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第十一夜 元魔王、部下のため荒地を土壌改良をする。


 「トリトンよ、さっそくだが俺と来てくれ」

 「かしこまりました」


 俺はトリトンを連れてさっそく塔の近くの農地予定地へ向かった。

 ここら辺は見た感じ水源もないためか、木があまり生えておらず、荒野となっている。

 こんな場所に通常は農地なんて作れないが、トリトンは元々農民らしいので多分作れるだろう。

 そうして俺たちは農地予定地へとやってきた。


 「どうだここが農地予定地だ、広いだろ」

 「こ、これは……」


 広大に広がる土地(荒地)を見て、トリトンは動かなくなってしまった。

 そうかそうか、まぁこれだけの広さだもんな。

 そりゃ驚くよな。

 もしも領主が来ても俺が追い返してやるから、遠慮なく開拓してくれ。


 「どうしたトリトン、やり甲斐がありすぎて固まってしまったか」

 「い、いえ魔王様、ここは無理です」

 「な、なんと」


 む、無理だと。

 何故だ何故無理なんだ。

 やはり川などの水源がないと無理なのか。


 「魔王様、ここの土地には栄養がありません」

 「え、栄養?」

 「そうです、ここは痩せた土地なのです」


 痩せた土地だと。

 なんだそれは、これだけ広大な土地があるんだぞ。

 

 「ど、どうにかならんのか」

 「一応、土壌改良という方法がありますがそのためには牛糞や枯葉が必要です」

 「わかった、すぐ用意する」


 牛糞や枯葉が必要か、変わった要求だな。

 とりあえず近くの酪農家から牛糞を借りてこよう。

 そうして俺は瞬間移動で牛糞や枯葉を集めてきた。


 「こ、このくらいあれば足りるか?」


 だいたい30分くらいで大樽3つ分の牛糞と、大樽2つ分集めた。

 近場の酪農家や、領内の山中から枯葉をかき集めてきたが、集め過ぎたかな。


 「全然足りません」

 「え、ほんとに?」

 「そもそもこの広大な荒地を肥沃な土地に変えるなんて、土台無理な話なんですよ」


 困ったな、せめて肥沃な土地とやらがどんな土地かわかればそれを元にスキル、コピーでその大地の複製を作れるんだが……。

 いや待てよ、なら観に行けばいいんだ。

 そうして俺は気落ちしているトリトンの肩を叩いた。

 

 「なぁトリトンよ、この領内で最も多くの作物を育ててる地域はどこなんだ?」

 「え、それはここから西に30キロほど行ったところにあるダリという村ですかね」

 「わかった、ダリだな」


 そうして俺は瞬間移動で西に30キロほど離れたダリという街に行った。

 そこで俺は、多様な食物を育てている現場を見たり、そこの土地の土を手に取ってみたりして、肥沃な土地がどういうものかを調べてきた。

 そこでわかったのが、ダリには大きな川が流れ、広大な草原や森林なども近くにあったりで、自然豊かでとてもいい環境だったのだ。

 なるほどああいう環境が必要なのだな。

 よしここにも作ろう。

 まずは森からだ、

 スキル、森林開放を使いこの荒野に眠る木々達を眠りから醒させる。

 次にスキル、水脈生成によって枯れない泉を作る、そして最後にあそこで見た土をこの荒野全域にコピーさせよう。


 「よしできだぞ」


 俺は、延々と広がる荒野に森と川、そして栄養素たっぷりの土を生成した。

 これはら作物は育つだろう。

 

 「トリトンよ、これならどうだ」


 そうして、トリトンに最高の環境に出来上がった土地を見せた。


 「す、凄いです、これなら最高の作物を作れます」

 

 部下の求める環境を素早く用意する、これは上司に第一に求められるスキルである。

 ここからはじめるんだ、俺のこの領地征服への第一歩が。

 

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