第六夜 元魔王、勇者の先生を制す。
「な、嘘だろ」
木剣の小僧の1人を空へ吹き飛ばすと、残りの3人がワナワナと怯え出した。
「おい!貴様ら、いじめなんてやめろ、いじめは何も生まないぞ」
「そ、そんなこと言ったって、この女が弱いくせに勇者を目指すとか言うからさ」
「いいじゃないか、弱くても目指す事は悪い事じゃないんだぞ」
俺がそう言うと、ワナワナ怯えていた3人から怯えが消えて、反省の色が見えた。
千年前にもいじめはあった。
ただその当時は我が魔王軍内にあり、その時も今と同じように俺がいじめしてる奴をボコして言葉で諭した。
そう、いつの世も真の強きものがこういう時に道を示すのが正解なのだ。
「あ、あのぉ助けてくれてありがとうございます」
俺が木剣を持つ3人を諭していると、殴られていた女の子がお礼を言いにきた。
「気にするな、それよりも強い勇者になれるといいな」
「え!あ、ありがとうございます、私女だから強くはなれないって先生にも、皆んなにも言われて」
「先生だと!?」
どうやらこの学校の諸悪の根源は先生にあるようだ。
仕方ない正すとしよう。
「そうだよ先生が女は強い勇者になれないって言うからさ」
「なんだそいつは、そいつをここへ呼んでこい」
「え?あ、ああいいけどおっさんだって先生には勝てないぞ、それでもいいのか?」
「かまわん、呼べ」
そうして俺は木剣三人衆にその諸悪の根源の先生をの呼びに行かせた。
まったく、生徒を導き鍛え行くはずの言わば先導者になるべき人物があろうことか、いじめを扇動するとは、性根を叩き直してやる。
「なんだ、なんだ皆んなどうしたって言うんだよ」
しばらくすると木剣三人衆に連れられて、1人の好青年が現れた。
こいつがいじめを煽動した男か……とてもそんな風には見えないな。
「あ、ミヤ先生」
好青年の先生を見つけ先ほど殴られていた女の子も先生の名を呼んだ。
本当にこいつがいじめの元凶なのか。
優しそうに見えるが。
「あ?気安く呼んでじゃねぇよカスが!!」
先ほどまでの好青年は、見たこともないような、そうまるで魔人族のような顔に豹変し、そう言い放った。
なるほど、こいつが元凶だな。
よしやるか。
「何がカスだ、馬鹿野郎」
「は?なんですか貴方は、てかどこから入ったんです?」
「そんなことはどうでもいい、何故そんなにその子を責めるんだ」
まずは理由を聞く。
そもそも何故、木剣三人衆といい、このミヤとかいう先生といい、なんでこの女の子に酷いことを言うんだだろうか?
「は、そんなのコイツの親が有名な勇者だからに決まってるじゃないか」
「は?」
「コイツの親はな、昔このおれミヤの親をコケにしたんだ、その腹いせにこの女にも昔、コイツの親がした事をしてんだよ」
なんなこいつ、何を言っているんだ。
そんなの八つ当たりもいいところじゃないか。
しかも女の子だから強うなれないとか、もはや関係ないな。
「そうか腹いせか、ならばこの子が強い勇者になれないと言うのは嘘なのだな」
「嘘?いやいや俺がこれから全くこいつに教えないんだからなれるわけないでしょ勇者になんて」
なるほど、そういうことか。
勇者の素質がないのではなく、そもそも教育をしないということか。
論外だな。
「よく聞け木剣三人衆、この女の子はおそらく強くなるぞ」
「は?なんでだよ!」
俺の問いかけに何故か、ミヤとかいう先生が反応した。
まぁコイツでもいいか。
「何故って俺がこの子の先生になるからだ、そしてお前は教え子を追って早く空に消えてくれ」
「教え子を追うってなんだよ?」
「スキル、エアバースト発動」
エアバースト、俺の中で最も攻撃力の低い技で人を数百キロ吹き飛ばす技である。
「消えろゴミカス」
「な、や、やめてぇぇえ!」
教え子同様、断末魔と共にミヤ彼方へ消えていった。