メイデン
「真実さん、彼女とは知り合いなんですか?」
「真実さん? ……何で、まこっちゃんの名前を馴れ馴れしく呼んでるわけ?」
メイデンは隠見が俺を名前で呼ぶ事が気に入らないらしいが、メイデン自体、俺の事を『まこっちゃん』なんて呼んだ事は一度もなく、探屋と呼んでいるんだが……
「嘘をつくな。お前は俺の事を『探屋』と呼んでるだろ。彼女の事はメイデンと呼んでいる。怪奇事件を持ち込む常連客だな」
「好き好んで、依頼してるわけじゃないから。それにきちんと報酬を払ってるんだから文句は言わないでよね。それを払わない警察とは違うんだから」
何故か、メイデンは隠見に対抗心を持っているようだ。確かにメイデンは報酬を払っているが、隠見……警察の場合は違うところで許されている事があるからな。
「市民が警察に協力するにお金を支払うの? お金じゃなく、別の意味で協力してるところもあるからね」
隠見はメイデンに軽く注意するが、メイデンは納得したような感じではない。あまり警察が好きじゃない……警察が好きな奴なんて少ないかもしれないが。
「ふん!! そんな事より、私の依頼はどうしたのよ。解決するまで連絡するつもりはなかったのに。私以外から依頼を引き受けたわけ? しかも、無償の警察から!!」
メイデンは俺に詰め寄りながら、隠見の方へ指差した。
先に依頼をしてきたのは隠見の方で、メイデンの場合は報酬はあるものの、有無を言わさずに決定するから……と反論するのも時間が勿体ない。
「残念ながら、その依頼関連でここに来たんだよ。隠見とメイデンの依頼はある意味で同じで、彼女は【ボーダーライン】の参加者でもあるからな」
「……はっ? 彼女が参加者で……この家には私の依頼関連で……どういう事よ」
「もしかして……彼女が真実さんに【譲渡】した人なんですね。私はこの家にいた河相宗から【ボーダーライン】の参加するのを選ばれたから。それも彼が【ボーダーライン】での死に、現実で死んでからの……」
隠見もメイデンが【ボーダーライン】の事を知ってるいると思い、現在の状況を説明し始めた。それも警察以外の人間に話していいものではない。
「私達は河相夫婦殺害も【ボーダーライン】に関係すると思っていて、体験版にも河相久内が登場して……そこで起きた事が現実に起こる怪奇現象が起きてるかもって」
「おい!! そんなところまで話してもいいのか? こんな態度を取る奴だぞ」
メイデンは子供の姿をしているが、実際は大人並みに頭が回る。今回の河相邸突貫は別として、警備していた警察がしたみたいな扱いをしてもおかしくないのだが。
「真実さんが心を許してる感じもあるし、怪奇案件を依頼する子なんだから、私達の話を信じる前提で付き合っていくべきなのかなって」
「……はぁ……私一人が馬鹿みたいじゃない。いいわ。色々と説明するわよ。どうせ、探屋と出会った以上は巻き込まれるんだから」
メイデンは溜め息を吐いた後、俺達に対する態度を変えた。隠見の雰囲気にはそんな力がある。
「私がここに来たのは、アイツ等に言ったように絵を取り返すためね。売り物を盗まれて、本当は別の人に渡るはずだったんだけど」
彼女はそんな事をしていたから、お金があるのか。下手すれば、曰く付きの美術品を集めるのに向いてるかもしれない。
「言っておくけど、曰く付きな商品だと思わないでよ。全うな物で、ここで起きた殺人事件とは全く関係ないんだから」
「俺の心を読むなよ。今回に関しては、そこを疑うつもりはないぞ」
俺が心で思った事をメイデンは突っ込んで来たが、自身も少しは気にしているみたいだ。




