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寛容な人
《寛容な人》
降る月を背に羽は閉じ
安らかなる慈雨を待つ
地を穿ち生まれた都市に
嘗ての形を記憶する空
裂ける閃光の矢を折りて
昇る人を導く慈悲
深淵から訪れた
許しの声が木霊する
咲初めし花に手を振りて
伝う祈りの編みし橋
古美色の星の瞬く
万象を生みし闇まで
寛容なるその手にて
照らす世界の牙を抜き
静かに立ち去る人になろう
全てを知らぬ人から始まり
全ては知らぬ者で終ろう
巧妙な訓話より
夢物語を語り継ごう
全て造り物ならば
全て作り事ならば
晒す風の葉擦れの音に
煌と添う陽の金糸
想像より生まれし創造にて
尚も語り 次代へ継ぐ者
相応しき者となる為に
在るべき姿で在る為に
時を時と認識し
歩き始めるその瞬間から
空の持つ器の広さを
祖の両手より創造し
返す笑みにて語り出す
寛容なる人は今を立ち去る