表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
17/103

第17話 追撃

----



「……いた!」


 俺は密林のなかを走り抜けながら、声を上げた。

 

 セドと呼ばれていた同期の姿は見えないが、

 樹々の隙間から、エーテル燃焼体の姿が見えた。


 黒と黄色のエネルギーを纏っていた。

 やはり黒硫黄サルファⅡ程度のレベルだ。


 どうする……

 この力を使って倒すか?


 一瞬戸惑ったが、俺は襲われている隊員隊を助けることに決めた。


 だが、白金パールレベルのエネルギーが二つ来ているのも感じている。


 これは……


『ハッ、白金パールのお出ましだ』


 一つはこの前怒らせたやばい女、エリカの気配だろう。

 もう一つは知らない気配だ。


 直後に、エーテル燃焼体の気配が二つ消滅した。

 ……どうやら大丈夫そうだな。


 俺は、こっそりと彼らの背後へ回り込む形で森林地帯を抜ける。


「あいつ、無事みたいだな」


 隣の区画へ向かった同期、セドが立ち上がるのが見えた。


『運がよかったな』


 アルが答える。


 エリカともう一人の白金パールは……フエゴか。

 

 同期の一位と二位がそろって駆けつけたのか。

 それは確かに運がいい。


 ……思わず道に出てしまったが、そのまま帰ればよかった。

 どうしようか。


 見つかってないなら、今からでも帰ろうか。


 それにあと一体、逃げていったエーテル燃焼体の気配をまだ感じる。


 そんなことを考えていると、フエゴとセドの会話が聞こえた。


 セドが俯くのが見える。

 よくわからないが、何かを失ったのか?


『おい、今のうちにさっさと追いかけろ。

 どうせ、あのザコを追う気だろ?』


「わかってるよ。倒しておいたほうが良いと思う」


 そう答えて、森林地帯の方向へ足を向ける。

 だが……


 ……げ、セドと目が合った。

 フエゴも直後に俺に気が付いたようだ。


「……お前、何してるんだ?

 手負のエーテル燃焼体なら、倒せるとでも思ったのか?」


 冷めた目で、フエゴが俺に話しかける。


「いや、血がたくさん出ているようだし、ちょっと見てみようかと……」


 焦って変な答えをしてしまった。


 もう少しいい言い訳あっただろう……

 自分の頭の悪さに失望する。


「……俺は助けない」


 フエゴは一言残し、興味なさげに去っていく。

 ムカつくほどにクールなやつだな。


 俺は静かに道を外れ、森林地帯へと入った。


 ……みんな、そんな目で見るなよ。


 何やってるんだコイツ? 

 という目で見られていたが、そのまま進んだ。


 森林地帯に入り、皆の姿が見えなくなった。

 白金パールの燃焼エネルギーを纏い、加速をする。


『思ったよりも、逃げ足が速いヤツだな』


 アルの言う通り、かなり遠くまで逃げられている。


 だけど、今の俺なら数分もかからずに追いつける。


 良くも悪くも、未踏領域で走り続けた日々のおかげだ。


 あのエーテル燃焼体、これだけの速さで動けるなら致命傷ではないだろうな。


「……いた」


 黄色いエネルギー光が、かすかに見えた。

 

 俺は白金パールのエネルギーを右手に集める。

 そして、背後から一瞬で距離を詰めた。


 走っているエーテル燃焼体が、驚いたように振り返る。


 俺は追いつくと同時に、右手を側面に突き刺し、エネルギーを打ち込んだ。


 色々試した中で、俺が一番得意な攻撃方法だ。


 俺はアルほど強力な放出はできないけど、この攻撃方法なら、身体の内部へダメージを与えることができる。


 エネルギーを高めれば、敵が破裂するほどの威力も出せるが、汚れるのでうまく調節することを覚えた。


 隣を走るエーテル燃焼体は一瞬で絶命し、倒れ込んだ。


 当たり前だけど、未踏領域のエーテル燃焼体と比べてかなり弱い。


「この程度なら、問題ないんだけど……」


『さっきの奴らは歯が立たなかったみたいだな』


「そりゃあ、黒硫黄サルファじゃあ勝てないだろ。

 戦闘経験がある人は限られてるし……」


『ハッ、探索も進まねえわけだ』


 アルと話をしながら、エーテル燃焼体の死体を見つめた。


 きらきらと白金色の粒子が身体の内部から漏れている。


 よく見ると、肩のあたりに深く短剣が突き刺さっていた。


 アイツが気にしていたのはこの短剣か?


 俺は死体から短剣を引き抜いた。


 素朴な見た目だが、よく手入れがされているように見える。


『どうする気だ?』


 どうするっていっても……


 回収したら面倒なことになるかもしれないが……

 あいつがさっき落ち込んでいた姿が気になった。


「……一応渡そうと思って。言い訳は必要だけど」


『親切なやつだ』


 そう言って、アルは軽く笑った。


「うるさいな。アルもそうするだろ?」


『ガキが。さっさと戻れ』


 予想通りの反応が返ってきた。


 さて、急いで戻るかとするか。


 勝手にどっか行ったと報告されていたら面倒だけと、とりあえず道に迷っていたことにしよう。


 俺は担当区域の隊長に怒られることを覚悟しながら、走り出した。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ