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冷夜の目覚め
《冷夜の目覚め》
灯火の照す道の彼方へ
嵐に嘆く藍の森を行く
凍えた指には銀の薔薇
雨を弾く常緑樹の天蓋
眠る様に更ける宵の闇
絡むしなやかな枝の冠
剥がれ落ちた月の色へと
集めた祈りを灯した羽根
長い獣道を走り抜けたら
天の怒りも鎮まるかしら
狂う金時計の針の罪歌に
傲慢なる女王は剣を取る
下手な呪文なら逆効果
時を紡ぐ女神は隠され
聖なる泉に浸した脚で
禁忌を侵した娘は踊り
荊の塞ぐ赦しの扉を
傷を負いし腕が開く
凍てつく冷夜に捧げられし
祈りを懐いた聖者の目覚め
翼を広げ飛び立ちましょう
怒れる嵐すら力の糧として
風に消えそうな小さな灯火の一つにも
確かな祈りと共に私は存在するのです
仄白い夜明けの陽光を辿り
過ぎし時の贖罪を捧げる瞳
朽ちた謀りの冠を土に還し
聖なる者は静かに立ち去る