日記
【発見場所】黯哭館202号室 ベッドサイドテーブル引き出し内
【発見日時】令和六年十一月五日 午前十時三十分頃
【発見者】玄戸商会職員 黒田翔太
【所有者推定】佐川千里(行方不明者)
六月五日
今日から新生活。家賃安くて助かる。
隣の203は空室で静か。黒田さんが「隣には関わらないように」って言ってたけど、理由がよく分からない。
六月九日
慣れてきた。でも隣の部屋から時々音がする。
空室のはずなのに。
六月十三日
変な夢を見た。土の中にいて、誰かが名前を呼んでいる。
目が覚めたとき口の中が砂っぽかった。
六月十九日
昨夜、203からノック音。トン、トン、トン。
壁に耳を当てたら止んだ。でも呼吸音のようなものが聞こえた。
部屋に土の匂いがする。窓を開けても消えない。
六月二十一日
同僚に「土臭い」と言われた。
昨夜、ノック音に返事をしてみた。私が3回叩くと、向こうから4回返ってきた。
なぜ4回?
六月二十四日
[この部分、水濡れにより判読困難]
...ついに声が聞こえた。女性の声で「ちさと」と。
「おいで...こちら...」
管理会社に連絡したが取り合ってもらえず。
六月二十六日
実家に電話。母が「お父さんも土の中の夢を見てる」と。
契約書の保証人住所「八丁目無番地」は存在しないのに、なぜ黒田さんは何も言わなかったのか。
六月二十八日
203のドア前で声をかけた。
「いるよ...ずっと...ここに...」と返事が。
南京錠がかかっているのに、どうやって?
名前を聞くと「佐川」と答えた。私と同じ苗字。
六月三十日
[ページの下半分が破れている]
...もうすぐ一緒になれる...土の中で...
つち つち つち
[以下、「つち」の文字が乱雑に繰り返されている]
【備考】
日記帳の後半ページには「つち」という文字が無数に書き込まれている。文字は次第に乱れ、最終ページは判読不能。日記帳全体から土の匂いが漂う。




