49/100
或る日の生者
《或る日の生者》
或る日の生者
陽の温度と 時を告げる鐘
煉瓦の壁を打つ風に
棚引く雲の示す明日の行方
或る世の聖者
革表紙の教典に没薬の馨り
揺らめく灯火に滲む幻影
類無き楽園の黄昏と変革
或る宵の死者
星の告げる途を辿り
冷えた大地に接吻を残し
全ての物へと囁きて発つ
或る野の隠者
枯れずの森に永遠を問う
濃い霧が紡ぐ神秘と畏怖に
解けぬ謎の一つを識りて
或る暁の生者
掌の温度と 落ちる鐘楼
始まりを喚ぶ風の導くは
瓦礫の記憶する足跡の行方