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第五夜 元魔王、人の街へ行く。


 華やかな色の建物、活気のある店や露店、賑やかな人々。


 「おお、これが人の街か」

 「ええ、これがここら辺で一番栄えている街、ロンドウェルリックです」


 俺とヤマトは、そのダメ領主になった領地へ向かうため、ひとまずその近くにある大きな街へ来ていた。

 道がちゃんと整備されている。

 我がゴブリン王国もある程度道を整備したが、この街の道に比べたら全然山道と変わらないかもな。

 やはり知識や技術がないとこういうものは作れないよな。


 「魔王……すみませんダニエル様」

 「ん?どうした」

 「どうてもダニエル様に見てもらいたいものがありまして、少しこちらに来てもらっても良いですか」

 「ああ大丈夫だ」


 街へ着くとすぐにヤマトが案内したい場所があるからと言ってきた。

 なんだ何があるっていうんだ。


 「ここです」


 ヤマトに連れられて歩く事15分、何やら学校のような場所に来た。


 「なんだここは?」

 「ここは勇者学校です」

 「おお!ここが例のあれか」


 大きな塔が2つに大きな庭と運動場。

 なるほどこれが勇者学校か。

 想像してたやつより随分と立派だな。

 俺の想像ではもっと狭い施設に、運動場でひたすら筋トレをさせているよ感じだと思っていたが、これなら本当に学校という感じだな。

 運動場に何やら人の姿が4、5人見える。

 どうやら運動場で誰かが修練しているようだな。

 見に行ってみるか。


 「ヤマトよ、あそこに人がいるぞ見に行こう」

 「かしこまりました、でもくれぐれも派手な行動だけは控えてくださいね」

 「わかってるよ」


 そうして4、5人の人の群れに近づくと、何やら1人に対して4人でひたすら木剣で殴っているように見えた。

 なるほどこれは多対一を想定した戦闘訓練だな。


 「ダニエル様、これは……」


 ヤマトが引き気味でそう言った。

 そうかヤマトもあの気迫溢れる修練を恐れているのだな。

 わかるぞ、レベルがいくら低くてもあのような修練の場には緊張感があるものだ。


 「痛い、やめてよ私何もしてないよ」

 「うるせぇクソ女、お前なんて勇者になれないんだよ」


 なんだ、様子がおかしいぞ。

 もしかしてこれ修練じゃないのか。


 「ダニエル様、離れましょう、これはいじめです」

 「なに!?いじめだと!」


 いじめとは強き者(本当は弱き者)が弱き者を数人で痛ぶるやつだよな確か。

 なんて酷いことをするんだ。

 よし止めよう。


 「君達、やめなさいいじめはよくないぞ」

 「なんだよおっさん、来るんじゃねぇよ」


 いじめられている1人に近づこうとすると、木剣を2本持った何やら偉そうなやつが我の前に立ち塞がった。


 「邪魔だぞ小僧」

 「うるせぇ引っ込んでろよ」


 そう言って小僧は俺に木剣で切り掛かってきた。

 

 「あぶな」

 『ガシッ』


 俺咄嗟に小僧の木剣を素手で止めた。

 

 「離せよおっさん!」

 「離せ?いいんだな、離して」

 「え?なんでだよ」


 スキル発動、磁力化。

 このスキルは対象者と対象者の持つものに磁力を与えてくっつけるスキルである。

 これでもうこの小僧と木剣は決して離れなくなった。


 「な、なんだ木剣がくっついたぞ」

 「すまんなぁ小僧よ、今離すからな」


 そう言って俺は木剣ごと小僧を空の果てまでぶん投げた。


 「た、助けてくれぇぇぇえ!」

 「ははは、そのまま死ね!クソ小僧め」

 「ま、魔王様ぁぁあ!」


 断末魔と共に小僧は彼方へと消え、ヤマトは俺を魔王様と呼び悲痛な叫びをあげた。


 

 




 

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