表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
54/103

第54話 最高の笑顔

 

 日の出と共に出発して走り続けた俺たちは、かなりの距離を進むことができた。


 俺とバレッタさんの連携もほぼ完璧になっている。


 俺が事前に察知した強敵をかわしながら、最短経路で進み続ける。


 たとえ多数のエーテル燃焼体に襲われても、俺の察知能力とバレッタさんの力を合わせれば、問題なく突破できた。


 ヤバそうな奴も何度か察知したが、躱して進むことができてよかった。

 流石に浅くても未当領域、察知能力を鍛えてなかったら何度も死んでるな……


 だけどもう少しで未踏領域を抜け、鉱山の外周に辿り着きそうだ。


 ……これは!

 知っている白金パールの気配を感じて、一瞬驚く。


 エアハルトさんか!

 少し先だけど、追いついたみたいだ。


 ふう、強敵と出会ったら危ないと思ったけど、何とかかわして帰還できたな。


『……ここで来るとはな』


「え、なに?」


 俺がほっとした瞬間、アルが珍しく声を上げた。


白金X(パール10)相当だ。追いつかれるぞ』


 アルの言葉を理解する前に、背後から強烈な悪寒が襲ってきた。


「ッ……!」


 これはやばい。

 アルの力を使わないと……


 まさかこんな最後、浅い場所で強敵に出会うとは……


「どうかしたのか?」


 怪訝な顔で、バレッタさんが俺に問いかける。


「……あと少しなので、このまま進んでください」


「なに?」


白金X(パール10)以上のエーテル燃焼体が追ってきています。

 追いつかれるので、俺が残ります」


「なんだと!?」


 次の瞬間、バレッタさんが血相を変えた。

 存在を察知できたようだ。


「バカな!! 死ぬ気か!?」


 バレッタさんは俺に詰め寄った。

 だが、足は小刻みに震えている。


 無理もない。

 ここまでの強敵、一刻も早く逃げ出したいはずだ。


「大丈夫です!

 死ぬ気はありません。上手く逃げてみます」


「だが!!」


「早く行って!

 俺は普通の灰塵ダストより逃げるのが得意だから!」


 震えながらも、バレッタさんはその場を動かなかった。


「少し先に、エアハルトさんがいると思います。

 俺を心配するなら、早く応援を!!」


「お前も一緒に……」


 ダメだ、この速度で迫ってきては間に合わない。

 渋るバレッタさんに、俺は背を向けて告げた。


「みんな勝手だって言ったでしょ!!

 こっちにも考えがあるんです!

 早く行って!! 早く!!」


 もう時間がない。

 俺は急かす口調で突き放した。


「ッ……最後だ。

 嘘だったら、私は何も信じなくなるぞ!!」


 そう言ってバレッタさんは俯き、走り出した。

 

 ふう。ギリギリ間に合ったか。


 離れていくバレッタさんの気配を感じながら、俺は正面から迫るエーテル燃焼体を待ち構える。


 ここまで強烈なエーテル燃焼の気配を振り撒いてるなら、都合がいいな。

 俺が右胸の燃焼器官を使っても、バレッタさんに気づかれない。


『テメェがやるのか?』


「俺が強くならないと、シニガミを倒す手がかりも探せないだろ?」


 アルの言葉に強がった笑みを浮かべながら返す。

 さすがに強敵だけど、ずっとアルに頼るわけにはいかない。


『ハッ、それならさっさと強くなりやがれ』


 ニヤついて告げたアルの言葉が聞こえた直後、正面にその存在が見えた。


 一見、巨大な蛇のようにも見えるが、サイズがおかしい。

 巨大な樹々と同じくらいの太さの胴体、もたげた首は見上げるほどの高さに到達している。


 そして何より白金色に光るエネルギーを全身に纏っていた。


「このサイズで、俺たちを追ってきたのかよ……」


 俺が呟いた瞬間、もたげた首が一瞬でこちらに迫った。

 ほんの1秒にも満たない、刹那の瞬間だ。

 俺は纏っていた白金パールのエネルギーを使い、横にかわす。


 巨体に似合わない攻撃速度だ!

 首を後ろに引く予備動作がなかったらヤバかったけど、未踏領域でアルにみっちり動きを見るように指導されたから、事前の動きを見逃さずにすんだ。


「っ……!」


 俺はそのまま背後に回り込もうとしたが、ビュンッと風を切る音で後ろに下がった。


 目の前を、恐ろしい速度でキラキラと光る尾が通過する。

 地面を擦り上げ、大きな音と共に一瞬で大量の砂埃を巻き上げた。

 それが樹々に叩きつけられ、一斉に周囲に音が鳴り響く。


 躱しきれなかった砂で、俺の服や装備がズタズタになった。

 纏った白金パールのエネルギーでダメージは少ないが、あの胴体や尾が直撃したらまずい。


「ッ……クソッ……!!」


 俺が少し息を整えようとしたら、すぐに目の前に白金色のムチのようなものが迫っていた。

 

 こいつ!

 遥か上空の口から、この距離まで舌を伸ばせるのか!

 どんだけ舌長いんだよ!!


 上から叩きつけられるその軌道を、転がるようにしてかわす。


 このままじゃジリ貧だ。

 だが、今ので隙は見つけた!


 俺はあえて正面に転がり出ると、上から叩きつけられた巨大な舌を紙一重でかわした。


 そして、そのままエーテル燃焼体の口元まで飛び込む。


「頼む!!効いてくれよ!!」


 俺ら祈るような気持ちでその鼻先に腕を伸ばし、燃焼エネルギーを放出、叩き込んだ。


 パンッッという弾ける音と共に、その巨大な顔の一部が破裂する。


 だが、動きを止めたのはほんの一瞬だけだった。


 空中で動きが取れない俺に、すぐに巨大な尾が迫る。


「っ……!」


 やばい!

 俺は白金パールのエネルギーを背中から放出し、空中で無理やり向きを変えた。


 すぐ鼻先を恐ろしいほど鋭い風を切る音が通過する。


 俺は地面に背中から落ち、何度か転がった。


 目の前の蛇のようなエーテル燃焼体は、顔の一部が崩れているが、致命傷には遠そうだ。


 アレでも倒しきれないのか……これは何度も繰り返すしかないか……?



『……おい、時間切れだ』


 どうやって倒せばいいか俺が悩んでいると、アルが不意に告げた。


 そして、右胸の燃焼器官が一気に熱を帯びる。


 体全体が燃えるように熱くなると同時に、放出された真紅のエネルギーが、一瞬でエーテル燃焼体の顔を貫いた。


 首から上を失い、長い胴体が土埃をあげて地面に横たわる。


 そして、胴体は少し動く気配を見せたが、やがて緩慢になり、完全に動きを止めた。


 ……時間切れ?


 俺が周囲の気配を探ると、エアハルトさんとバレッタさんがこちらに向かってきていた。


 まだ距離はあるが、これを見られるわけにはいかない……間に合わなかったか。


「ごめん。倒せなかった……」


『ハッ、さっさと俺の真紅ルビーを使いこなさねえからだ』


 ぐっ……

 アルに苦笑され、言葉に詰まる。


 確かに、早く真紅ルビーを使えるようにならないとな……


『そんな事より、さっさと戻りやがれ』


 座り込んだ俺を、アルが足で払う。


「わかってるって!」


 バレッタさんとエアハルトさんの気配がどんどん迫っている。


 俺は疲れた体に鞭を打ってバレッタさん達の方向へ走り出す。


 しばらく進むと、二人のエーテル燃焼光が見えてきた。


「シュウヤ!!」


 バレッタさんの声が響く。


「お前……無事だったのか!」


 全速で走っていたのか、バレッタさんは息を切らしていた。


「大丈夫って言ったでしょ?」


 俺は微妙な笑顔で告げる。

 もし死んだら、バレッタさんはトラウマになっていただろうな。無事に帰れてよかった。


「ッ……お前、あの状況から、どうやって……」


 バレッタさんは信じられないといった様子だ。

 まあ、普通そうだろうな。


「逃げた後、上手く隠れてやり過ごしました」


「…………ふっ、そういうことにしてやろう」


 何でもないように告げた俺に、バレッタさんは表情を緩めて言った。


 さすがに気になることもあるだろう。

 でも、バレッタさんはそれ以上追求してこなかった。


「二人とも、よく生きて帰ってくれたね。

 さあ、戻ろうか」


 エアハルトさんの言葉で、俺たちは戻り始める。

 しばらく進むと、他のメンバーが見えてきた。


「……おいエア、なぜ全員残っているんだ?」


 バレッタさんが困惑した声をだす。

 エアハルトさん以外とは合流していなかったようだ。


「いや、僕だけ残ろうとしたんだけど、皆がね……」


「おう!!やっぱり生きてたか!!

 さすがエアハルトの勘は当たるなぁ!!」


 ボルボ先輩が手を上げ、相変わらずの大声で迎えてくれた。


 すると、ネストがバレッタさんに駆け寄り、頭を下げた。


「バレッタさん!!

 よかった……バレッタさんが助けてくれなかったら、僕は死んでいたので……本当によかった。

 ありがとうございます……!」


 続いて、コルドラも頭を下げる。


「お、俺も……俺たちが逃げるまで、牽制してくれなかったら、今頃……

 あんたは、他の奴とは違った。

 灰塵ダストの俺も区別なく助けてくれた。

 本当に、本当にありがとう」


 突然のことにバレッタさんは立ち尽くし、エアハルトさんの方を見た。


「皆、バレッタが心配だからここに残るって聞かなくてね」


 エアハルトさんが苦笑しで告げる。


「……なんだそれは。そんなことのために、皆残っていたのか。それに……本当に皆、勝手なんだな……」


 そう言いつつも、バレッタさんも苦笑していた。


「バレッタ……」


 エアハルトさんが、安堵した表情をしている。

 ずっと笑わなかったって言ってたからな。

 心配だったんだろう。よかった……


「オラ!!お前も助けてもらったんだろ!? ちゃんと頭さげろよ!」


 ボル先輩が俺の頭を抑えようとするので、

 俺もバレッタさんに向き直る。


「バレッタさん本当にありが……

「おい、お前」 ……はい?」


 お礼を言おうとして、バレッタさんに遮られた。


 真面目な表情で、バレッタさんが俺に向き直る。



「お前、シニガミを倒すって言ったのは本当か?」


「……はい」


「ほんの、ほんの少しだがな……

 お前ならって思えるようになってきた。だから、まあ……」


 言いにくそうに言葉を区切り、バレッタさんは続けた。


「何かあれば、私を頼れ。


 ……次は、私が助けてあげる!」


 なっ!!!

 今まで見たことがない、バレッタさんの本気の笑顔はあまりにも破壊力が強かった。


 その不意打ちに、俺は思わず顔を赤らめる。

 これは無理だ……


「お、お前、何しやがった……」


 唖然とする周囲の視線が俺に突き刺さる。

 えっ、ちょっ……ええ!?


 俺は顔を真っ赤にして狼狽えるしかない。


『ハッ、なんだかんだ一歩近づいたな』


 戸惑っている俺に、アルが苦笑しながら告げた。


 えっ? 何に近づいたんだ……?

 一瞬そう思ったけど、バレッタさんの言葉を思い出して納得する。


 ああ、そうか。

 バレッタさんが助けてくれるなら、心強いな。


 だけど今俺が考えているのは、シニガミを倒すのにプラスになるとかじゃない。


 純粋に、この人を笑顔にできてよかった。


--それが今回、一番嬉しいことだと心から感じていた。




第二章はここまでです。

読んでいただきありがとうございます。

もし、もしも、読んでよかった! と、思っていただける内容だったら、評価いただけたら嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ