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夢想家が書を捲る
《夢想家が書を捲る》
夢想家が一人 書を捲る
長い長い 旅の始まり
言葉の羅列が成す空の色
大地の慈悲に芽吹く樹海
黄金の都へと通ずる道は
人や富と共に争いを呼ぶ
悲嘆に明け暮れる世界に
怠惰な真昼の月を隠して
物語が始まるよ
虚実も愛憎も悲喜劇も
幻想巧みに織り混ぜて
誰かの見付けた万能の翼
撃ち落されるが故の進化
宇宙からの冷酷な贈り物
綱渡りの上に降る雨と命
風情を求める感情の域に
理性の番人が刃を向ける
物語が始まるよ
行き場の無い思いの象を
只管 綺麗に 叙情的に
浮き沈む波間の白を染め
揺蕩い遷る善悪の興と業
塗り替えるに長けた手で
捻曲げられる数多の意志
陽の光に立つ者の誕生に
新たなる門を賢者は開く
夢想家が笑み 書に耽る
其は新たなる 創造の域
風の捲る書の 導く儘に
歩み来た者は立ち止まる
白紙の頁に 到達点を遠く視るなら
迷いの果てにも 己に恥じぬ選択を
物語が始まるよ
空と大地と水が在り
陽と月とが 交互に照す此の世界で
夢想家が 書を閉じる
涌き出る頭脳の 思泉より
溢れ来る言葉を 書き綴る為