暗野丈
「何でそれをアンタが知ってるわけ!?」
「俺も一応はホラー雑誌の記者なんでね。色々と調べてるわけ。こんなゲームに参加する探偵と刑事は知る限りでは、アンタ達と思ったんだ。チビちゃんは……【譲渡】した側か? 二人が同時に参加してるわけだからな」
暗野は【ボーダーライン】の事を確実に知っている。【譲渡】という言葉もそうだが、探偵と刑事が参加している事を知っているのだから。
「VIP……作った側でもないな。アレを見ているのなら、聞く必要はないはずだ。お前も参加者になったのか?」
俺と隠見は【ボーダーライン】で素顔を晒した。VIPなら動画を見ているのだから、そんな質問をする必要はない。別のプレイヤー、VIPから話を聞くにしても、暗野はそいつにしつこく付きまとうはず。
「やっぱり、探偵をしているだけに頭の回転が早いね。正解だ。探偵や刑事というプレイヤーが登場した事は、今日の体験版のVIP達のコメントで流れてね。視聴数は減っていたよ。まぁ……その気持ちは分かるなぁ」
暗野は簡単に自身が【ボーダーライン】のプレイヤーである事を認めた。
「何が目的だ」
その目的も限られている。【ボーダーライン】開催は急遽明日に開催される事になった。ここでする事は協力関係を結ぶ、もしくは宣戦布告。だが、これは殺し合いが目的としたゲームではない。クリア達成者は一人だが、最後まで生き残る事も出来るのだから。
「勿論、協力関係を結ぶためしかないでしょ。俺は前回の参加者から色々と情報を手にした状態。探偵さんにはメリットがあるさ」
「探屋にメリットはあるかもだけど、アンタには何があるのよ。自分の命を守れってわけ?」
メイデンの突っ込みの通り、暗野にメリットがあるとすれば、命を守ってもらうぐらいだ。探偵や警察であれば、普通の人間よりかは対処の仕方がましかもしれない。
「勿論、それもある。俺としてはクリア達成者じゃなくても、生き残れれば十分だからな。【ボーダーライン】自体の謎を解き明かしたいんだよ。これは面白いネタだから。怪奇現象が増加も……」
昨今の怪奇現象も【ボーダーライン】が関係していると、暗野も踏んでいるみたいだ。これを利用して、怪奇現象を作り出そうとしているのか?
「まぁ……情報を一つ提供しておくわ。アンタ達も最初は余裕がないだろうし、協力関係になる時は現実側で連絡してくれよ」
一方的に話すだけでなく、住所が書いたメモの切れ端を握らせてくる。普通は住所よりも、連絡がつきやすい番号を教えるものだが。
それと【ボーダーライン】で最初から親しくするのを暗野は敬遠しているのか? 協力関係はVIPや他のプレイヤーに知られたくないのかもしれない。VIP達の反応次第でスパチャは貰えず、Gが貰えないのは厳しい事を分かってるのだろうか。
「殺人鬼以外に、プレイヤーの方にも気をつけな。プレイヤー側にも殺人鬼がいるらしいぞ。これを信じるか、信じないかは起こってみたいと分からんがな」
「おい!! それはお前自身が……」
暗野は下卑た笑いをしながら、その場を立ち去っていく。それは奴自身が殺人鬼のプレイヤーであり、体験版で俺を殺したのは奴……と思わせる。
「……暗野が本当にプレイヤーなら、アイツを監視した方がいいわけ?」
メイデンは【GUEST】として、二人のプレイヤーの行動を見る事が出来る。その一人を暗野にするかどうか……
「いや……そこはメイデンの勘に任せる。プレイヤーは仮面を被ってる可能性が高いからな。一目で分かるとも思えない。それに暗野のいう殺人鬼も気になる。自身でなければ……」
それに河相以蔵だ。以蔵の部屋にあった『Welcome to Borderline』は、【ボーダーライン】の何処で彼が現れる気がしてならない。それがどんな形であるかは分からないが……
「私の勘ね……暗野もそうだけど、私なりに色々と調べてみるわ。今回は【GUEST】は『殺されない』とあるんだから、大丈夫でしょ。明日の【ボーダーライン】が終わった頃に、メッセージでもいれるわ」
メイデンは暗野に対抗する感じなのか、【ボーダーライン】の事を現実側から調べると、姿を消した。
俺は……今日の出来事を振り返りながら事務所に戻り、明日のための準備をする事で時間は過ぎ……
そして、【ボーダーライン】開始日となった。




