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聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
解かれる記憶
19/20

希望の光

閲覧ありがとうございます。

「まずこれを観てもらいたい」


 四ノ宮先生はそう言うと中央のモニターに映像を映し出した。ある廃れた町で闇黒獣ダークネスと思しき巨大な黒い影が暴れている映像だった。


「この影はこのまま姿を消した」

「正体は分かりませんの?」


 はじめに質問したのはリズだった。


「砂埃が激しくわかるのはシルエットだけだ」

「正体も居場所もわからずに同対処するのさ」


 栞枝の質問も至極真っ当だろう。だが、俺はあの場所を知っている。……あれはフェンリルの襲来で崩壊した俺の故郷だ。なぜまたあの場所に?


「瞑?」


 下を向いて俯いていた俺の顔を覗くようにイリヤが呼び掛けてきた。


「どうしたの?そんな難しい顔して」

「いや、別に」

「白縫、何かあるのか?」


 四ノ宮先生もこちらに振ってきた。


「いえ、何でも……ありません」

「そうか、では続きを話す。コイツ、仮にunknownとしよう。unknownの所在は未だ掴めていない。だが、いつここへ攻めてくるかもわからん。詳細がわかり次第連絡しよう。皆にはいつでも出撃できる準備を整えて置いてもらいたい。以上だ」


 それで解散になった。ミーティングルームから出てみんなの後を追い自室へ戻ろうとした時、端末に送信者不明の一通のメールが届いた。


『始まりの場所で待ってるね 樟葉』


 メーセージはそれだけだった。樟葉は闇黒獣を支配している。あのシルエットの奴もあいつが……。始まりの場所とはあそこに間違いない。狙いは俺1人、みんなを巻き込むわけには行かない。

 それに間違った道を進む妹を連れ戻すのは兄貴の役目だ。これが最後の戦いだ。樟葉もイリヤもみんなも必ず救う!



 翌朝早朝、俺は1人支度を整え寮を出ようとした。が、ふと後ろから呼び止められた。


「瞑!」


 俺を呼び止めたのは制服に着替えたイリヤだった。


「イリヤ?どうしたんだ、珍しく早起きじゃないか」

「どうしたじゃないよ!瞑こそこんな朝早くからどこ行く気?まさか、昨日の……」

「ただの散歩だよ」

「散歩にそんな荷物必要?皆を守るためにとか考えてるんじゃ……」

「しょうがないだろ!あいつ……樟葉の狙いはこの俺だ。これは俺たちの問題なんだよ!関係ない人達を巻き込むわけには――」

「関係なくないよ!」


 イリヤは俺の言葉を遮りそのまま続けた。


「樟葉は私、正確にはリオにとっても大切な存在なんだよ!?それにみんな部外者だとは思ってないよ。もうとっくに巻き込まれてるし。それなら最後までやりきらなくちゃ」

「……そうだな。リオも大切な存在だ。俺とお前で樟葉を救おう」


「待ちなさい!わたくしたちをお忘れではなくって?」


 声の下の方に目を向けるとイリヤの後ろにみんな勢ぞろいしていた。


「あなたには借りがある。次は私があなたを助ける番よ」

「私も同じく」


 リリアと月夜が後に続く。栞枝と侑依は戦う気満々、藍璃と出來はいつも通りパソコンだったり本に目を落としているが皆と同じ気持ちらしい。


「俺が何行っても付いてきそうだな。……行くぞ、これが本当に最後の戦いだ」


 アロンダイトの力で空間を切り裂いて道を開き、その中に入っていく。




「帰ってきたんだな」


 目的の場所へとたどり着く。フェンリル事件の時から何一つ変わっていなかった。前ならここの光景を見ただけで動けなくなっていただろうがイリヤやみんなのおかげ闇を受け入れ過去を乗り越えられた。


「余計なのがたくさん付いてきちゃってるね」


 なんの前触れもなくそれは突如姿を現した。町全てを覆うような黒い巨体を持った禍々しいドラゴンが現れた。その上には……


「樟葉」

「まぁ、予想はしてたけどね。でも邪魔者は排除しないと」


 そう言って樟葉が手をかざすと地面から様々な形をした骸が這い出てきた。


「これは!」

「さぁ、みんなやっちゃって!」


 骸達は俺とイリヤ以外に攻撃しはじめた。


「私たちは大丈夫よ!」

「樟葉さんを必ず救ってください」


 リリアと月夜が応戦しながら送り出してくれる。みんなありがとう。


「待たせたな!最終決戦と行こうか」


 俺はアロンダイトを解放し、翼を展開する。


「イリヤ、援護を頼む!」

「任せて!」


 ドラゴンは背中の棘を触手のように伸ばし攻撃してくる。なんと剣で弾くがそれでも手数が多すぎて処理しきれず直撃しそうになったがイリヤが大きな水球を飛ばし援護してくれる。

 棘を避けながらドラゴンの目の前で来た。もうちょっと樟葉のとこへたどり着くというところでドラゴンは口を大きく開け、火炎を吹いてきた。


「くそ!」


 イリヤは棘に阻まれてここまで攻撃出来ない。ここで終わってしまったら全て終わりだ。


『全く、見てられんわ。妾が力を返してやる』


 頭の中にネメシスの声が響き渡った。すると体の底からパワーが溢れ出し、炎を切り裂いた。


「なんで!?」


「くずはぁぁぁぁぁぁぁ!」


 俺はその勢いのまま樟葉目掛けて飛びアロンダイトで切り裂いた。こいつの能力は闇を切り裂く。推論が正しければこれで樟葉は元に戻るはず。


「瞑、樟葉は?」

「気を失ってるだけだ。暫くしたら目を覚ますだろう」


 操っていた樟葉が元に戻ったのにも関わらず、ドラゴンは消えなかった。


「どういう事だ?」

『あやつを倒すには闇黒魔ダークネスそのものを封印せねばならん。だが、それには……』


 ネメシスは言いづらそうに口をつぐむ。


『ホムンクルス……つまりイリヤの命を引換にしなくてはならぬ』

「そんな……」


 そんな事、だって……。


「瞑、私どこかで分かってたんだ。こういう時が来るって」

「イリヤ」

「私やるよ。それでみんなを救えるなら」

「おい、待てって。他に何か方法が」

「さようなら、瞑。楽しかったよ。みんなにも宜しくね」


 イリヤの体は光だし宙へと浮いた。その光はドラゴンを包み込んだ。が、そこに何かが入ってきてイリヤを突き飛ばした。


「あれは……」


 無数のホムンクルスがドラゴンを囲み巨石に封印した。


「瞑、私……」


 イリヤにも何が起きたか理解出来ないらしい。


「終わったんだ何もかも」


 こうして俺たちの戦いは幕を閉じた。

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