表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
過去の縁と現在(いま)の縁
9/20

闇の追憶

キャラ紹介


白縫樟葉


15歳

143cm

37kg


瞑の妹。10年前のフェンリル事件で死亡。冥府に満ちる負のエネルギーを手にして現世に出現。「世界を終わらせること」が使命と言っている。死の呪いで全ての邪悪を解き放つ。未だ謎に包まれている。

 私と白縫さんと樟葉さんは昔、良く一緒に遊んでいました。私達が出会ったのは、10年前、フェンリルが襲来する半年前です。


 私の両親はとても忙しい方で各地を点々と回っていました。小さかった私はただ両親についていくだけ。そしてある日、あの町への移動が決まりそこに滞在することになりました。


 各地を点々としていた私は友達と呼べる人がいませんでした。だって、親しくなってもすぐに離れ離れになってしまうから…。


 あの町でも私は1人でした。両親は仕事で忙しく私の相手をする暇なんてなく、私は1人家の庭で遊んでいました。


 そんな時、声を掛けてくれた方がいました。



「お前、一人なのか?良かったら俺らと遊ばね?」


「私?」


「お前以外に誰がいるんだよ」



 その方は無邪気な笑顔を浮かべ私を遊びに誘ってくれたのです。その隣には可愛らしい女の子も一緒でした。



「1人より、皆で遊んだ方が楽しいよ♪」



 その女の子も同じく無邪気な笑顔を浮かべていました。今までずっと1人だったから2人の言葉とても嬉しく思えました。



「私でいいなら」



 2人は顔を見合わせて、笑顔でこちらに手を差し伸べました。私は戸惑いながらもその手を掴みました。



「俺は白縫瞑。瞑でいいぜ、そんでこっちは妹の―」


「樟葉だよ。よろしくね♪」


「私は……柊月夜」


「あぁ、知ってるぜ。この間引っ越してきたやつだろ?ずっと話してみたかったんだ。な、樟葉」


「うん、でも大人たちがあそこには近づくなって。本当、ヤになっちゃうよね?でも良かった、遊びに誘えて。今日から友達だね♪」



 それが私と白縫さんと樟葉さんの出会いでした。暫くそこに滞在することになっていたのでその間は皆で遊ぶことにしました。



「ただいまー」


「どこ言ってたの?」


「ちょっと友達と遊んでた」


「そうなの?良かったわね。心配してたのよ、私達のせいで友達できないんじゃないかって。ね、お父さん?」


「あぁ、でも良かったよ。友達は大事にするんだぞ」


「うん!」



 両親も私に友達ができたことを心の底から喜んでいました。その日、どれだけ心配させていたのかを肌に感じました。


 それから、あくる日もそのまたあくる日も、私達はずっと3人で遊びました。鬼ごっこにかくれんぼに砂遊び等々。3人の誰もがこんな日がずっと続くと思っていました。いや、あの町の住民全員が平和な日常が続くと思っていました。あの日が来るまでは……。


 あの町に滞在してから半年後、それはなんの前触れもなく起きたのです。突然、町にフェンリルが出現し町をことごとく破壊し尽くしました。鋭い爪のついた大きな手で薙ぎ払い、口から炎を吐いて辺り一面を焼き尽くし、その咆哮で全てのものは崩れ去りました。


 私の両親は私を庇い、瓦礫に挟まれ亡くなりました。私は両親のお陰で助かりましたが、目の前の現実が受け止められず、1人、物陰に隠れて震えていました。


 怖くて、怖くて身動きが取れず逃げ出すこともままなりませんでした。そんな時、とてつもない轟音が聞こえ、びっくりしてそちらを見ると高い砂煙が舞い、そのの中で立ち尽くす1人の影とその足元に転がる少女の死体。そして、瓦礫の海と化した町。何がなんだかさっぱり理解できませんでした。


 そして、見てしまったのです。砂煙が晴れ、そこにたっていたのは白縫さんでした。漆黒に輝く剣を片手に不敵に笑う彼の姿が…。普段の表情とは正反対で、冷たく、冷酷でとてつもなく不気味でした。


 言葉を失い、現状の把握に戸惑っていると彼は漆黒の剣を地面に落とし、さっきとはまるで別人の――元の表情カオに戻り、まっすぐある一点を見つめながら一歩一歩、踏みしめながら歩き出しました。


 その見つめていた一点を見てみるとそこには、右腕を無くした樟葉さんが瀕死の状態で倒れていました。目の前に横たわる少女を抱きかかえた白縫さんは自分の行いを戒めるかのように泣いていました。



「その時のことはあなたも知っているでしょう。その後私はここの学園長に引き取られ、現在に至ります」


「そんな事が…。じゃあ、あの子もアリサと一緒ですでに死んでるって事?」


「そうなりますね」



 リリアが尋ねると月夜は肯定した。



「ですが、どうしてあなたが?そこのアリサさんも、樟葉さんも、もうこの世にはいないはずです!」


「えぇ、私達はすでに死んでいる。でも冥府の力は絶大でこうして現世に現れることもできる。そして、今の私の使命はこの世界を終わらせること」


「そんな!?それが本当なら私はあなたをやらなければならりません」



 樟葉はその言葉に一切返答しなかった。月夜は弓を構え、一点集中で矢を放つ。



「んふふ、そろそろみたいですね。では、置き土産にあなたに死の呪いをあげますね」



 樟葉は放たれた矢をすり抜け、月夜の額に手を当てる。なにやら呪文のようなものを唱えて離れた。



「あなた、月夜に何をしたの!?」


「死の呪いをかけてあげたのですよ。そのうち効果が出てくると思うから楽しみにしていてくださいね♪」


「待ちなさい!!」



 だが、樟葉は蝙蝠こうもりが飛び散るように闇の中へと不敵に笑いながら消えていった。それと同じタイミングでエンケラドスが動き出し、学園への侵攻を開始する。




『エンケラドスが動き出しましたわ、作戦開始です!わたくし達が海へ誘導しますのでそっちに着いたら頼みましたわよ、白縫瞑』


「了解」



 エンケラドスがついに動き出し、学舎側でも戦闘が始まったみたいだ。俺とイリヤは海辺で待機しているわけだが、非常に暇だ。



「ねぇ、前に言ってた失ったものって聞いてもいい?」


「あ、あぁ…」



 イリヤが唐突に思いがけない質問を投げかけて来たのでちょっと焦った。



「10年前、ある出来事で妹を亡くしたんだ…。俺のせいで」


「そうなんだ……なんか、ごめん」



 イリヤが申し訳ないとばかりに謝って来た。別に謝らなくていいのに。



「いいよ別に」


「本当?」


「あぁ」



 聞いてきたのはイリヤだが、自分で判断して話したんだ。イリヤに罪はないんだけどな。



「で、でも!妹さんは、瞑のせいだなんて思ってないと思うよ」



 イリヤの純粋な言葉に何だか涙が出てきそうになる。本当、イリヤは純粋だよな。



「ありがとな」


「えへへ♪」



 俺がイリヤの頭を撫でてやるとイリヤはくすぐったそうに照れ笑いを浮かべていた。本当、こうしてると樟葉のことを思い出すな。



「昔話ですか?私を仲間外れにするなんて水臭いですよ」



 突如、俺のものでもイリヤのものでもない声が聞こえてきた。それは暗闇の中から突如現れた。蝙蝠が集まり人の形へと変化する。



「樟葉…。やはり、あの時の声もお前だったんだな」


「もしかして、あの子がさっき言っていた瞑の妹さん?でも、10年前に……」


「あぁ、白縫樟葉。正真正銘、血の繋がった俺の妹だ。なんで今ここにいるかは知らないけどな」



 死んだ者が蘇る?そんな非科学的なことが有り得るのだろうか。



「やだなー、よそよそしすぎですよ兄さん。私を殺したのは兄さん自身でしょ?先程、月夜さんにもあって来ましたよ♪」


「月夜に!?無事なのか!?」


「えぇ、想像以上に。昔話も聞けましたしね。楽しみにしていてくださいね♪」



 ?何か引っかかる。なんで月夜の名前を知ってるんだ?樟葉と月夜は初対面のはずでは?あれ、でも昔話っていったよな。……思い出せない?



「やはり、忘れてしまっているのですね」



 俺の心の声を読み取ったかのようにそう発言した。



「どういうことだ?」


「兄さんが手にした力の副作用と言ったところでしょう。強大な力には代償がつきものです」



 それは一理あると思う。だが、この力を望んだのは紛れもない俺自身だ。自分への罰だと思えば怖くないか。でも月夜にはなんか悪いな。



 「お前の目的は何なんだ?」


 「世界を終わらせることですよ」


 「世界を終わらせる?なぜそんなことを!?」



 一体、樟葉に何があったって言うんだ!?



 「それは言えません。ただ、兄さんには関係のない事です」



 樟葉はイリヤの方に目を向けると何やら思惑に満ちた表情をした。一体、どうするつもりだ?



 「イリヤ下がってろ」



 俺は危機を感じ、イリヤを庇うように前に立ち塞がる。



 「体を張って守るなんて随分男前になられましたね。妹として鼻がたかいですよ♪ですが、それで守っているつもりですか?」



 いつの間にか樟葉はイリヤの背後に回っていた。そして、イリヤに手をかざし何やらやった後で離れる。



 「用件も済んだので帰りますね」


 「待て、まだ話が……!!」


 「そう遠くない内にまた会えますよ」



 そう言い残し、樟葉は去っていった。現状に至る全ての現況は俺にあるってことか。



 「イリヤ、大丈夫か?」


 「うん、大丈…夫」



 どこか無理した表情ながらもイリヤは無事を主張してくる。まぁ、イリヤが言うなら大丈夫か。それにしても、死者の蘇りか。現状、俺達が考えてる以上に深刻な問題なのかもな。

感想などくれると有り難いです。これからの参考にもなるので宜しくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ