善か悪か
「それで間違いなかったと思う。俺の場合は探偵という嘘くさい職業かもしれないが、警察はそうあった方がいい。ただ……可愛いというのは」
「そのツッコミは駄目ですよ!! 見た目は悪くないと思っているんですから」
隠見自身が言うのはどうかと思うが、可愛いというよりも美人の部類に入るとは思う。それを本人に言った試しはないが。
「そこは置いといてですね!! VIP達を擁護するわけじゃないけど……助けて貰ったと言うべきか。崖の方に誘導したのは、私に似た声の奴だったから」
VIP達全員が同じ考えを持っているわけではない。隠見を助けようとするVIPがいてもおかしくはない。スパチャを投げるというのは、そういう意味もあるはず。だが、問題はそこじゃない。
「同じ声が、隠見を崖に落とそうとしたのか? ……【MISSION】は一体何だったんだ?」
「近道? 逃げるなら……と言ってました。スマホの機能とかも教えて貰って……【MISSION】は山からの下山でしたね。けど、私としては嫌な感じがして…」
これは受け取り方が難しい。その声が『近道、逃げるなら……』は、あの白髪鬼相手にまともな逃げ方では無理だと判断したのなら納得出来ない事もない。が、殺そうとしたとも考えられないわけでもないのだ。勿論、理由はあるなしは別としてだ。
「俺の場合、【ボーダーライン】の説明をした後、声が聴こえなくなったんだが……隠見の時は違ったわけだな」
あの声は聴こえなくなっただけで、本当に消えたのかは分からないが、隠見に関しては長い時間一緒にいた事になる。山の中では自動販売機の説明や、不足部分があるのは否めない。それを帳消しにするため……とはいえ、隠見はあまり良くは思ってないようだが……
「そうですね。死ぬ直前まで声が聴こえていて、本番でも一緒にいるんじゃないか? と思うぐらいに」
それは隠見自身と分身が入れ替わるつもりなのか? これはゲームの中での事だが、【ボーダーライン】ではないとは言い切れない気がする。今回、隠見が死んでも変化した様子はない。これは俺の単なる想像に過ぎない。
「その時は俺に話してくれ。本番の開始時、プレイヤー達は同じ時間に参加しないと駄目だからな」
「わ、分かりました」
「よし。隠見もそろそろ落ち着いてきたみたいだし、次は俺が【ボーダーライン】にログインする。そこまでのんびりする暇もないからな」
「真実さんがログインした際、周囲に変化が起きるのかを確認するんですよね? それとプレイ画面やVIP達のコメントも」
隠見は破れた服の部分をおさえる。隠見に関しては、そこだけがゲームから現実に反映された事だからだ。
「映像ではVIP達のコメントは確認出来なかった。そこは本人しか見る事は無理みたいだが、その方法を探しても構わない。それと……埠頭を調べるのは、場所がそうだった場合だ。同じ場所とは限らない気がする」
体験版とはいえ、俺と隠見がプレイする場所は違っていた。本番とは別として、VIP達が同じ場所を繰り返し見るのを楽しむかも疑問だ。
「了解です。さっきは役に立てなかったから、今回は何か見つけてみせますから」
「ああ。ほんの些細な事でも構わないから、終わったら教えてくれ」
俺はVRコードを体、PCに繋ぎ、スマホも忘れずに用意した。今回は【MISSION】 クリアを目的にするが、スマホで写真を取り、現実に見る事が出来るかを確かめるとしよう。




