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サークル長の重圧、長谷部の苦悩



いつもながら、ちょっとだけお下品な描写があります。苦手な方はご注意くださいね。(^ν^)



===




『うちの読サーの長である残念なイケメンスイマー神田川先輩が、なんだかんだあって真っ白な灰になり、それが原因でサークル長の座を僕に譲った、その経緯がアフォらしいって話、虚しくなるけど聞いて?』





はい。ご無沙汰しております。『読書サークル研究会ほにゃらり』のサークル長を務めています、みなのアイドル長谷部でございます。


え? サークル長は、神田川素意成かんだがわそいやとかいう、残念スイマーじゃなかったか? って?


ふふん、よくぞその(フルネーム)を覚えていてくださった!


そんなあなたを、ほにゃらり通と認定!

ありがとう!


でもまあそれは置いといて。まずは僕の話を。


うおほん!

あ゛あ゛んん(喉の調子)


繰り返します。昇進しました。ヒラ社員から社長に爆昇進しました。


というのも話せば長くなるし、いつも通り最終的には虚しくなっちゃうけど、聞いて?


いつの間にやら、一学年の進級を遂げた、僕たち。


当のサークル長、神田川先輩についてだけれど、まあいつも通り人生色々あって、身も心も折れてボロボロな廃人と化してしまったのだが、後に華麗なる転身を遂げてサークルを卒業(⁉︎)したので、繰り上げ当選的な感じで、この度。


僕がサークル長になりました。


繰り上げだと言うなら、次の位置にいるのは、僕のひとつ上、すみっこパイセンもとい、林先輩、もとい袋とじ命の陰キャ、すみっこパイセンではなかろうか?


そんな声が聞こえてきそうだけど、特に聞こえてこなかったということもあり、僕の二段階右折的昇進が早々に決まった。


まあ? 将来? 我らがアイドル、弓月 花音(ゆづき かのん)さんと結婚することとなった時に(きゃ!←図らずも、はずきるーぺを自らのおしりで踏んでしまった風に)、そういった何かしらの経歴というか肩書き的なものがあった方がいいだろう、ということもあって、即快諾したというわけ。


うん。そうなんです。快諾したんです。でも。


いきなりの二段回右折的肩書きの重圧から、僕はサークル長就任後の一週間を。


胃が痛くなるような思いで過ごしていた。

食欲も落ち、体重も減り、かなりげっそりしてしまったのだ。


サークル室に出入りする野良猫のノラロウにも、これにはかなり心配をかけてしまったようだ。そんなノラロウが、大学の学生食堂のオバチャンからもらったジューシー唐揚げを、食べかけとはいえ、そっと差し出してくれた、なんて心温まるエピソードが代々語り継がれるくらい、僕はやつれ果ててしまっていたのだ。


だがしかし。覚えていてくださっているだろうか。


サークルのイメージ主食、『白米』のことを。我がサークルが崇拝する神、『ホワイトベィー』さまのことを。


その白米を水からコトコト煮てできる、神秘の料理、『お粥』。そんなお粥を頼みの綱にし、僕が生きながらえたことは想像に固くないだろう。


ちなみにどうでもいい話ではあるが、僕はこのサークルのイメージ食でもある、白米を使ったお粥さんのことを、『とろり(まい)』と呼んでいる。ま、そんなこたぁ、どーでもいいけどね。


「ふぅん、『とろり(まい)』かあ。なかなかいいネーミングだね! さすが新サークル長の長谷部くん! お粥の持つ、素朴だけれど、人間くさい温かみっていうか、味わい深さっていうかが、とてもうまく表現されていると思う」


え、そそそそそそうかな!

我がサークルの紅一点、僕たちの心の女神、弓月ゆづき 花音かのんさんのお墨付きをいただけた!

やっほい!(嬉)


「遠く卑弥呼の時代から、脈々と受け継がれてきた田んぼへのリスペクトも感じられるし、」


ありがとう! その通り!


「お粥って消化にもいいから、プレッシャー(長谷部の弱さ)やら長としての責任感やらで、弱りに弱り切った胃腸にこんなにも優しい食べ物はないしね……でもね、長谷部くん。そんな優しさや、白米の持つポテンシャルを引き出そうってなった時にさ……」


ん ?



「……ネーミングは、とろり米より、『とろぉり(・・・・)(まい)』って、ちょっと抑揚をつけた方が良いような気がするの……」


な⁉︎



……なーんだ、ネーミングの話ですか。弓月さーん、真剣に考えてくれてたんだね。どーでもいい話だなんて言ってごめんね。


確かに弓月さんは、新聞紙、トマトに続いて3番目くらいに白米のことを、大切に思ってる。(←ちなみに長谷部は9〜10番目くらいにランクインだが、当の本人はそのことを知る由もない)


「で、新ネーミングはどう? かな?」


弓月さんが僕の顔を覗き込むように訊いてくる。


ドキィィーーーいいいイエスイエス

   イエッッッサーーーよ!

オッケーオッケーおけはざま!


「イイねイイね! それでいこう!『とろり(まい)』改め、『とろぉり(・・・・)(まい)』!」


聞いてましたか、岩波書店殿! 広辞苑にもそのように掲載をお願い致しますッッ!






話を進めよう。


そんでね、そんな風にして僕はサークル長就任から、弱った一週間を過ごしていたんだけど、ついにその8日目にね、僕にご神託がおりたわけよ。


ぴしゃんと雷のごとく、神の声が聞こえたってわけ。


「ねえ長谷部くん。私、長谷部くんなら立派なサークル長になれると思うよ」


え、8日目に? 何をいまさら?


なーーんて思うかもしれないけど、サークル長への責任と覚悟を再認識するには、ちょうど良い時期なんだッ(ぺこぱ風)


そうなのよ。僕の心のオアシス、僕だけのマドンナ(←昇進により少しだけできた心の余裕)、弓月 花音さんがそう言ってくれたのよ。


これってもうご神託だよね。ご神託そのものだよね。神の与えしお言葉以外の、なにものでもないよね。


「え、そうかな……そう言って貰えて嬉しいけど……あの、色んな意味でスーパーバキバキシックスパックな神田川先輩の、後任だなんてね。大役も大役過ぎて、あんまり自信も食欲も湧いてこないんだよね」


すると、弓月さんの表情が、サッと曇ってしまった。少しだけ、悲しげな表情。


あ、やっちまった……。その神田川先輩の、その名前を出すのも、配慮しなければならなかったのに。


僕は慌てて、


「でででででも、神田川先輩、この前見かけたけど、すっごく元気だったから!」


そんな僕の慌てぶりに、クスッと笑って、ありがとうと小さく言ってくれた。


あんなことがなければ、弓月さんの中にわだかまりなんて芽生えなかっただろうに……。でも、弓月さんはただ親切心で……。そう、何にも悪くないんだから……。


すると、弓月さんが口元に小さな笑みを浮かべながら、例のごとくポケットから新聞紙を取り出した。いやもうこれ『例のごとく』、ね。恒例行事だからね。


弓月さんはどんなに可愛らしいワンピースを着ていても(キャワイー!)、どんなに可愛らしいサロペットを着ていても(サイコー!フー!)、どんなに可愛らしいツナギを着ていても(ヒゥイゴー!)、とにかくいつでもどこでも常にポケットに新聞紙を入れているんだよ。


なんか、歌や本の題名みたいだな。『ポケットに新聞』。みたいな? ま、それは置いといて。(確実なパクリ疑惑)


それでね。出した新聞紙をおもむろにビリビリビリビリと破り始めた。


「長谷部くん、ほら、こうすると新聞紙って、簡単に(・・・)破れちゃうでしょ」

「う、うん。まあそうだね」

「でもね、長谷部くん、」


え、待って。あーーはいはい。なるほどなるほど。はいはいはいはい。りょ。


最近、弓月さんの言わんとしていることが手に取るようにわかるようになってきた(全てが新聞がらみ)。


僕は、


(ああ、三本の矢的な? 一本ならすぐに折れてしまうけど、三本ならやすやすとは折れない。私たちがついてるよ、フォローするよ、みたいな?)


なんてことを想像し、ふふん弓月さんに慰めてもらう気満々でいると、弓月さんはその破った新聞紙をおもむろにぐちゃぐちゃに丸め、グリグリとひねり、ボロ雑巾のようにギュウギュウとひねり始めた。


え?


三本の矢?


ではなく?


「新聞紙って、こうすると……」


絞り切って硬くなった新聞紙を、再度破ろうとする。


「ほら、破れないでしょ?」


え?


こ、これはなんなんだ? どういう意味だ?


ガードを固めて身を守れってこと?


ひ、一人で頑張れってこと?


「……そ、そだね」


はっきりした意味はわからない。だが、深読みはしない方がいい。これも、対・弓月さん戦術のひとつで、弓月さんの(新聞を例えにした)言動は、たとえボロボロになろうとも、深く考えず素直に受け止める! これ重要!


なーにー? やっちまったなあ! 男は黙ってサンドバッグ!


「……ありがとう、弓月さん。元気でたし、やる気もみなぎってきたよ!」


とはいえ、僕は、いまいちサンドバッグになり切ることができず、深く動揺しながらも、よっこらしょっと立ち上がった。


「さて、掃除でもするかあ!」


もちろん、カラ元気だ。言うまでもなく。


ついさっきまでこのサークル室にいた、野良猫のノラロウが大暴れして破きっからかしたチラシと、弓月さんがノラロウのトイレのトイレ砂の代わりに使う、新聞紙を細く切った切りくずを、拾って片付け始めた。


もちろん、サークル室を綺麗に保つのも、サークル長としての僕の役目だからだ。


「はーーキレイになったなあ」


僕は、汗を拭きながら、セルフ掃除によって美しくなった、僕の城を見渡した。(胸に響くは一国一城という言葉)


そんなこんなで次回、なぜ神田川先輩がサークル長を降りたのか、なぜ弓月さんが悲しげな顔をしたのか、そこんところの説明をしていきたいと思う。






読書サークル研究会の面々


長谷部はせべ 優生ゆうせい ★ 大学2年生。読サーのマドンナ弓月さんが好き。


弓月ゆづき 花音かのん ★ 大学2年生。新聞紙に絶大なる信頼を置く。


神田川かんだがわ 素意成そいや ★ 大学4年生。読サーの長。スポーツ万能、筋肉バキバキ。


はやし 先輩 ★ 大学3年生。サークル室のすみっこが好きで、すみっこパイセンと呼ばれている。


ノラロウ ★ サークル室に無断で入ってくる野良猫。♂。弓月チャンLOVE。好物は学食の唐揚げ。

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[一言] 長谷部くんの恋は1ミリ程度進展しているようで安心しました。 青春は待ってくれねーぜ、長谷部!
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