第八夜 元魔王、領地へ行く。
「これからよろしくお願いします」
「ああよろしくな」
エリーは俺とヤマトにそう言って深々と頭を下げた。
さてさてレベルはいくつかな、おぉレベル30か。
パッと見た感じエリーの年齢は17歳くらい、この年齢でこのレベルはかなり高い方だ。
ポテンシャル的にもレベルアップ使用前のヤマトより高そうだと思う。
「すみませんダニエル様、ちょっといいですか?」
「おう構わんぞ」
何やら不安そうなヤマトが話しかけてきた。
一体どうしたって言うんだ、あの2人は飛んでいったし、木剣三人衆の記憶は操作した、もう何も不安がる必要がある。
「ここではあれなんで、あっちの茂みの方で話しましょう」
「エリーはどうする?」
「エリーさんはここに置いて行きます」
そうして俺はヤマトに連れられ、茂みの方へと移動した。
「魔王様、人間の、しかも勇者の弟子を取るとは何事ですか?」
「え、よくない?」
「ですが勇者ですよ、どうするんですか将来敵になったらどうするですか?」
まぁ確かにそれはもっともな意見だな。
でもなヤマトお前も勇者なんだよ。
てかヤマトのやつだんだん、魔族の幹部のような考え方するよになってきたな。
俺、嬉しいよ。
最初は使えないやつだと思ってけど、こうやって成長していくとなんだか涙が出そう。
まぁでも、ここでエリーを鍛えて将来敵になるなら仕方ないが、味方になれば大きな戦力にとなる。
つまり鍛える価値があるのだ。
「ヤマトよ聞け、エリーには素質がある、鍛えれば戦力になる」
「でも勇者ですよ!信用できないです」
「いや勇者でも俺は信用できるぞ」
「何故ですか?」
「勇者でもヤマト、お前のように信頼できる部下になるパターンがあると俺は知ったからな」
「ま、魔王様」
俺がそう言うとヤマトは嬉しそうに俺の名を呼んだ。
確かに、勇者と魔王は元来敵同士、これは仕方なのない事だ。
だが、それでも信頼できる部下と上司の関係になれると俺はヤマトを通して知ることができた。
これは大きな事だと俺は思う。
まぁ、ヤマトは服従の魔法使って味方にしてるんだけどね。
余談だが、エリーにレベルアップを使うつもりはまだない。
確かに17歳でレベル30は高いが俺達と共に行くにはレベルが低すぎる。
しかし、それでもレベルアップ使用前にある程度自力で強くなってもらいたい。
なのでレベルアップはまだ使わない。
「よしそれでは、行こうか噂の領地に」
「はい!魔王様」
そうしてエリーを加えた俺たち3人は、その噂のダメ領主が治めている領地へと向かった。
「着きました、魔王様、ここが目的地であるラリー領」
「おおここか」
俺たち3人は勇者学校のある街から歩く事、丸2日ラリー領へとやって来た。
入ったといっても広大な領地へ入っただけで、まだ村とかには着いていない。
さて、まずは村探したからか。
「領地に入ったはいいのですが、もう夜です村はまた明日探しましょう」
「そうだな」
「では魔王様、よろしくお願いします」
「うむ、建築魔法発動」
建築魔法、難度S、発動すると自分のイメージした建築物を生成できる魔法である。
ゴブリンの村で大工をしている時も、使う事はできたが、あの時は情報収集も兼ねて大工をしていたので使わなかった。
あとあまり目立ちたくもなかったし。
「よし出来たぞ」
「うわぁ!凄いです魔王様!」
「ありがとうエリー、そう言ってくれると嬉しいよ」
俺は何も無かった草原に立派な塔を建てた。
余談だが、ゴブリンの国にある俺の住む塔も本当は建築魔法で作ってなく、ゴブリン達が作ってくれた。
本当は建築魔法で作ってしまいたかったのだが、ゴブリンの国において建築は一番重要な産業であるため、多くの雇用者がいる事からそちらに仕事をお願いし金を払った。
そうする事でゴブリンの国の経済が回るためである。
一応、国の王なのでそういうことにも頭を使うのだ。