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風の中に在りて
《風の中に在りて》
急かさないで風よ 私は此処に居る
夜の終りと共に消え去る月光の様に
より膨大な光に霞んで見えなくとも
私の中に灯る火は確かに燃え続ける
広大な宇宙に或る日 突然落とされて
必要なだけの庇護を与えられ今が在る
大した理由も無く立ち竦む逆境の中で
孤独に陥る時も強かな眼で荒野に立つ
痛んだ傷痕から飛び立つ銀の鳩
彼方の眩い星を道標に舞い飛び
羽根を虹色に染め上げる上空迄
さあ 嘆きの霧を払い
清らかな浄化の雨を降らせ雲よ
透き徹る光の中に在るべき姿で
私は此の美しき地に立っている
恐れを知り尚 純真たる瞳なら
何物にも代えられぬ時を導ける
堅い誓いに秘めた思いを解放し
偽らぬ心が許す道を陽は照してくれる
その強靭な魂にはもう
恐れるべき物など無い
光も闇も呑み込み猛り狂う激しき風よ
此の私をも呑み込み吹き荒れれば良い
胎動する新たなる時の幕開けへと臨み
此の宇宙の全てと共に立ち向かう為に
狂おしくも勇猛な風の中に在りて
私は此の美しき大地に立っている