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古き隠者の嘆き
《古き隠者の嘆き》
白い大地に続く足跡
流れる風向きと同じ
未完成の絵に陰を重ねたら
足りない色も 不要な色も
見える ほんの一瞬の邂逅
鼓動の打つ儘 生きる時よ
光に紛れて 輝いてた振り
望みを告げてしまったなら
全て逃げてく気がしてたの
古びた本に囲まれて
隠なる者は魔法を記す
理の終りは 魂の終り
因果の矢に撃ち抜かれて
白い大地に続く足跡
流れる風向きと同じ
自由な風に憧れた証
霧深い谷底へ落ちる雨
凍る土も融かして
陽の降り注ぐ音無き調べに
春の訪れを囁いて
また巡る魂が降りる
花にも牙にも
狗にも風にも為りましょう
因果の歯車を廻して
流れる風は不意に止み
次の行く末を見定める
どうか見誤らないで
望む儘に在ろうと決めたの
古き魂からの解放を
人知れぬ地で天を仰ぎ
隠者はその杖を手折る