復讐の誓い
リリア・シルフィ
16歳
167cm
48kg
武器…フライクーゲル(銃)
ツーサイドアップにしたブロンズ色の髪が特徴の転入生。10年前のフェンリル事件で妹を殺されてからずっと復讐心を抱いている。皆とは仲良くやっているが、やはり瞑とは上手くやっていけず…。
「何度見ても綺麗な海だな」
イリヤ達は後、数分かかるらしい。今朝メールで『準備があるから先に行ってて』とイリヤからあったのだ。女の事情と言う奴らしいが俺にはようわからん。
俺は先に来てパラソルやシートを設置していた。格好は海パンにパーカーだ。
海を眺めていると木々の隙間を誰かが進んでくる気配がした。そっちに目をやると……
「リリアか……早かったな」
「……」
無反応…。それどころか如何にも不機嫌な顔して立ち去ろうとしてる……。
「待てよ!どうしてそんなに俺を嫌ってるんだ?」
「……」
俺が呼び止めるとリリアは立ち止まった。だが、返答はない。
「そんなに俺の事が嫌いなのか?」
「……」
「教えてくれ!俺がお前に何をしたか」
「……………………………本当に、わからないの?10年前のフェンリル事件」
10年前?フェンリル?まさか……。
「忘れたとは言わせない!あの時あなたが殺した少女は――」
リリアはひと呼吸おいて話し始めた。
「私の……妹よ!」
そんな、まさか……。だから、あんなに目の敵にされていたのか。当然の報いって奴だな。あの時俺は数え切れない人達を殺してしまった。あの一件以来俺は人々の悲しみも憎しみも怒りも全て背負ってきたつもりだった
だけど、それで罪が償えるなんて1ミリも思ってなかった。それは事実だ。でも、リリアがあそこで死んだ少女の姉だったなんて…。そりゃ、あんな目で見られて当然か。
リリアはルクシオを展開し、右手に銃を構える。そして、俺の頭に突きつけてくる。
「名簿のプロフィールを見た時にわかったわ、あなたが10年前の惨劇を起こした張本人だってね」
怒りや恨み、その他負の感情が湧き出ているようだ。
「その時私は既にイルヘルムに所属していたわ。全校集会でその事件のことを聞かされた。その時映像にはっきりとあなたが映っていたの。返り血を浴び、町全域を崩壊させていくあなたの姿がね!」
俺以上に辛く悲しい日々を過ごしてきたのだろう。よもやあそこで死んだ奴の全ての憎しみを背負ってるかのように…。
「その時私は復讐を誓ったの。妹を殺した奴を絶対許さない、殺してやる!とね。そして今、目の前にその復讐の対象がいる。あの時の報い、死んで償ってもらうわ!」
リリアは引き金に人差し指をかけた。
「最後に何かいうことでもある?」
「いや、これは俺が受けて当然の報いだからな。それで気が済むんなら思い通りにやってくれ」
「随分、いさぎいいのね。じゃあ、お言葉に甘えさせてもらうわ」
そう言い、引き金を引こうとしたその瞬間、
「お待たせー!ん?2人で何してるの?」
突然の声に俺もリリアも驚きそちらを向く。リリアは引き金にかけた指を外し武装解除する。声のした方を見るとそれはすぐ分かった。その声の主はイリヤだった。イリヤと一緒に他の面子も集結していた。
(続きは後にしよう)
リリアは小声でそんなことを伝えてから皆の輪に入っていく。
「いや、なんでもないよ。ちょっとした世間話、かな」
「ふーん、そっか。…ねぇ、瞑。どう…かな」
「どうって?」
「水着にきまってるじゃん!」
「あ〜」
イリヤは水色の生地に白いフリルがついたビキニタイプの水着を着用していた。いかにもイリヤらしいと言った感じの水着だ。
「イリヤはやっぱ綺麗だな」
「そ、そう?♪」
「あぁ、とても似合ってる」
「……綺麗、か。えへへ……♪」
「白縫瞑!特別にわたくしの水着姿を見てもいい権利を差し上げますわ」
皆の所に戻るとリズが歩み寄って来た。そして、腰に手を当ててさっきのセリフを口にした。リズの水着は黒のビキニタイプで腰にパラオを巻いている。大人っぽい水着だ。
「大人っぽくて、リズらしいな」
「ほ、褒めても何も出ませんわよ」
「でも、『水着どうしよう』とかって一生懸命悩んでたよね。ねぇねぇ、僕達には何もないわけ?」
その声に振り向くと栞枝が不敵な笑みを浮かべてこちらを見ていた。何か企んでいるのだろうか。栞枝の後ろには藍璃が隠れるようにしてくっついている。栞枝の隣には出來もいる。
栞枝は黄色と黄緑のボーダー柄のセパレートタイプだ。下にはショートパンツ的なのを履いている。栞枝らしい活発な印象を受ける。
藍璃はピンクのワンピースタイプで下はスカートみたいになっている水着だ。出來は純白のビキニ姿だ。
「皆、似合ってるな」
「ふふん、そうでしょ♪」
なぜ栞枝はこんなに自身に満ち溢れた感じなのだろうか。藍璃はその後ろで頬を赤くしていた。熱でもあるのだろうか。
「そう言えば、侑以と月夜は?」
ふと、侑以と月夜がいないことに気づいた。どうしたのだろうか?
「月夜も侑以も急用が入ったみたいでさ、後から来るって」
俺の問いに栞枝が答えてくれた。そうなのか。やっぱ優等生っていうのは大変なのかな。
遅れてくる侑以と月夜を除き全員集まり、皆各々で楽しみ始めた。栞枝と藍璃は近くの桟橋に釣りに行った。『大物釣ってくるから楽しみにしててよ』と栞枝は自信満々だったが少し不安だ。
イリヤは子供みたいに砂で城を作っていた。しかも結構でかいやつ…。リズとリリアはサンベッドで横になっている。出來はシートの日陰になっているところで本を読んでいた。
「ここでも読書なんだな。そんなに面白いのか、その本?」
「うん、面白い。読みたい?」
「いいのか?」
「うん、もうちょっとで読み終わるから後で渡すね」
「おう」
かなり絶賛してるみたいだし面白いんだろうな。
「ふぁーあ」
俺は盛大なあくびをしてしまった。こうもいい天気だと眠くなるな。少し寝るか…。横になり目を瞑るとすぐに睡魔に飲まれていった。
◆
どのくらい寝ただろうか。何故か体が重い…。目を開けるとそこには大きな砂の城が俺の胴体にたっていた。……全く状況が理解できない。
「あ、瞑起きた?」
城を作っていた張本人がそんなこと言ってきた。よく見ると首から上を残して全て砂に埋まってるではないか。
「あ、あぁ。……で、これはなんなんだ?」
「見ての通り、お城を作ってるんだよ?」
それはわかるのだが……。
「何故俺は埋められてるんだ?」
「皆で相談してこれが一番いいって事になったの」
「そうなった経緯を教えてくれ」
「成り行きで?」
どんな成り行きだ……!?何か栞枝が一番爆笑してるんだが…。もしかして、主犯はあいつか?
なんとか脱出して、見渡すと侑以と月夜がいた。俺の寝ている間に来たのだろうか。
夕食はバーベキューなのでその準備を終え、早速焼き始めた。イリヤは余程楽しみだったのかかなりテンションが上がっている。まぁ、バーベキューってなんか楽しいよな。特に大勢でやるとな。
俺が浜辺の石に座って串焼きを食べていると学園長がやってきた。栞枝達は残念ながら釣れなかったようだ。そのかわり、侑以が報酬で貰ってきた魚を食べることにした。
「おお、やってるな」
「学園長どうしたんですか?」
「いやな、仕事も一段落したからの、目のほ……ではなく新鮮な空気を吸いに来たのだ」
目の保養って言おうとしたよな。まぁ、大方予想はつくが……。
「楽しかっただろ?」
「まぁ」
「それはそうだろう!女子の花園を拝めて喜ばない男はいないからな」
「違いますって!」
確かに皆綺麗だけど別にそんな目で見てたつもりは……!
「瞑!はい、焼きそばとって来たよ♪」
学園長と話しているとイリヤが2人分の受け皿に焼きそばをそれぞれ持ってやってきた。
「サンキュ」
「お主ばかりずるいぞ!何故わたしには何もないのだ!!」
すると、秘書の方が学園長を肩に担ぎ連れていった。……ありがとうございます、秘書さん。
「さっきの学園長先生だよね?どうしたの?」
「やじをさしに来た……かな」
「……?」
イリヤは首をかしげていたが、あの人のことは深く話さない方がイリヤの身のためな気がする。その後も俺たちは夜のバーベキューを暫し楽しんだ。
片付けを終え、皆で寮に帰ろうとしたが月夜が立ち止まって空を見上げていた。
「どうしたんだ?皆行っちまったぞ」
「いえ、ちょっと嫌な予感がして」
「予感?」
「はい。ですが、多分気のせいです。忘れてください。さぁ、戻りましょうか」
嫌な予感…か。特に何もないようだが月夜は何かを感じとったのだろうか。少し気にはなったが月夜の後に続いた。
ドォォォォォォォン!
突如巨大な地響きが起こった。俺は咄嗟に月夜を抱き変えて支えていた。発現元は学舎の方面だ。
「何なんだ、今のは?」
「わかりません。とりあえず学舎の方に向かいましょう」
「そうだな、皆のことも気になるしな」
「はい」
7話まで見てくれた人ありがとうございます。自分なんぞまだまだですが、感想・評価・ブクマどれでもいいので下さると有り難いです。それを元に頑張っていきたいと思うので宜しくお願いします。
今後もまだまだ続きますのでここまで見てくれた方はこれからも読んでくださると感激です。