第四夜 元魔王、人になる
「魔王様、遅くなりましたが」
「おおヤマト、久しぶりだな」
危険山にて、俺はヤマトに1ヶ月ぶりに会っていた。
あれからヤマトとは指輪を通して、1週間おきにやり取りをしており、勇者協会の動向や現代における勇者の役割などをその都度ヤマトから聞いていた。
そして今日は、ヤマトに依頼したものを回収するためここにきた次第である。
「そうですね、あ!魔王様、約束のお品物見つけて参りました」
そう言ってヤマトは赤色のマントを渡してきた。
「おぉ!これだよこれ!やっぱりアトラス王国にあったのか」
「はいありました、アトラス王国の王宮内の宝物庫の奥の方にありました」
このマントは千年前に俺が身につけていたもので、変身したいものを頭に浮かべるだけで身体を返信できる代物である。
封印され、目覚めた時にはなかったので焦ったが、やはりアトラスにあったか。
千年前に会った時、当時の王がずっと欲しがっていたもんな。
「して魔王様、そのマントを使って何をするおつもりなのでしょうか」
「ああ、俺も勇者協会に行こうと思ってな」
「なんと!なるほど、ついに勇者協会を倒すのですね」
「いや違う、勇者の配下を増やしたいと思ってな」
「なるほど」
ヤマトを配下にしてわかったのだが、人間は大変に優秀である。
まず賢い、そしてある程度レベルを上げれば強くなる、そして思考に柔軟性があるのだ。
いつもゴブリンやミノタウロスに色々仕事させているが、どちらも得意不得意が明確にあり、バランスよく仕事をこなす事がなかなかできない。
そのため、せっかく国を作っても商売や農業が思うように発展しないのだ。
そのため勇者や人間をこちら側に引き込みたいと思い、人間の街に行く事にした。
「ヤマトよ、正直に言って欲しい、俺の作ったゴブリンの国はどう見える?」
「正直に申し上げますと、国ではないですね、ただ魔王様を長にして巨大な村を作っている印象です、交易もなく農作物も自分達の分のみでせっかく土地も労働力もあるのに活かしきれていません」
「だよなぁ」
そうゴブリンは手先が器用で従順なのだが、どうしても頭が悪い。
農作物もせっかく土地があるのに、うまく活かせず大量生産ができないでいる。
そして何より、商売も上手くない。
未だに人を襲っている奴らもいる。
まぁそれがゴブリンなのだから仕方はないが、やはり頭をもう少し使って欲しいのだ。
「私に名案があります魔王様、最近領主が代替わりした待ちがあるのですが、その領主が大変に悪どい政治をしているらしく、領民も移住を考えているそうです」
「ほほう、つまりその領民を我がゴブリン王国に引き込むという事だな」
「はい、そうでございます」
なるほどな、1人2人を仲間にしていくのではなく、領地に住む人々全員を移住させるか、面白い。
でもそれよりも面白い事があるぞ。
「いや待てヤマトよ、それよりもその領地を俺がもらい受けるのはどうだろうか、そこで優秀な奴を何人かスカウトしてゴブリン王国を統治させ、後の残った人間の領地を俺が治める」
「おお!それは名案です、それならゴブリン王国も発展し、尚且つ魔王様は二つ目の国を手に入れられますね」
「うむ、よしそうと決まればさっそくその街へ行くとしよう、どれ変身!」
そうして俺はいつもの姿から、大柄な人間のおっさんの姿へと変身した。
「お見事です魔王様」
「ありがとう、だがなヤマトよこの姿の俺のことはダニエルと呼べ」
「かしこまりました、ダニエル様」
ダニエルとは千年前、俺の友人であった人間の名前である。
よし、準備もできたし人の街へ行くとしよう。