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聖剣乱舞のヴァルキュリア  作者: 双葉カレン
解かれる記憶
13/20

負の念

魔獣紹介


キリム


5つの顔と30の目を持つ。その目から放たれる赤い光線に触れたものは石化する。それぞれの顔は上下左右に動かせない。そのため全てその顔が向いてる方向にしか攻撃出来ない。ピンチになると31個目の目が背中から飛び出て向かい打つ。ほぼ死角無し。

 海上を進む2つの影。キリムは海の水の石化させ、足場を作って進んでいる。そして、その斜め上に浮遊している闇化した月夜。



『暗い、ここは何処?』



 暗闇の中へ沈んで行く月夜。闇に呑まれるというのは、全ての感情を負の感情に塗り替えられ、自己を見失う。



『全て私が悪いんだ』


「全テガ憎イ。皆、滅ビロ」



 キリムと月夜はそのまま進軍を続けた。もうアルバ島が見える距離まで来ていた。


 ◆


『皆、準備はいいか?』


「「「「はい!」」」」


『リリアも大丈夫か?』


「えぇ、大丈夫です」


『では、作戦開始だ!』



 皆がそれぞれの配置に着く。リズ、栞枝、出來、侑依は船の上空で待機。リリアは海上でキリムの後ろに陣取っている。そして俺は月夜との対戦に備え、船で待機していた。


 キリムと月夜の侵攻は進み、そして作戦開始範囲に入った。暫くしてリリアの銃声を合図にリズ達が攻撃を仕掛ける。キリム達はすでに目と鼻の先まで来ていた。


 キリムは銃撃を受け、リリアの方へと向きそちらに襲いかかろうとする。



「今ですわ!ライオール!」


「紅蓮疾風拳!」


「ダークネス・スライサー!」


「……雷神の怒号」


五精の導き(クリムゾン・アース)



 リズはゲイ・ボルグから巨大な閃光を放ち、栞枝は熱風をストライカーの振るう時の風圧に載せて飛ばし、侑依はデスサイズを巨大化させて振り下ろしその斬撃を飛ばす。


 藍璃はニョルニールを天高く掲げ雷雲を集め、キリムに向かって強大な雷を落とす。出來は水、火、雷、風、土の5つが混ざりあった竜巻をキリムの所に出現させた。


 キリムは煙で姿が見えない。リリアと月夜の姿も見えなくなっていた。様子を伺っていると突如煙の中に紅い光が灯った。その光はどんどん大きくなっていく。



『まずい、皆退避だ!』



 四ノ宮先生の指示で皆それぞれ船から離れた。すると、次の瞬間、煙が晴れて来たところから紅い光線が俺達がいた所めがけて飛んできた。


 船はあっという間に石化してしまう。四ノ宮先生もギリギリ退避できたようだ。驚くことにキリムはこちらに背を向けたまま撃ってきた。



「背中に目はないはずじゃ……」



 キリムの目は一つの顔に6つ。そして顔が5つ。計30個のはずだ。それにキリムの顔は上下左右に動かせず、一つ一つの顔がそれぞれ正面を向いている。横についている顔もあるが後ろを見守る顔はないはずだ。


 困惑していると四ノ宮先生からの通信が入った。



『今、SERAFから入伝が届いた。30の目が一つも使えない時にだけ背中にある31個目の目が開眼するらしい』



 ――まじかよ……。完全に死角なしって事じゃねーか。


 そういえばリリアはどうなったのだろうか。少し気になりリリアと通信を取る。



「リリア、大丈夫か?」


『うぅ……』



 リリアからの返答はなかったがその代わりうめき声が聞こえた。



「おい、リリア!?」


『うぅ……。たす……け……て』



 一体何が起きてるんだ!?ただ事でないことは確かだ。俺は考えるより先にリリアの元へ向かっていた。



「白縫瞑?どこいきますの!?」



 リズの呼び止めをよそに先を急いだ。


 ◆


 「え、何で後ろ向きで光線を放っているの!?」



 確かに弾はキリムにあたり、リリアの方へと方向転換して襲いかかろうとしてきた。だが、作戦は失敗し、キリムは後ろ向きで光線を放った。



 「そんな……!」



 リーズレインたちの攻撃を受けそっちに気が向いたキリムになおもリリアはフライクーゲルで打ち続ける。


 だが、全く聞いている様子は皆無だった。その矢先月夜がリリアに向かって来た。



 「ちょ、なんでこっち来んのよ!」



 リリアは向かってくる月夜に応戦するが全てよけられてしまった。そして、近くまで来たかと思うと突然、リリアの首を締めあげた。そんな時、通信が入った。



『リリア、大丈夫か?』


 「うぅ……」



 苦しくて全く応答が出来ない。



『おい、リリア!?』


 「うぅ……。たす……け……て」



 なんとか声を絞り出して助けを求めた。なおも力は強くなり息が出来ないくらいだ。すると、月夜は手を緩めた。


 助かったと思ったのもつかの間、腹を思い切り蹴られて吹っ飛ばされた。月夜は近くによってアルテミスを構える。


 ◆


 リリアの元へたどり着くと月夜が瀕死のリリアに向かって矢を射ろうとしているところだった。俺は即座にその間に入り射られた矢をレーヴァテインで弾く。



「大丈夫か?」


「え、えぇ何とか」



 リリアはかなりボロボロになっていた。服はところどころ破れ、首にはどれだけ強い力で握られたのかアザが残っていた。


 月夜は黒いアルテミスをおろすとその形を変えてアルテミスが剣になった。その剣を構え、大上段から切りかかってくる。



(くっ……。重い……。これが……月夜の……邪悪な心か)



 俺はアルテミスを辛うじて受け止めていた。剣を通じて月夜の心が伝わってくる。悲しみに満ちた負の感情、過去の出来事に対する自責の念。そして、1つだけ俺もよく知っている光景が流れ込んできた。



「これは……」



 それは10年前のフェンリル事件の光景だった。



「なぜ、月夜の記憶に……あの時のが!?」



 それは月夜視点での記憶。瓦礫の影に隠れて覗いている光景は、俺が樟葉の腕を撥ね、少女を殺しているところだった。


 そこで映像は途切れた。気絶したのだろう。だが、この記憶は一体なんなんだ?


 そういえば、あの時もう一人仲良かった女の子がいた気が……。



「瞑、危ない!」



 感慨に耽っているとリリアの叫び声が聞こえ我に戻る。すると、月夜が目前まで迫りアルテミスを振りかざしていた。


 俺は咄嗟に右手にアスカロンを出現させ、アルテミスを受け止めた。必然的にレーヴァテインとアスカロンの二刀流ということになる。


 受け止めていたアルテミス弾き飛ばし、その反動で月夜も吹き飛んだ。



「これで終わりだぁ!元に戻れー!」



 俺がアスカロンとレーヴァテインの両刀を振りかざしとどめを刺そうとしたその時、月夜が黒い光につつまれて行った。



「一体何が起きてるの!?」



 リリアも困惑の声をあげる。やがて月夜は黒い球体に包まれ移動していく。


 ◆


 時を同じくして、リズたちの方でも異変が起きていた。



「キリムが、吸い寄せられている?一体何が起きてるというのですの?」


「なんだろ?あの黒いの」



 栞枝が空中に浮かぶ黒い球体を指さす。それはまさに不気味そのものだ。



「お互いに、引き寄せあっている」


「とりあえず、白縫瞑の方へも連絡を取りましょう…………」


『リズか?』



 リーズレインが連絡ツールを立ちあげると暫くして瞑が出た。



「白縫瞑、そちらはどうなっていますの!?」


『月夜が黒い球体に包まれてどっかへ移動した』


「では――」


『あぁ、あの黒いのが月夜だ』



 通話はオンラインになっていたため全員にその情報が伝わった。もちろん四ノ宮凪早も聞いていた。



『至急全員集合!』



 四ノ宮凪早の指示で全員集合する事となった。未知のことの為、様子を窺うしかないのだ。


 ◆


「リリア、立てるか?」


「えぇ……きゃっ」



 リリアがこけそうになったのを手をとって支える。



「あんま無理すんなよ。……よいしょっと」


「え、え、ちょ、な、何!?」



 リリアをお姫様抱っこで抱えあげ皆の所へ向かう。



「ちゃんと捕まっとけよ」



 リリアの声を他所に先を急いだ。


 ◆


 暗く何も無い寂れた空間。漂っているのは負の感情だけ。邪悪な囁きだけが聞こえてくる。



『全テ、アイツノセイダ。殺セ、殺セ、殺セ、殺セ』



「そう、悪いのは全部白縫瞑。憎い!殺す、殺す、殺す、殺す」



 完全に闇に支配され、歪んだ憎しみが湧いてくる。だが、心が軋む。なぜだろうか。自分には何も無いというのに……。

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