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輪廻の調べ
《輪廻の調べ》
弾き語る 調べに降りるは
琴線を揺らす海
纏う砂に さざめく言葉は
一瞬の邂逅の泡
過ぎては戻り 瞬く刹那
往きては還り 伝う繰言
燈す灯の下 永遠を望み繋ぐ
その楔を自ら打つ逃亡者
薄れる月影 夢も潰える宵に
駈ける馬蹄は鈍く埋まり
その手は生きた
その胸の信ずる道を
その足は生きた
その胸に値する日々を
その音 響く 後ろの 方へ
流れて 先へ 静かに 抱く
陰から 光へ 踏出す 手足
揺れる 波音 静かに 抱く
時から時へ 彷徨う魂の残像
変遷を拒む者の 最期の嘆き
歌から歌へ 残す記憶の眩き破片も
その腕ならば 何時でも解き放てる
逝きては廻り 言祝ぐ命
廻りては往き 紡ぐ繰言
その手は生きる
その胸の望むがままに
その足は生きる
その魂に値するが為に
絶えず 響く 前から 両腕
包んで 先へ 後ろへ 過ぎて
余さず 響く 踏出す 手足
包んで 先へ 幾度も 過ぎて
弾き語る 調べに宿るは
琴線に返る命の繰言
繰り返す 輪廻の調べに
再びと還る魂の繰言
波の間に間に 瞬く光彩
其処に在るのは 紛いなき命