靄守署・事故物件報告書
【昏ヶ淵町三丁目一二番地 黯哭館二〇二号室 事故物件発生報告書】
作成日:令和六年六月十四日 二一時四二分
作成者:靄守署生活安全課 長谷川透警部補
令和六年六月十四日、午後九時三十五分、昏ヶ淵町三丁目一二番地「黯哭館」二〇二号室にて男性(山科誠・四二歳)が死亡しているのを同居者が発見し、当署へ通報した。
死因は現場検証の結果「心不全」と判定され、外傷・毒物反応は一切認められていない。
部屋は散乱等はなく整頓されていたが、異様な状況が複数確認された。
壁一面に異形の陶器破片がびっしりと貼り付けられ、その配置は何らかの意図的な模様をなしている疑いがある。
床には土のような黒ずんだ粉末が薄く散らばり、近隣住民からは「最近、土の匂いが異常に強い」との証言がある。
同部屋では過去十年、同様の不可解な死亡事故が四件報告されており、全ての死因は不明瞭だが身体的損傷は皆無である点が共通している。
現在、過去の報告書と照合しつつ、連続性と関連性の調査を進めている。
【添付資料:過去の死亡事例(抜粋)】
・平成二十八年四月二十五日 女性、二十八歳 原因不明の心肺停止
・平成三十一年一月十五日 男性、三十五歳 不明熱症状後死亡
・令和二年十一月二日 男性、三十九歳 異常精神状態後の突然死
・令和五年七月九日 女性、三十一歳 心臓麻痺疑い
【警部補個人メモ】
不可解な点多し。陶器破片の配置は偶然ではなさそうだ。
住民の証言も矛盾。二〇三号室から時折響く「ノック音」と「土の匂い」も気になる。
【生活安全課メンバー間のメール抜粋】
「山科氏の死因が心不全とは信じがたい。
まるで何かに取り憑かれたような状態だったらしい」
「隣の部屋に関する情報が足りない。賃貸契約も謎多し」
【警察署内掲示板書き込み】
「黯哭館二〇二号室、事故物件認定へ。
立ち入り禁止区域指定の可能性も検討中」
【その他資料】
・不動産業者「玄戸商会」管理簿に記載された二〇二号室の最新契約者名:佐川千里(女性、二十九歳)
・謎の家賃振込履歴あり。誰が払っているのか不明。




