表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ボーダーライン ~人為と怪異の狭間~  作者: 迷探偵
第一章 開始前
4/98

透明人間の殺人

【透明人間】。これも全国で起きている事件。最初は事件というよりも事故と思われていた。被害者に共通するのは誰かに追われている。その姿を見る目撃証言は多数あるのだが、追う側を誰も目に見ていない。そして、最後には交通事故、転落死等で命を落としてしまう。


 それが事件と取り扱われるようになったのは、唯一の事故ではなく、殺人。犯人の目撃者は皆無なのだが、被害者は刺殺されたのだ。


 それも被害者は多くの人混みの中に逃げ込んでもなお、殺された。透明人間という可能性はあるが、普通は人混みの中に犯人がいたと考えるだろう。追っているのと、殺害するのは別人。となれば、人為的ではないか?と疑ってしまうのが人間だ。


「目撃者は監視カメラって事になるが、今回の【透明人間】には共犯者説はない。だからといって、似た事件なのは確かだよな」


「零課に回ってきたのも、【透明人間】との関係性を調べるというのもあるんですけどね」


 隠見が車を止めた。そこは高級住宅街の中で、俺の住んでいる倉庫とは天と地程の差がある。しかも、目の前にある建物は豪邸と言っても差し支えない。


「ここですね。河相宗の家族構成は両親、兄との四人家族。父親は貿易会社の社長、母親は秘書を勤めてます。兄は有名なTK大を現役で合格した秀才。次期社長や学生で会社を設立するのでは?とも周囲に言われてます。逆に河相宗は受験競争に負け続けて……」


「ああ……何となく想像がついた。優秀な兄に、出来損ないの弟か」


 河相宗の両親が協力的なのも、以前から河相宗に興味を失っているから。弟の死が、優秀な兄の足を引っ張る方が駄目なのかもしれない。


「すみません。警察の者なのですが、事前に連絡したように宗さんの部屋を確認させてもらいにきました」


 隠見はインターホンを鳴らすと、すぐに女性の返答があった。河相宗の母親だろう。


「それは構いませんが、条件を忘れないでください。私達、特に以蔵(いぞう)には事情聴取はしない事。宗は意味の分からない事を言ってたみたいですが、私達は全くの無関係です」


 意味の分からない事というのは【ゲームが人を殺す】という言葉だろう。その台詞とは無関係に、母親が息子の死を悲しんでいない事は声の高低、口調から感じ取れる。


「分かっています。以蔵君には迷惑をおかけしません」


「……ドアを開けます。私がそちらに行きますので、少々をお待ちを」


 豪邸の門が自動で開くと、母親がこちらに向かって歩いてきた。門から豪邸まで一本道、距離もそこまでないのだが。


「お待たせしました。こちらです」


 母親が向かったのは豪邸ではなく、庭の方へ。その先には倉庫のような建物があるだけ。それが河相宗の部屋であるなら、彼だけが家族と切り離された生活をしていたのかもしれない。


「私達は宗が単なる事故死で問題ありません。何度も警察が来る方が、以蔵の将来に影響が出る方が問題です。違う形でいなくなれば良かったのに」


 母親が協力的なのは、警察に何度も訪問されて、以蔵の将来を壊されるのが嫌だから。弟である宗は不要の存在だとみとめているが、事故とは無関係だろう。現時点で迷惑を被っているのだから。


「どうぞ。鍵は警察の方が持っているのですよね? 宗の部屋の物は勝手に持ち出して構いません。帰宅する際は、部屋にある内線を掛けてください。私達の邸内には入らずにお願いします」


 母親はそう言い残して、豪邸の方へ戻っていく。


「部屋の鍵は隠見が持っているのか?」


「はい。死体のポケットに入っていました。まさか、自身の部屋の鍵だとは思いませんでしたけど……何だか可哀想ですね」


「他人の家庭事情なんて様々だが、こんな状況なら寮生活、一人暮らしをすれば良かったのに。出来ない理由でもあったのか……と言っても今更だな」


「私達が河相宗に出来るのは、彼の死の真相究明。では、ドアを開けますよ」


 倉庫のような建物。窓は見当たらず、出入口はドア一つだけ。隠見はそのドアの鍵を開けた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] TK大…… どこの東京工業大学なんだ……
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ