表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
95/103

第95話 混乱と捜索


 代表団を街の外まで送る事が決まると、皆慌ただしく準備を始めた。


 そして、俺たちはホテル入り口の大きなホールで待機する。

 駅へ向かう手段を確認しているためだ。


 すると、ホテルの受付裏からボル先輩が出てきて声を張り上げた。


「特別車両の手配ができたぜ!!

 鋼王コウオウはポトダウの街近くに落下する見込みだ。

 セントノード行きも確保するから、急いで駅に向かってくれ!!」


 その声を聞いて、俺たち護衛と代表団は荷物をまとめて、急いで車両に乗り込んで行った。

 街の東側に位置する駅へ向かうためだ。


 俺もその車両の一つに乗り込み、急いで高台のホテルから丘を下る。


 一緒に乗った代表団の一員は、俺をチラッと見て舌打ちをしたが、それだけだった。

 行きは灰塵ダストだからと差別をされたが、もはや皆そんな余裕はないみたいだ。


 中央の高台から、丘を下った場所に広がる円形の街までは、数本の整備された道が存在する。


 だが、斜面が急なのでジグザグに蛇行しており、スピードを出すことができない。


 一応ロープウェイもあるが、待つ時間を考えたら車両で降るのが一番だろう。


「クソッ……」


 一緒に乗っていた代表団の一人が、焦るようにし悪態をつく。

 皆焦れるようにして車両が下っていくのを待つしかなかった。


 蛇行している道を、唸るような音と共に車両が下っていく。


 かなりの時間がかかってしまったが、駅に着くとすでに現地の警備部隊が準備していた。


「皆様をセントノード行きの車両へ案内いたします!

 私たちについてきてください」


 車両を降りるなり、白金色のチャージリングをつけたがっしりとした体格の男が、声を張り上げる。


 一緒に駅の中に入ると、人がごった返していた。


 駅のホームは立ち入りが禁止され、

 皆、巨大な掲示板の前に集まって、状況を確認している。


 全ての列車は運行を停止していることが大きく書かれていた。


「皆様は裏口からホームに入ります」


 人がごった返している場所には近寄らず、俺たちは職員用の扉を経由してホームに入った。


 黄色いエーテル燃焼光を発している列車が5列以上あるホームのほぼ全てに止まっていた。


 その中の一つが、うなりをあげて出発した。

 恐らく、クリスフォードさんを乗せた特別車両だ。


 墜落した鋼王コウオウを追って出発したのだろう。


 それからしばらく、引き継ぎの護衛担当と、エリカ、フエゴが話をしていた。


 ボル先輩が車両を手配したとはいえ、すぐに出発できるわけではない。


 急な対応だったので、いろいろ話す事があるのだろう。

 一応俺も護衛ではあるが、チャージリングの色のせいで蚊帳の外だ。


「ここからどうしようか?」


 外の騒音を聞きながら、俺はアルに問いかける。


『さっき言われただろうが。あの粘着ウェーブを探すんだろ?』


「そうだけど、キルシュさんとエアハルトさんが探しているんだろ?

 それならもう時間も経っているし、見つかってるんじゃないか?」


 俺は淡い期待も込めてそう答えた。


『あ? なに諦めてやがる。

 テメェは真紅ルビーの協力を得るんだろうが。

 さっさと探しに行け』


「そうだけどさ、流石にこんなことになっちゃったし、手詰まり感が……」


『言い訳してんじゃねえぞ、このクソ雑魚野郎が。

 そんなに全部都合よく行くなら、シニガミなんてとっくにぶち殺されてんだよ』


 俺がそう言うと、アルは怒って真紅ルビーのエネルギーを纏った。


「ちょっ、こんなところでやめ……ぶっ!!」


 そのままアルに尻を蹴り飛ばされ、顔面から、ホームの床に倒れ込む。


『ハッ、毎回学習しねえ奴だな。俺は寝るから、勝手にやってろ』


 そう言っていつものごとくアルは寝てしまった。


 ……そんなこと言われても、どうすればいいんだよ。

 俺はシュー……と音を立てて倒れ込んだまま、呆然としていた。


「おう、お前一人で何やってんだ?」


 声をかけられ、慌てて顔を上げるとボル先輩立っていた。

 相変わらず丸々とした大きな体が目立つ。


「いや、ちょっと……

 ボル先輩こそ、なんでここに?」


「おう。上でできることはほとんどやったからな。

 あの野郎を探すために、お前たちと合流しにきたに決まってんだろ」


 ボル先輩は腕を組んで、堂々と言い放つ。


「はぁ……あんな目に合わされても、やる気を失わないなんて、すごいですね」


「俺たちは白金パールだぞ?

 どれだけの恩恵を受けてると思ってるんだ?

 都合のいい時だけ偉そうにしてる奴になっちまったら、恥ずかしくて家族の顔も見れねえだろ。

 おっと、お前は白金パールじゃなかったな……」


 そう言って俺の頭をワシワシと掴む。


「ちょ、やめてください!」


 ……なるほど、この人はこんなだけど、ちゃんと白金パールとして貢献することを忘れてないのか。


 さすがに何度も鉱脈探索に参加しているだけあるな。


「すみません、お待たせしました!」


 そんなことをやっているうちに、エリカやフエゴも戻ってきた。

 無事に代表団の護衛を引き継ぐことができたようだ。


「おう、揃ったな! じゃあ俺たちもあの野郎を探しに……」


 ボル先輩がそう話し出した途端、駅の外のざわめきが明らかにうるさくなった。


「なんだ……?

 いや、あの野郎が現れたのかもしれねえ!

 行くぞお前ら!!」


 そう言って走り出したボル先輩に続いて俺たちも駅の外に出る。


 そして、目の前の光景に愕然とし、ボル先輩ですら言葉を失った。


 高台の上から、まるでマグマのような紅い光が、街全体を飲み込むように、ドロドロと斜面を下ってきていた。


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ