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8. Love.

 

 期末テスト終了後、その結果次第で家庭教師を続けるかを決める事になっていた。

 俺の粘り強い指導のお陰で、智の数学の点数は、四十三点から七十二点に上がる。

 母親は今後共よろしくお願いします、と頭を下げたが、俺は智に訊く。

 どうする? と。



 答案を見て間違えた箇所を復習し、智の知識は完璧になる。

 その答案を眺めながら智は、

「続けた方がお金になるだろうし、卒業迄付き合ってあげても良いけど」

 などと興味無さそうに言い放つ。

「確かに定期収入は有難いな」

 でも山下君の時間を増やす話もあるしなぁと返すと、智は弾かれた様に顔を上げて俺を見た。


 あれ以降、一応試験前だということもあり、家庭教師としての義務を全うする為、極力勉強以外の会話は避けて通っていた。智も試験に集中したいのか、それとも恥ずかしくて気まずいのか、会話はしても目と目をしっかり合わせることは殆どないに等しかったのだが。


 久し振りにきちんと視線を絡めて、やはり黒い瞳が一番良いなと思いつつまじまじと見詰めると、彼は赤くなって視線を逸らした。

 やはり可愛いと言いたくなってしまう。


「続けるか」

 確認の意味でもう一度訊く。

「定期収入に協力するよ」

 智は俺から目を逸らしたまま、左手を伸ばして俺の袖を掴む。その代わり、と続ける。

「ん?」

「点数上がったらご褒美が欲しい」

「いいよ、何?」

「ワン、キス」

「!」


 智が顔を上げる。視線が絡む。俺の好きな黒い瞳。

「センセ」

 好きと小さく。

 音になるかならないかの小さな声で、智が囁く。

 どきり、という状態ではなかった。心臓が電気ショック並に跳ね上がった。

 誘うなよ、そんな瞳で。

 それでも俺はやっぱり平静を装う。一度優位に立った為だろうか。つい意地悪を言いたくなってしまう。


「先生を続けるからにはさ。生徒に手を出すのは良くないと思うんだよな」


 智は視線を宙に泳がせて暫し考えた後、印象的な瞳を向け、

「康平」

 と。

 俺を、呼んだ。


 そしてその夜、俺たちは二度目のキスを交わした。

 俺は前回と同じ様に、智の首に腕を回し、抱き寄せる。

 違ったのは、智の腕が、俺の背中に回されたことだ。






本編はこれで終了です。

視点を変えて、あと2話ほどお付き合い下さい。


お読み頂き有難うございました。


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