G
「少し離れてるけど……少女の絵? メイデンの自画像?」
「何で私の肖像画を誰かにあげるのよ。女の子の絵は合ってるけど、これは【我が娘】という作品。その題名を知ってる人は私と、買い取ってくれた人ぐらいなんだけど」
不気味な扉の絵と、【我が娘】という少女の絵では間違えるはずもない。
「少女の絵が別の場所に飾られてる……ところは私が見た限りではありませんでしたよ。主に家族の写真以外は、風景画や意味の分からない絵ばかりだったから」
隠見の言葉が正しければ、不気味な扉の絵があってもおかしくない事になる。
「その絵が本当にあったのなら、犯人が持ち出した? 監視カメラの映像は河相宗が途中で止めたから……じゃなくて、いきなり切れたから。河相夫婦を殺した後からでも取り替える事は出来るわけで」
絵を奪う事が河相夫婦殺害の動機であれば、【ボーダーライン】は無関係になる。だが、絵を入れ替える意味があるのか?
河相邸にある絵と不気味な扉の絵を似た感じにする事で違和感を無くした? これが犯人の仕業であるなら、ネットやSNSで流された動画の意味が分からなくなる。
その映像は河相宗が死んだ事によって、化物に変化したと噂を広げるものだとして、【我が娘】の絵があった事を証明してしまっている。
犯人と動画を送ったのは別人? それとも俺達が想像もつかない理由があるのか?
「監視カメラの映像の記録は全て回収されたから、後で調べてみます。【我が娘】が本当にあったのか」
「それなら最初からあったかも分かるわね。なら、【ボーダーライン】の方はどうなの? ここは通ったんだよね」
「確かに通りはしたが……覚えてないな。河相久内の死体と血文字が印象に残ってるからな」
部屋の絵画は気にしていたが、廊下に関してはあまり気にしていなかった。監視カメラの人物画であったのだから、少女の絵があったとしてもおかしくはない。
「この先の曲がり角だ。そこから河相久内の死体が見えて」
俺は隠見よりも先に進み、廊下に変化があるのかを確かめる。河相久内がそこにいないのは当然なのだが、血の海と化している事は……無かった。
「現実だと河相夫婦は両方とも自室で殺されてました。何かを書き残してる事もなかったと思いますよ」
「……が、【ボーダーライン】の影響はあったかもしれないな。これが本当に書かれていたかは判断しようがないがな」
銃痕が残っていた。そこはまだ確認していないが、床に黒ずんだ文字が一字だけ書かれていた。これは血なのか…
「『G』? 鑑識達が調べてる時にはそんな文字は……連絡した時も報告は何もありませんでしたよ」
これを鑑識が見逃すわけがない。鑑識の一人がVIPだとしても、その他大勢の警察が目にするはず。
「Gで考えられるのは……GHOST、幽霊のG? それともGIRL? 【我が娘】を少女と勘違いしたとか?」
幽霊? 河相久内が河相宗を示すならM、MONSTERとしそうだが。【我が娘】を示すGも無理がある。それはメイデンの願いに過ぎない気がする。
「GUN、銃の事を示してるかもしれない。だが、イニシャルが妥当なんじゃないか?」
犯人の名前。これが河相久内が書いた物であれば、【ボーダーライン】で殺された相手なのか、それとも現実の方なのか。
「一応、この事も一課に報告しておきますね。この文字が血なのか、血だとしても河相夫婦のものなのか」
今回、隠見は門前にいる警察に頼まず、少し離れて連絡した。
「G……G……あれは関係ないでしょ」
「あれとは?」
メイデンはGが気になるのか、悩み続けて、ある言葉を思い出したみたいだ。
「GUEST」
「客? 河相邸を訪ねてきた奴がいるという事か?」
「違うわよ。【ボーダーライン】を探屋に【譲渡】した後、【GUEST】になる事も可能って来たから。これは何時までとかもなかったから無視してたんだけど」




