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全天の許に
《全天の許に》
安らかなる終の住処に
大いなる風は気高く吹いて
水瓶に落ちた下弦が揺らめく
迷い来た蠍の毒を忍ばせる宵
牡牛の角笛と叡智護る獅子の像
精霊の宿る泉には魚鱗の放つ虹
賢き乙女は警告と導を歌に託し
無垢なる羊飼いの子は空を仰ぐ
英雄に踏み潰された蟹の流す涙と
奔放なる牡山羊の強かな雄々しさ
罪を射抜く手は狙いを過たず
天秤が測る善悪の調べを紡ぎ
太陽と月の双子神へと捧げるのだ
一つの心臓が辿りし生を光の許に
気高き全天の息吹の許に 晒して