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幻想の森
《幻想の森》
世界から抜け出した空
何処までも高く
そうは飛べずとも
深い森の中 風の木霊
融けていく吐息
彼方の谷へ
陰る空 花の香に満ちる
硝子のお城
古い書物の示す魔法に
翼有る物達も憩う
招く繊手の呼び声
竪琴の奏でる幻想譚
舞い降りる時の羽根
時に黒く 時に白く
知れぬ明日は
束の間 忘れ
調べに委ねる 小さき魂
軈て 青い霧に包まれ
夜が訪れる その刻まで
花籠の中 眠る妖精
月に見守られ
密やかに建つ 硝子のお城
森の宵闇に染まる
風の捲る本は閉じて
魔法の語りは また何時か
緑薫る風の運ぶ
次なる世界へと
翼は羽ばたく