無数の可能性
「切り替えたのなら、恐竜以外に誰を選んだんだ? 暗野じゃないのか?」
暗野も恐竜と同じで一人で行動をしている。それに現実で会った時から警戒しておくべきだと思っていたはず。
「……じゃないんだよ。私が選んだのは翁。先に死ぬと思ったわけじゃなくて、魔法少女……ミミとどちらか悩んだけど、何か危なかしくて」
「いや……メイデンの勘に任せるとも言ったからな。あの年齢で……という違和感があるのは確かだ」
それは隠見も思っていた事だ。【ボーダーライン】に参加してまでも叶えたい願いがあるのか。
「翁は刑事さんと一緒に行動してたし、【チャット】でのVIPのコメントを見ても、怪しい感じはなかったかな。それも視聴者が一桁だから何とも言えないけどさ。恐竜は三桁もいたし」
【GUEST】は視聴中のプレイヤーの【チャット】にコメントや【スパチャ】を投げる事も可能であり、メイデンはそれを覗く事が出来る。
VIPがどれだけの数なのか分からないが、俺も視聴者の数は百以上は行っていた。翁の視聴者は少ないとも感じるが、団体行動をしていれば、誰かに偏る事もあるだろう。
暗野や恐竜は逆に視聴者は多数いるだろう。俺や隠見は体験版の時から注目されていた部分もある。
「含みのある言い方だな。恐竜側のコメントに何かあったのか?」
「まぁ……恐竜が怪しいんじゃなくて、窓を割った理由がコメントに書き込まれてたわけ。それも結構な数だから、本当か嘘なのか分からないけどさ」
「恐竜の行動には意味があった……サブ【MISSION】の一貫か?」
「違うわね。恐竜のサブ【MISSION】は【学校のMAP、内部を全て表示させろ】だから」
【MAP】の内部というのは、『捧げ物』の必要な場所の中に入るのは当然として、体育館も含まれると相当厄介なサブ【MISSION】になるだろう。
「それは今更だが、協力を求めた方が良かったんじゃないか?」
「実はそうでもないみたいなの。恐竜の【チャット】欄のVIP達のコメントには、『誰に攻撃された?』『あれは罠を踏んだわけじゃない『『殺人鬼いない間に戦闘勃発!?』とか、何者かに攻撃されたみたいだから。窓を割ったのも、相手に虚勢をはっただけ」
恐竜が何者かに攻撃されていた? メイデンはその時の映像を見てないらしいが、翁の方を見ていたのなら、隠見達五人ではない事になるのか?
ラビと名無しはどうだ? トイレで別行動した時は確かにあった。名無しは廊下に残り、その直後に恐竜の姿を二階で目撃したわけだが……
暗野……記者はどうだ? 電話で反対側の校舎、図書室にいると言葉にしていた。あれは嘘だったのか?
「いや……多数あったとしても、VIPの虚偽かもしれない。最初の恐竜の発言から仲間割れ、敵対心を植え付けるのは簡単そうだからな。どうやって、恐竜を攻撃したのかも分からない。メイデンは恐竜が腕を見つけたのを視聴してたか?」
「えっと……持ってなかったかも」
「可能性が全くゼロはない。俺達もずっと一緒に行動せず、何処かで別行動する時はあった。隠見達もそうかもしれない。恐竜は罠を踏んだかもしれない。VIP達の言葉も憶測に過ぎない」
ラビや名無しも短時間で攻撃出来る方法なんてない……と言えば嘘になる。あそこは現実ではなく、ゲームの世界だ。
「襲った可能性があるのは別にいるかもしれない。殺人鬼ではなく……NPCだ」
殺人鬼の登場は明日。VIPの言葉ではないのだから、これは本当だろう。プレイヤーであれば、会議室に集合しなければならない。他は……そこで河相久内が頭に浮かんだ。
彼はプレイヤーでもなければ、殺人鬼でもない。河相久内は体験版だとしても、【ボーダーライン】の世界にいた。なら、【夜見与那】、【鏡二人】の両方がいてもおかしくないんじゃないか?




