タイムマシンがあったら
「もしタイムマシンがあったら、過去と未来、どっちに行きたい?」
学校での友達との会話か動画のネタか知らないけど、何の脈絡も無く突然、子供に質問される。
犬派か猫派か、きのこ派かたけのこ派か。よくある論争に、身近な意見を欲しているのかもしれない。
自分が子供の頃なら、人類誕生以前の地球を見てみたいとか、百年後の自宅がどうなっているか見たいとか、夢のある回答をしたと思う。
大人になっても、クレオパトラや卑弥呼を見てみたいとか、来週のロトの当選発表を見に行って今すぐ買いたいとか、興味や欲の回答をしただろう。
が、子供らがある程度大きくなった今は、「子が赤ちゃんだった頃にいきたい」の一択だ。
当時はワンオペで記憶も曖昧、子供を可愛いと感じるゆとりはイマイチだった。とりあえず、まとまった睡眠がとりたかったことしか覚えていない。
高齢出産で夫の転勤先である知らない田舎町での小さなマンション暮らし、平日は朝出て行ったら深夜まで帰宅しない日が続くし休日出勤もある、親も遠方で知り合いの一人もいない毎日は思った以上にしんどい。
一人は全く苦にならないけど、赤子と二人はなかなか厳しい。家事と並行してあやす、ミルクをあげる、おむつを替える、風呂に入れる、寝かしつける、と世話は単調でもやり直しや中断ばかりで進まない、終わらない。
トイレに行くのもご飯を食べるのも落ち着いて座ることも出来ず、話したくても愚痴りたくなっても気軽に聞いてくれる相手は無い。
元からよく寝る方で細切れ睡眠は苦手だったから、夜間授乳が必要な期間と夜泣きの時は、特に頭がぼんやりして寝た気がしなかった。歯磨きや洗濯などルーティン仕事をしていると、さっきもやってなかったけ?と、ずっと続いているような感覚だった。
女性が言うと憚られることが多いが、実際、あまり子供が好きではなかったので、赤子と連日の密室暮らしは辛いと感じることの方が多かったように思う。
それでも一人だった時はまだマシで、下が出来ると上の体力は遊んでやらんと有り余るわ、下は思ったほど放置不可能でおんぶ祭りだわで、四十を超えての乳幼児ワンオペが腰と精神に来る。
実際に犯罪者にはならずに済んだが、虐待のニュースを見るたびに、他人事とは思えなかったものだ。
交代要員の無い育児は、マジでムリゲーだ。
昔、私より先に結婚して近所に住んでいた弟が、週末のたびに姪や甥を連れて私もいた実家に来ては放牧していたが、勝手に部屋まできてたたき起こされる身としては、寝不足でも二日酔いでも仕事は出来るが子守りは無理だと実感した。
が、弟のように気軽な放牧先も新幹線距離になると、自力で対応するしかない。子供は嫌いだが、我が子に愛情皆無なわけではないので、笑って楽しく過ごして欲しいとは思っている。
下が生まれてすぐに買った幼児二人乗せ自転車と、公園や幼児向けの施設には、随分とお世話になった。
そんなチビっ子が中学生にもなると、サイズ感も別物で声も太く、あの頃の可愛らしさは見る影もない。当時は勘弁してくれと思うくらい母から離れない子だったが、今となってはそれも懐かしい。
なので、タイムマシンがあればゼヒ、子供が赤ちゃんだった頃に行きたい。
あの懐かしいぷにぷにを堪能しながら、当時の私を寝かせてやりたいのだ。
夫は私がいないと子供の相手が出来ない人のまま変わらなかったので、世話を完全交替する機会はほぼなかった。
当然、子供もなつかないので、任せるにも二の足を踏むなと思っている間に、乳幼児期を脱した。おかげで今も子供たちとパパの仲はビミョーなままだが、大人になれば大人同士の話くらい出来るようになるかな?と、淡い期待を抱いている。
まぁ、夫も自身の父とはあまり交流のないまま大人になったそうで、努力して苦手を克服するには至らなかったし、私もやってもらえるように機嫌とったり促したりするのが面倒だったので、その面倒と向き合えなかったのだ。
気力も体力も落ちる時期に子育てをすると、本気の喧嘩はなかなか出来ない。怒るにはパワーが必要で、日々に追われるとそれより優先されるものが多く、適当に流しがちではあるだろう。
本音でぶつかって互いに納得できるよう解決できるのが理想だが、何度か試みて根本的に違うな、互いに譲れないなと気づくと、ガチバトルするよりも深入りしないのが一番の得策に思えてしまう。
まぁ、本気で嫌いになった訳でも、互いに離婚願望なんぞという具体的なモノがあるわけでもないので、我が家流にのらくらしつつ、夫の定年前でもまだ義務教育な子供らがメシを食えるようになるまで、ぼちぼちやっていこうと思う。
ああ、そうか。こんな時にタイムマシンがあれば、今の私も過去の私も癒されるのかもしれない。
読んでくださって、ありがとうございます。
子どもが小さい頃は「たいへんな時期だけど、過ぎれば一瞬よ」なんて言われて、「あはは、そうですかね」なんて愛想笑いでやり過ごしながら、過ぎるまで放置したら死ぬし、自分が寝えへんワケにもいかんしメシもいるやん、誰が毎日洗濯して掃除するん?と、やさぐれていた事も思い出しました。
けっこう、根に持つタイプだな・・・。
カクヨムにも投稿しています。




