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聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
解かれる記憶
17/20

紅月の咆哮

キャラ紹介


ルリ(???)


年齢 5歳

身長 110cm

体重 19.1kg


公園近くの森の中にあった祠の中に入っていた謎少女。瞑達と一緒に過ごすことになるがその正体は闇黒魔。普段は人間として生活しているが紅月の夜になると巨大な狼へと変貌を遂げる。瞑とは最後に重大な約束をした。


用語解説


ルクシオ


闇黒魔に対抗する為の力の総称。人によって異なる武器を顕現できる。それは思いの力や遺伝など様々な理由で決まる。今の所闇黒魔に対抗し得る手段はルクシオの他にない。

「うぅ……」


 眩しい陽光に照らされてゆっくり目を開けるとそこは豊かな自然を肌に感じる広場のような場所だった。周りは木々に囲まれており中央に大きな噴水がありその周りで子供達が元気良く遊んでいる。


「ここは……?」


『そこは11年前の日本、フェンリル事件の約1年前。全てが始まった日さ』


「11年前の日本……」


 ふと脳裏に記憶の断片が蘇る。

 ――そうだ。ここは俺が昔住んでいた所だ

 周りを見回すと2人でボール遊びをやっている男の子と女の子がいた。あれは幼い頃の俺と樟葉じゃないか。





「お兄ちゃん、行くよー!ハニーサイドスマーッシュ!」


「って、おい樟葉。どこ投げてんだよ!」


「ごめーん!ちょっと力が入りすぎちゃったみたい」


 樟葉の投げたボールは瞑の頭上を飛び越え背後にそびえる森の中へと転がっていった。


「ちょっととってくるから待ってろよ!」


「はーい!」


 瞑は転がっていったボールを追い、森の中へ入っていった。予想以上に転がっていったのかなかなか見つからない。


「ないなー。そんなに奥まで行ったのか?」


 探し回っているうちに少し開けた場所に出た。そこの中心にボールが落ちていた。


「あった!要約見つけた」


『た………けて』


 ボールを広いあげて来た道を戻ろうとするとどこからか声が聞こえてきた。


『たす……けて』


 また声がする。聞き間違い出ないことは明らかだ。顔を上げるとさっきボールが落ちていた辺りに祠が立っていた。周囲は太い縄を岩に結びつけて守られている。


『助けて、ここから出して!』


 どうやらその祠から聞こえてきているらしい。さらに耳を済ませて聞いてみる。


『誰か、助けて。ここから出して!怖いよぉ……。暗くて狭くて寂しいよぉ。誰か、私をここから出して!』


 瞑は気付いたら体が動いていた。そして、縄を跨ぎ、祠に貼ってあった御札を剥がし扉を開けた。するとそこには瞑と同じくらいの女の子が入っていた。

 俺はその女の子を外に出してあげ、尋ねる。


「なんでこんな所にいたんだ?」


 女の子は要約落ち着いてきたようでゆっくりと瞑の質問に応えた。


「……わかんない」


「わかんないって、親はどうしたんだ?」


「わかんない」


「もしかして捨てられたのか?」


「……なにも、わかんない」


 少女はわからないの一点張りで話が進みそうになかった。


「お兄ちゃーん?何してるの?遅いから心配したじゃん!ん?その子誰?」


 背後の茂みから樟葉が出てきて祠の中にいた少女をのぞき込む。


「そういや、自己紹介まだだったな。俺は瞑。こっちは妹の――」


「樟葉だよ。あなたのお名前は?」


 樟葉の問い数秒間があいたが少女はその口で自分の名前紡ぎ出す。


「……ルリ」




「そうだ。思い出した!あの後ルリをうちで引き取ることになったんだ」


『漸くおもいだしてきたようだな。これが全ての始まりさ』


「全ての……始まり?……ダメだ、肝心なところがもやがかかって思い出せない!」


『では、少し先に送るぞ』




 それは真紅に染まった満月の日だった。ルリは海に面した洞窟にほど近い岩場で突如胸を抑えて苦しみ出した。


「うぅ……ぅ」


「大丈夫か!?少し休むか?」


 だが、瞑の声は何一つ聞こえていないみたいだ。ルリの苦しみはさらにまして行き呻きから叫びに変わる。


「うぁぁぁぁぉぁぁぁぁぉ!!」


「うっ……!」


 瞑はその叫びが生み出す風圧に押される。ルリの身体はみるみる変化していく。紅く光った眼光、大きな爪のついた大きな手、縦横無尽に生えてくる大きな牙、それはまるで怪物のようだった。だが、怪物になるのとは裏腹にルリの目からは涙がこぼれ落ちる。


「瞑、タスケテ。誰も傷つけたくない!だから、私を殺して!」


「そんなの……そんなの出来るわけないだろ!!」


「瞑は、優しいね……でも……私を殺さないと……甚大な被害が出るよ」


 ――確かにその通りだ。俺だけじゃなく家族や町の人も巻き込んでしまう。だが、だからといってルリを殺すなんて出来る訳ない!


「もう……限界みたい。うぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!」


 ルリは巨大化し、本物の怪物みたいになってしまった。まるで巨大な狼だ。


「くそっ、俺はどうすればいいんだ!」


 巨大な狼はその巨大なな手で地面を割った。


「くっ……」


 俺は間一髪崖に捕まったがいつまで持つかわからない。一体どうすれば!


『このままではお前死ぬぞ』


 いつの間にか俺は白一色で包まれた空間にいた。


「ここは?」


「ここはお前の精神世界だ。そして私はエレミア、お前の中に眠る能力ちからだ」


「俺の中に眠る力?」


「まぁ、今は封印されている状態だがな。だが、お前が力を欲するならば封印をときお前に奴を救う力を与える」


 瞑はルリと一緒に過ごした日々を振り返った。祠に閉じ込められていた謎の少女、家族みんなと飯を食い、妹と3人で公園で遊んだり、祭りなどのイベントにも行ったり、それぞれがかけがえのないルリとの思い出だった。

 瞑は現実に戻り、決心を固めたように拳をギュッと握った。


「俺は……俺は、ルリを助けたい!ルリを救う力が欲しい!お前が俺の中に眠るものなら封印を解き放ち俺に力を貸せ!」


「ふっ……。その言葉しかと受け止めた!私はお前だ、存分にその力使うがいい!」


 精神世界から戻った瞑はルリの姿を確認した。ルリの進む先には町がある。早く止めなければ!


「ルリーーーーーーーー!こっちだ!俺はまだ生きてるぞーーーー!」


 瞑が叫ぶとルリはゆっくりと瞑のいる方向へ進路を変える。


「こっちだ!」


 人のいない方へと誘導していく。


『心に強くイメージしろ。己の中に眠る強き力、強き思いを――』


 ――俺の中に眠る強き思い

 瞑は右手で拳を作り胸に当てる。

 ――俺はルリを助けたい!

 すると右手に棒状の光る物体が出現した。それはみるみる形を変え1つの光の剣となった。


「ルリ、今すぐ自由にしてやる」


 瞑は大きくジャンプし巨大な狼へ向かっていく。心なしか瞑の背中に光る翼が見えた。


「チェストーーーーーーーーーーーーー!」


 巨大な狼は一刀両断された。光の粉が空へと消えていく。その中心からルリと思しき少女が落ちてくる。


「ルリ!」


 瞑は間一髪でルリを抱きとめた。だが、その髪は透き通る銀色になっていた。


「め……い?」


 ルリはゆっくり目を開けて力なく発言する。


「瞑なら……殺ってくれると……思ってた、ゲホッゲホッ」


 ルリは吐血していた。その血は赤ではなく黒かった。


「最後に1つ……約束、して。次に会った時……結婚しよっ?」



『お前が解いたあの祠の封印は闇黒魔ダークネスの封印だったのさ』




「そしてそれから1年後、フェンリル事件が起こり、それから次々と世界は闇黒魔の危機に冒されることになった。どうだ?思い出したか?」


 全て俺が悪いんじゃねぇか!俺が世界を絶望に導いたも同然だ!樟葉やリリアの妹を殺したのも俺じゃないか。


「まぁ、お前が全て悪い訳では無い。あの封印は3重に封印を張っており、お前が解いたのはその1つだけだからな。恐らく誰かがその機に便乗し、残りの封印もといたのだろうな」


「じゃあ、そいつが残りの封印を解いたからルリはあんなことに!?」


「いや、あの娘は最初からあぁなる運命だったのさ」


 ――あれが運命なんて残酷な運命なんだ。


「さぁ、そろそろお前の迎えも来る頃だろう。あの娘を起こさないとだし戻るぞ」


「迎え?」


 ◆


「瞑ーーーーーーーー!出來ちゃーーーーーーーん!」


 出來を連れて浜辺に戻ると船が1隻こちらに向かってきていた。イリヤが甲板から身を乗り出し手を振っている。


「お前らの通信機、壊れてたみたいだから直しついでに使わせてもらった」


 いつの間に……。


 船が到着し、出來が先に船に乗り込む。


「お前は乗らないのか?」


「いや。ありがとな、エレミア。また助けられちまった。いつでも戻って来ていいからな」


「その名で呼ばれるのも久しいな。今のお前には私なぞ必要ないだろ」


 エレミアへ冗談時見た感じに笑う。


「そんなことは無いよ。今度は俺が助ける番だぜ」


「ははっ、楽しみにしてるよ」


「じゃあな」


 手を振り船に向かい歩き出すと後ろから呼び止められた。


「1つだけ言っておくことがある。ちょっと耳を貸せ」


 そう言われ俺は耳を傾ける。エレミアは耳に口を近づけしゃべり出す。


「イリスとかいう少女、人間ではないぞ」


「え……」

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