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太陽の化身
《太陽の化身》
天空 雲海に隠れ
輝けぬ太陽の化身
地上に降りたのは
嘗ての温もりを探す為
命が求めて止まぬ温度
鉄の覆う冷たい地上は
色彩の無い無機質な海
疲れ果てた命の声すら
力尽きた其処はまるで
死を受容した冷たい腕
懐かれた人々の終着点
鉄の園に降り立つ
輝かぬ太陽の化身
忘れられた者が選択したのは
嘆く瞳ではなく
歩き出す足
嘗て在った温もり
命の中に眠るもの
其が始まりであれ
信仰であれ
絶えず共に在ったもの
冷たき地表を只 歩き
見詰めた世界に光を注ぐ
微かな光に触れた者が
再び目覚める時を信じて
其処に芽生える力を信じて
地上 身一つ歩む意志
眩い熱を孕む太陽の化身
雲海を割り覗く空
還る時迄 今少し
温度を求めて止まない心
それら全てが太陽の化身