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聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
解かれる記憶
14/20

魔聖の波動

長らくお待たせしました、最新話です。

 皆、石化した船の上空に集合した。四ノ宮先生はアルバ島の岸から通信で指示を出す。様子を窺っていると、月夜を包んだ黒い球体がキリムに吸い込まれていき、ついには一体化してしまった。


「月夜がキリムに取り込まれた!?」


「どういうことですの?」


「前代未聞の事態だ……」


 四ノ宮先生も何が起きているのかわからないといった様子だ。最近は前代未聞の事が多すぎる。しかも今回のはアリサちゃんの時と違い、完全に吸収された。月夜を吸収したキリムは恐らくかなりの強敵だ。

 そんな時、先程流れ込んできた月夜の記憶を思い出した。俺の記憶にも微かだが、昔一緒に遊んだ女の子がいる。


 あの町にはそもそも子供が少なく、俺と妹は2人きりで遊んでいた。そんな時、引っ越して来た女の子が1人でいるのを見つけ、遊びに誘った。あの子の名前、なんて言ったっけ。

 ――私は……

 柊月夜。そうか、そうだったのか。口調とか色々変わってて気づかなかったけど、あの時一緒に遊んでいた女の子はお前だったんだな、月夜。

 月夜は10年前の事件に遭遇しただけでなく、ヴァルキュリアと化した親友殺した。かなり苦しんできたのだろう。

 でも、このままでいいわけがない。皆と約束した。月夜を必ず救う、と。


「俺、行きます」


「まさか、1人で行く気ですの?」


「あぁ」


「そんな、無茶ですわ!私達も一緒に――!」


 四ノ宮先生がリズの手を掴み言葉を遮った。


「いけるのか?」


「ちょっ、先生!?」


「はい!」


「ならば行ってこい」


 先生の送り出しで俺はミーティングルームを後にしようとしたが、リズに呼び止められた。ほかの皆も心配気な表情を浮かべている。


「皆との約束は必ず果たす」


 それだけ言い残し、船外へ出る。


 ◆


 見た目に大きくかわりはないが、近くで見ると戦闘力の増加が身にしみて分かる。


(月夜の中の闇が直接キリムにも影響を及ぼしているのか……)


「月夜!」


 試しに呼びかけるが代わりに帰ってきたのは赤色の光線だった。


「おわっ!」


 俺は辛うじて交わした。だが、光線は次から次へと放たれている。まるで赤外線センサーのようだ。その合間を縫っていこうとして赤い光線を交わしつつ近づこうとした。


(後……少し……)


 もう少しで届きそうなところでどこから湧いてきたのか黒い影のようなムチが襲いかかってきた。予想外の事で守りの体制に入れずその攻撃を脇腹にくらい吹っ飛ばされた。


「ぐはっ……!!」


(マジ……かよ。そんなの……あり……か?)


「つく……よ」



 意識が遠のいていく。そして第二撃を喰らい海にたたき落とされた。

(これで……終わりなのか?女の子1人救え……ないで俺は……男失格だな)


 ◆


「白縫の反応が……消えた」


 船内でモニタリングしていた面々は白縫瞑の反応が消え焦りを隠せないでいた。


「そんな……!白縫瞑はどこに行きましたの!?」

「反応が消えたって事は……」

「……やられた」



 出來の口にした言葉はあまりにも皆の精神を傷付けるものだった。誰もそんな事はカンガエタクナイシ信じたくもない。だが、反応が消えた以上生死を確かめるすべが無い。

 しかも瞑はこの戦いの要でもあった。それが消えたとなるとこの状況を打破するのは難しい。それもあいまって絶望感に打ちひしがれた。


「やはり、1人で行かせるべきではなかったのだわ」



「そんなこと……ないよ」



 突如扉が開きそちらを見るとベッドで寝ているはずのイリヤ・スリンフォードが壁に寄りかかって立っていた。


「イリヤさん!?寝てなくては大丈夫なんですの!?」


 リーズレインの問にイリヤは苦しそうな笑顔を見せて返答した。


「瞑が……皆が頑張ってるのに……私だけ寝てるなんて……不公平でしょ?」


「しかし白縫瞑は……」


「生きてるよ」


「え?」



 イリヤは断言した。その言葉にみな驚きを隠せない。なぜそんな事が分かるのだろう。なぜそうも断言できるのだろう。と。



「スリンフォード、白縫が生きてるとはどういう事だ?」


「瞑はそう簡単にやられるような人じゃないですから。瞑は約束は必ず守ります。そういう人ですから。だから生きてます」



 イリヤの説明は極論でしかない。だが、皆それを信じようとしている。短期間だがクラスの団結力は高まっているらしかった。

 イリヤは甲板に出て叫んだ。



「瞑ーーーー!約束皆との約束、破ったら許さないからーーーー!はぁ、はぁ……」



 イリヤは叫んだ後で膝から崩れ落ちた。それをリーズレインが支えた。



「だから安静にしていなくてはダメではないですか!」

「てへへ……」


 イリヤはとても苦しそうな表情になっている。暫くすると海中の中に一筋の光が灯った。


「あれはなんですの?」


 ◆


 暗い水の底。音も何も無い。静かでそれでいて寂しい。このまま何処まで沈むのだろう。もう泳いで上がる気力は残っていない。

 このまま終わりとかとてつもなくかっこ悪いな。でもこれじゃどうすることも……


『瞑ーーーー!皆との約束破ったら許さないからーーーー!』


 突如聞き覚えのある声が聞こえた気がした。


(イリヤ?とうとう幻聴まで聞こえるようになっちまったか……。でもまぁ、イリヤらしいな。……ここで死ぬわけには行かない!月夜を救い、イリヤを救い、そして樟葉も。皆俺が救う!そのためにはもっと強くなくては。聖霊刻印よ、俺に力を!)



 その瞬間両手の聖霊刻印が光輝きアスカロンとレーヴァテインが召喚された。光は徐々に強くなりアスカロンとレーヴァテインは互いに引き寄せ合っていた。


 聖霊刻印が右手で1つになるのと同時にアスカロンとレーヴァテインもまた融合していた。金色こんじきに輝く刀身に黒い翼のようなつばがついた柄。

 光の中から現れたそれを握ると頭の中にそのつるぎの名が浮かんできた。


(魔聖剣アロンダイト……)


 アロンダイトを握った手から力がみなぎってくる。傷も体力も完全に回復した。――これなら……!俺は海面に向かって急上昇した。


 ◆


「なんでしたの?あの光は……」


「瞑だよ」


「白縫瞑?」


「ほら」



 リーズレインがイリヤの指差した方向を見ると海中から物凄い勢いで飛び出てくるものがいた。


「あれが……白縫瞑?しかし、あの姿は……」


 その姿は金色に若干黒がまじった髪。緋色の瞳。黄金の鎧。そして背中に生えた白と黒の翼。一目で白縫瞑と断言するには誰もが目が疑うであろう。

 だが、イリヤ・スリンフォードだけはそれを白縫瞑本人と断言出来た。



 船内でもその様子はモニタリングされていた。


「あの姿は一体……」

「あれが、本当に、白縫君?」

「……どうなってるの?」



 栞枝も出來も藍璃も現在白縫瞑に起こっている状況を把握する事は出来なかった。だが、四ノ宮凪早だけは違った。



(まさか……)




 改修工事中のミルガフィルに残っていた理事長レスキア・ニーズへッグもそれを感じとっていた。


「ついにこの時が来たか。やっと、言ったところだな」


 ◆


「月夜ーー!俺だ!」


 俺が呼びかけると同時くらいに石化の光線リメイン・カタストロフが飛んで来た。俺はアロンダイトでそれを真っ二つに切った。

 次々に攻撃の嵐が襲いかかってきたが受け止めたり避けたりして接近していく。そして1つずつ目を潰していく。


「俺、思い出したんだ!あの時の女の子は月夜だったんだな……」


 黒い影が雨のように降り注いでくる。全て切り落としていく。



「め、い」


『リリアと話して気づいたんだ。俺だけが苦しんで辛かったわけじゃないってな』


 幽かに聞こえてくる声、とてもよく知った声。もう何が現実で何が幻だかわからない。


『お前は、あの時の光景を見ていたんだよな。俺が、町を滅ぼし、樟葉を殺す所を……。意識的じゃなくとも滅ぼしてしまった俺やテレビで見て妹の死を知り怨みの情を燃やしてきたリリアよりもずっとずっと辛かっただろうよ』


「瞑……」


 そう、私はあの時のあの光景を見てしまった。確かに瞑に裏切られた気持ちにもなった。でも今は違う。今は、瞑への怨みはない。意識的にやったことではないから。


『気づいてやれなくてごめん!俺がやったことは事実で消えやしない。でも、今お前を待ってるやつがいる。お前を心配してるやつがいる。皆、お前の友達だろう!』


 そうだ。私には待ってくれている友達がいる。瞑もその1人。あぁ、私は何をやっているのだろう。こんなまやかしに踊らされるなんて。

 でも、まだ絶望の気持ちが残ってる。私にはもう怨みはないのに。


「め、い。瞑ーー!」



「動きが鈍くなったな。月夜の絶望が弱まったか。これでいける!」


 俺はキリムから距離を取りアロンダイトを構え、天空に掲げる。


「月夜は必ず連れて帰る!――聖空晩霞せいくうばんか!」


 天空に掲げたアロンダイトは金色の光を纏いそれを胸の元へと持ってくるとアロンダイトを中心に周囲に光が満ちた。

 その光の中に入ったキリムはたちまち雲散霧消した。そこには月夜だけが残されていた。俺は近寄って月夜を抱きかかえた。


「月夜!」


「め、い、さん?私は一体……」


「お前を取り込んでたキリムは完全に消えた。その様子じゃもう闇に囚われてないようだな」


「そうだ!瞑さん、ごめんなさい!全てはあのようなまやかしにかかってしまった私の責任です」



 月夜が急に深々と頭を下げてきた。



「いいよ。その絶望の念の中には俺も入ってたんだろう。それなら俺のせいって言っても過言ではないだろう」


「ですが……!」


「後は皆のとこに戻ってからにしようぜ。皆待ってるからよ」


 俺は月夜を抱え上げ船へと戻った。キリムを倒したおかげか石化されたものは全て元通りになっていた。


 そしてこれがまだ序章にある事を今の俺達は知らない。

大分期間があいてしまったのでよかったら前の話も見てくださればと思います。

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