子にしてもいいって言っています。
父は、戸惑っているようですが、母は、絶対だめですと睨んでいます。
ぼくの家は、はっきりいって貧乏です。
何度も言うようですが、田舎の農家の三男なんて、将来の展望がないのが普通なようです。常に上の兄たちの小間使い? 的な存在なようで、神父さんはぼくの能力からみて勿体無さすぎるって。
ぼくとしては、一歳で親から離れるなんてのは嫌かな?
母が、絶対ぼくを渡しませんと言い切ってくれた時は、ちょっぴり涙が出ました。
神代 長流だった時、ぼくは母子家庭で、母と二人だけの家族でした。
父は、ぼくが生まれる前に事故で亡くなって、親戚も何もない中で、母が必死になって働いて、何か手伝いたいと一生懸命になっていた子供時代を思い出しました。
《ごめんなさい、母さん。俺が死んでしまって、1人にさせてしまって本当にごめん。最後、学校よりもゲームばかりのヒッキ―になって、手伝いもしなくなっていた。今頃後悔しても遅いよな・・・。せめて、今度の母の事は、今の気持ちを忘れずに親孝行頑張りたい》
「ぼくは、どこにもいかないよ。ママのそばにいるの~。それで、ママと結婚するの~」
どうせ一歳児なんだから、これぐらいは許されるかな? でも、ちょっと待てよ。一歳の子って、こんなにしゃべれるかな? 一応子供っぽく言ったつもりだったけだ、これって三歳ぐらい?
やばい、神父さんの目がキラキラしている。
視線はしっかり、ぼくにロックイン。後ずさっていいかしら?
「お・お兄ちゃん!! ぼく、お外に行きたい」
慌てて、長兄の手を掴んで、玄関のノブに手を掛けて、外へ飛び出しました。
その初めて見た外の世界は、まさしく田舎でした。
ぼうや~♪なんて歌いたくなるような、長閑な風景。ここが、ぼくが生きていく場所。
思いっきり息をすって、ぼくは長兄の手を引っ張って駆け出した。
「ね・ねえ。あれは、何?」「これは?」
尋ねると、後をついてきた次兄が、いろいろと教えてくれる。
「ああ、ココリスの花だね。この花は、傷クスリになるから覚えておくといいよ」
なんて、ふうにです。長兄は、黙って辺りを見渡しているけど、なんでだろう?不思議に思って、ちらちら観察。どうやら、危険がないか確かめたり、守ったりしてくれたいるようです。
11歳のはずだけど、さすが兄さんなだけあるかも。 長兄は、どちらかというと、肉体派かな。名前もガイ。ぴったりだよね。
次兄は、先ほどの問答でも分かるように頭脳派。8歳で、名前は、エドアール。
えっ? ぼくの名前? ・・・シャイールです。かなり、恥ずかしい。
ついでに両親の名前も教えよう。
父が、ハーバード。母が、ミルル。両方とも28歳。全員で5人。前世に比べると、明らかに沢山の家族に恵まれていると思う。
そして、2度と会うことのできない母さんを想い、切なくなって本当に泣いていた。
この体が1歳だから、どうしても気持ちが引きずられるのだ。
突然泣き出したぼくを、エドアールが抱きしめて背中をぽんぽんと軽くたたく。それがもっと胸に詰まって、疲れて眠るまで、ぼくは泣き続けた。