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聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
解かれる記憶
16/20

少女の導き

キャラ紹介


ネメシス(???)


年齢 ?

身長 約143cm

体重 ?


瞑達が漂流したどり着いた島で瞑の前に現れた謎の少女。長く伸びた黒髪を片側だけ結って赤い椿の花が刻まれた簪を留めている。黒地に赤いバラが描かれた和服を着ている。瞑とは何か接点があるようだが……。

『め……お……て』


 何か声がする。おれに呼びかけるような。


『め、い……おき……て』


 耳に馴染みのある声が脳に反芻する。優しく暖かい声音。


「暝、起きて」


 意識がはっきりとしてきて重く閉ざされた瞼をゆっくり開く。そこには見知った女の子の顔があった。


「イ、リ、ヤ。……イリヤ!?どうして!?というか、ここはどこだ?確かヨルムンガンドとの戦闘で海に投げ出されて……。出來は……!?」


 周りを見回すが出來の姿がどこにも見えない。別の所に漂流したのだろうか?イリヤ?は俺の言った事を軽く流すように言った。


「そんな事よりさ、ねぇ見て!ヤシの木だよ!あっちにも!ほら、行ってみよ!」


 イリヤ?は島の中の方へ続いている森を指差し、俺の腕を引っ張っていく。だが、さっきの発言にふと違和感を覚えた。


「お前は、誰だ?」


「急にどうしたの?どこか変なところでも打った?私はイリヤだよ。イリヤ・スリンフォード」


 イリヤ?は普通に答えた。見た目も口調もほぼイリヤだ。だが、俺の知ってるイリヤとは決定的に違う所がある。


「いや、お前はイリヤじゃない。イリヤは、出來の事を『そんな事』なんて言わない」


 俺がそう言うとイリヤ?は不敵に笑ってみせた。


「いやー、お見事お見事。私の変化を一発で見破るとはね。感心感心」


 黒い蒸気が吹き出し、イリヤ?を包み込む。

 そして、現れたのは10歳前後くらいの女の子だった。地面に付きそうな程に長く伸びた黒髪を片サイドをちょっと取り上げて結っている。結び目には赤い椿の華があしらわれた簪《 かんざし》が留められている。


「やはり、イリヤ・スリンフォードとは特別なおもいでもあるのかな?」


 挑発してくるように聞いてくる少女。何なんだこの子は?


「いや、そんなんじゃない。ただ、イリヤなら絶対に言わないと思ったから」


「なるほどねー。まぁ、今はそういう事にしておくよ」


 何だ?この含みのある言い方は?ホントに謎だ。


「私が何者かって?別にあやしいものではないよ」


 少女は俺の心を見透かしたように答えた。てか、普通に怪しいだろ。


「安心したまえ。文月出來についてはこの奥の祠で休んでいる」


 少女は付いて来いと言わんばかりに歩き出した。島の内側は木々が茂っており、中央付近には高くそびえる岩山がある。


 暫く少女について歩いていくと薄暗い洞窟にたどり着いた。少女はさらに奥へと歩みを進める。洞窟内は静寂に満ちていて、俺達の足音と水滴が落ちる音だけが響き渡っている。やがて前方にまばゆい灯りが見えてきた。

 そこには祭壇のような石台があり、そこに出來が横になっていた。


「ただ気を失っているだけだから心配入らないよ」


 俺の心情を読み取ったように少女は答えた。少女の言うとおり確かに気を失っているだけのようだ。


「君は一体……」


「私は……そうだな、ネメシスとでもしておくとしよう」


「ネメシス……?」


 確か黒い太陽のことだよな。まぁ、如何にも偽名だが、とりあえずはそれで適用させてもらおう。ネメシスは壁を叩いたり床を探ったりしている。


「何をしているんだ?」


「ちょっとな……。まぁ、じきに分かるさ……と。よしっ。まぁ、見ておけ」


 ネメシスが壁の下の方にあった石を押すとその上の方にレバーのようなものが出現した。驚きで言葉も出ない。ネメシスはその出てきたレバーに手をかけ下に下げる。奥の壁が二つに割れ開かれた。


「なっ……!」


「そう驚くことでもないさ。君には見せなくてはならないものがある。ついてきたまえ」


 俺は理解が追いついていなかったがとりあえずネメシスの後について行った。扉の先は怪談になっていて地下へと続いているようだ。一歩歩く度に壁に立てかけられた松明が点灯していく。

 壁には壁画らしきものが描かれている。


「ここはその昔、神話の時代に使われていた神殿の跡だよ。ウロボロスの襲来で殆どは倒壊してしまったがこの地下だけは残ったんだ」


 ネメシスは歩きながらここについての説明を始める。じゃあ、この壁画は神話そのものが描かれているのか?


「時は流れて、人々から忘れ去られても私達はずっと守り続けてきた」


「私達?」


「あぁ。私の家系、というかかつてこの世界を統べていたアーサー王の血を引く者は代々神殿を守り続けてきた」


 長い階段を下り終えると、さらに奥に洞窟が続いていた。俺達はその中へと歩みを進めた。


「そして、同時に様々な時間軸でこの世界を見続けてきた。全てな」


 全てというのは本当に全てなのだろう。恐らくあの時のことも。

 暫く歩いていると光りの差している空洞があるのが見えてきた。


「ここは……?」


「今までの全ての時間が刻まれた空間、トキカケの間だよ」


「……トキカケの間」


 壁には黒いドラゴンと人間が戦っている構図が描かれている。まるで、闇黒魔ダークネスと人間の戦争のようだ。

 闇黒魔側にも人間らしき姿がある。気になっているとネメシスが説明した。


「そっちにいるのは人間じゃないよ」


「人間じゃない?どういう事だ?」


「そっちに描かれているのは、ホムンクルス。人造人間だ」


 ホムンクルス。ってことは誰かがあれを作り出さなければならないのだから人間の協力者がいたというのか?


「人間が創り出した対人間用強化兵器。それがホムンクルスだ」


「人間が闇黒魔側について人間とたたかっていたというのか?」


「まぁ、そうなるな」


 そんな事があったなんて……!俺は様々な思いがひしめき合って口を開けたまま身じろぎひとつできなかった。


「それでどうなったんだ?」


「人間軍のリーダー、アーサー王が黒いドラゴン達闇黒魔をエリスカリバーで封印し、ホムンクルスは創り出した奴と共に1部を逃がしてしまった」


「ホムンクルスとそれを創り出した奴は一体どこへ行ったんだ?」


「さぁな。逃亡してすぐに亡くなったとか、別の世界に行ったとか、説は色々あるが実際のところはよく分からない」


 俺は何故だかそいつが気になっていた。何故人間を裏切ったのか、何故その後一度も攻めなかったのか、その人の身に一体何が起きたのか、様々な疑問が頭をよぎった。


「さぁ、ここからが本題だ」


 ネメシスはそう言って空間の裂け目から光り輝く剣が出してきた。


「これは、アーサー王が闇黒魔封印の際に使用した愛剣、聖剣エクスカリバーだ」


 そう言ってネメシスは俺にエクスカリバーを差し出してくる。受け取って手で持つと結構重量感がある。


「これがどうしたんだ?」


「まぁ、とりあえず鞘から抜いてみなよ」


 そう言われエクスカリバーを鞘から抜いて両手で柄を持つ。すると急激にエクスカリバーが光り出した。


「何なんだ!?」


「エクスカリバーは過去と現在を繋ぐ。これから君の秘密を解き明かすのだよ」


「俺の……秘密!?解き明かす!?何を言っているんだ!?」


「まぁ、行けば分かるさ」


「ちょ……まっ……!」


 やがて周囲は光に満ち、視界が真っ白になる。俺の意識は徐々に遠のいていった。

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