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第52話 振り絞った勇気

 翌朝、バレッタさんは起きるとすぐに帰還の準備を始めた。


 熱は下がったとは言え、流石にもう少し休んだほうがいいと伝えたけど、考えを曲げなかった。

 この人、結構頑固だな。


 仕方なく俺も荷物をまとめる。


「私が倒す。お前は敵を察知したら私に教えろ」


「えっ? あ、はい」


 把握している情報を伝えると、バレッタさんはあっさりと方針を決めた。


 これは、俺を連れて帰還してくれるってことか?


 右胸の燃焼器官を使わないでも、何とかなるのかもしれない。




「斜め右前! 黒硫黄サルファ2体、突っ込んできます!!」


「わかった」


 俺の声で、バレッタさんは銃を構え待ち構える。


 そして突っ込んできた、鳥のようなエーテル燃焼体を2発の銃声で沈めた。

 所謂ヘッドショットだ。


「次、後方からも黒硫黄サルファが3体!!」


「クソッ……」


 立て続けの襲撃に、バレッタさんも舌打ちして銃を構える。


 今度は5発くらい連射をして、硬い棘のようなものを背中に生やした、四つ脚の獣を3体片付けた。


「えーと、次!また右側の……」


「……っ面倒だ、指で示せ!」


 バレッタさんに言われて、俺は人差し指と中指で右前方を示す。


「また2体!! さっきより強いので、気をつけてください!」


 バレッタさんが構えると同時に、さっきより一回り大きな鳥型の獣が突っ込んでくる。


 バレッタさんは、再び数発ずつ白金色に光る弾丸を寸分狂わず頭に叩き込んだ。


 おお、なんかいい感じだ。

 俺が指を差した方向にバレッタさんが撃ってくれるから、何というか自分に酔いそう?な感じがする。


 灰塵ダストが偉そうに白金パールに指示を出している。これは他の人が見たら仰天するような光景だろうな……


 バレッタさんは黙々と俺の指示に従って処理をしていく。


 そして、今日何度目かもわからない襲撃を防ぎきった。



----


「……お前、ただのダストじゃないだろ」


 バレッタさんと焚き火を囲むのも慣れてきた頃、不意に言われた。


「えっと……」


「どうやってそこまでの力を手に入れた?」


「まあ未踏領域に放り込まれたら必死で……」


 バレッタさんはじっと俺を見たままだ。

 少し、真面目に答えた方がいいな。


「……常にエーテル燃焼の気配を探るんです。

 たとえ、寝ている時でさえ。

 そうすれば、百回くらい死にかけたときにコツがわかってきます」


「……普通は不可能だな」


「まあ、そうですけど……」


 俺もアルがいなかったら、百回死んでるしな。


「バレッタさんこそ、なんで危険な目にあってまで、俺を助けようとしてくれたんですか?」


 あまり探られないように、話題を切り替える。


 ……少し長い沈黙。

 その後、チッ。と舌打ちしてバレッタさんが呟いた。


「自分を犠牲にして助けようとしたわけじゃない。ただの判断ミスだ」


 やっぱりそう答えるか。

 今までのバレッタさんの言葉から、何て答えるか少し予想ができた。


 だけど、もっと深いところを知りたい。

 だからあえて突っ込んで聞いてみる。


「それは……過去に助けられず、恨まれたことがあるからですか?」


「……何だと?」


 怖えぇぇ……

 キッと鋭い目つきで睨まれ、思わず謝ってしまいそうになる。


「…………はぁ、エアハルトか。

 帰ったら殺してやる」


 疲れたようにため息をつき、バレッタさんが呟いた。


 やばい。俺への怒りは消えたみたいだけど、エアハルトさんになんて言おう……


「お前にはわからないだろう。

 味わったことがない奴には、わからない。

 死に際に向けられる、あの恐怖と憎しみが混じった視線……」


 バレッタさんは視線を下げ、俺との間にある火を見つめながら、静かに話し出した。


「いつも願っている。

 ……頼むから見えないところで、私のどうしようもないところで死んでくれと」


 再び視線を上げてバレッタさんは続けた。


 両膝を抱えて話す様子は可愛らしいが、まるで親に怒られた子供のようにも見える。


「呪いだよ。あれのせいで、いまだに咄嗟の判断を間違えるだけだ。お前はラッキーだったな」


 判断ミス。

 確かにそれも間違ってないと思う。


 だけどなんでこの人はこんなに辛そうなんだろう。


 たぶん、俺よりは遥かに待遇も良くて、生きやすかったんだと思うけど……なぜか助けてあげたい。


 そんな気持ちが湧き上がる。


 少しアルに視線を向けると、アルは何も言わず腕を組んでたたずんでいた。


 何を言うかは俺が決めろってことか。


「……俺はあまり他人を見ようとしていなかったから、話を聞くまではバレッタさんをただの冷たい人だと思ってました」


「別に間違っていない」


「だけど……バレッタさんも人のこと全然わかっていないと思います」


「……何が言いたい」


 俺は少し強い口調でバレッタさんに告げる。

 そうしないと、勇気が出ない。


「バレッタさんが俺を助けようとしてくれた時、俺は何を考えてたと思います?」


「……さあ、なぜ私が助けるのか、わからなかったんじゃないか?」


「実際は、この姉ちゃん、なに余計なことしてくれてんだ!って思ってました」


「……あ?」


 凍えるようなバレッタさんの声が響いた。


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