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聖夜の祈り
《聖夜の祈り》
風の鳴く黒き空より
堕ちた羽も息絶えて
疚しき眼は光に焼かれた
穢れた心をどう濯ごうか
咎人達が列を為す
彼等は巡礼の途上
大地に許容される儘に
無為な時を生きた罪を
裁かれる時を
許される時を
待ち望み歩く
堕ちた羽は自由の象徴
星の夜に願い
戦禍に絶望し
其でも生きて
救済を象る物が何物であれ
神の名を唱えずには居れぬ様に
尽きぬ愛に導かれながらも
迫り来る死を終の友として
さあ詠うのだ 彼の人の御名を
さあ祈るのだ 彼の人の御名に
今日は貴方の生まれた日
聖き幸福よ 世界を満たせ
今日の此の 一夜だけでも
風の鳴く黒き空より
真白き結晶達が降る
暖かな火を囲み
寄り添い合う手
全てが許されずとも良い
死は平等に命を刈り取る
なればこそ
今日の此の日に祈るのだ
彼の人の御名の許に
聖き幸福よ 世界を満たせと