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閉ざされし書
《閉ざされし書》
星の歌う
遠い古の御話
閉じた本の中
繰返し 夢見るの
虹の雫 零れて
染まる 花の色
紅い木苺の森は
野兎と妖精の家
天の落とした呪いの杖が
悪しき黒雲を喚んで
愚かなる名も無き戦士が
穢れを知らぬ翅を奪う
怒れる天馬
天空より来たりて
太陽が昼を愛でる
光と共に駆ければ
飛べない妖精
流された血に哭き
鋭き剣の雨も払う
光となり 空へと消える
時を返す 金の砂
尽きた時が
悲劇の終幕
星の歌う御話は
閉ざされた本の中
永遠に開かぬ儘に
虹色に光る 夢だけ見るの