表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
61/103

第61話 石の価値

 

 グローリア鉱山から戻った翌日、

 アルと早朝訓練をするのはいつも通りだ。


 最初の頃は眠かったけど、さすがにもう慣れてきたな。


「クッ……ハァッ!!」


 右胸の燃焼器官でエーテル燃焼を開始する。


 最大まで出力を上げているが、キラキラとした白金色の光が増すばかりで色が変わることはない。


 真紅ルビーの力を自分で使えるようになるために訓練を続けているが、まだ成果はなかった。


 今日も何度も試したけど、効果が見えないのは辛いな。


『相変わらずだなテメェは』


 アルがエーテル燃焼を開始し、俺の右胸の熱が跳ね上がる。

 そして真紅のエーテル燃焼光が俺の体からあふれ出した。


 アルは、なんで出来ないんだ?と、いった感じで軽々とやってのける。


「クソッ!そんなに簡単にできるわけないだろ」


 俺は頭の後ろで手を組んで寝転がっているアルを、恨みがましく睨んだ。


 ちくしょう。

 やっぱり、真紅ルビーは特別なのか?

 同じ燃焼器官を使ってるからできるようなものではなくて、なんか別の要素も必要なんじゃないか?


 なんでうまくいかないのかを考えてみるが、手掛かりがない状況だ。


 やばい。そろそろ戻らないと。

 今日は朝からオーウェン学長に呼び出しを受けているんだった。


 昨日はグローリア鉱山でエーテル燃焼体の残党排除が任務だったが、その後の任務は掲示板に示されてなかった。


 セドは別の鉄道警備に戻るように指示があったが、俺は個別で学長室に来るよう記載があったからだ。


 さすがに皆、誰がどの任務についているか全てを把握してはいないけど、気がついた数人からは「またお前か」というような視線を感じることになった。


 セドも驚いていたように、学長に呼び出されるのは普通じゃないからな。


 そんなわけで、少し早足で教育棟の方へ戻る。


 いつもの樹々が切り倒されているエリアを超えたあたりで、鐘の音が聞こえ出した。


 シニガミの出現を告げる鐘だ!


「クソッ、シニガミか」


『ハッ、別に珍しくはねぇだろ』


 アルの言う通り、別に珍しいわけじゃない。

 酷い時には数日に一度は聞くことがある。


 鐘の音が聞こえ始めていれば、場所を把握できているのでまだ安全だ。


「だけど宿舎棟の方向から聞こえるぞ。

 まだ寝てる人もいるはずだから、被害が出てるかもしれないな」


 鐘の音は教育棟ではなく、宿舎棟の方から聞こえている。

 つまり、寝ているところに襲撃を受けた可能性があるということだ。


 周りは監視できても、地面の下や空から現れた場合は防ぎ切れないからな。



 教育棟が見えてくる。

 何人かの生徒が青い顔をしていた。

 やっぱり、被害があったのか……


「シュウヤ!!無事だったか!」


 セドが少し安堵した表情で近寄ってきた。


「ああ、セドも大丈夫だったのか?」


「俺はちょっと早めに目が覚めたから、運が良かったぜ。だけど……」


 セドが向けた視線の方向に目を向けると、顔に黒い布を被されられた体が、何体か運ばれて来た。


 少し見えた手の甲の部分は、老人のような皺だらけだ。


「まだ暗い時間に、地面の下から現れたみたいだ。

 一階の監視が警報を鳴らすとほぼ同時に、宿舎が襲われ出したらしい」


 時々押し殺したような泣き声が聞こえてくる。

 何人も死者が出ているようだ。


 周りを見渡すと、アザカが真っ青な顔で立っているのが見えた。

 何人かから声をかけられている。


 アザカは首のチャージリングに手を当て、倒れそうな顔で俯いている。

 チャージリングの石が灰塵ダストの俺よりも少ない。


 昨日は六割以上残っていたはずだが、三割程度まで減っていた。


 シニガミに触れられたのか……


「アザ……」


 セドが声をかけようとして止まった。

 たぶん、近くにエリカがいることに気がついたからだ。


 エリカが意を決したように、アザカに歩み寄る。


「触れられたの?

 石は……まだある?」


 俯いていたアザカは、少しだけ視線を上げたが、エリカに目は合わせなかった。


「…………石が無くてもどうしようもないでしょ。

 もうすぐ支給だから。

 それまで気をつけるしかないから」


 絞り出すように声を出して、そのままエリカから離れていった。


 エリカは拳を握りしめて俯いている。


 出来ることは…………ない。

 石は金よりも大切な命を守るものだ。


 たとえ友人でも、渡していいものではない。


 暗い表情をして、皆それぞれの任務に向かう。


 これはシニガミがいる限り避けられない日常だ。

 皆それをわかっていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ