山中
「これは……本当に隠見なのか?」
顔のアップから順番に、全身が構成されていく。アバターを作る際に必要な過程であるなら仕方がないが、【ボーダーライン】は本人そのままの姿。作り替える必要はない。それに……若干の違和感がある。何かは分からないが、コイツは俺に似た声を出した奴と同類なのでは? と思ってしまった。
「画面が切り替わった……ここは?」
十五分後。隠見の選択が終わったらしく、【ボーダーライン】の世界に入った。PC越しに見る映像はゲーム、CGではなく、ドラマのようなリアル差がある。そして、開始された場所は、俺とは別の場所、山の中みたいだ。
「プレイヤーによって場所は変化するのか。隠見にとって、そうイメージするものがあったわけか?」
俺の場合は事務所がある埠頭であり、その場所が弄くられた形だった。流石に隠見が住んでる場所が反映されたわけじゃなく、何かしらの記憶にあるのか? それともこの山は【ボーダーライン】が用意したステージなのか。
「同じ埠頭なら、変化した場所を見に行けると思ったんだが。この山が何処かなんて……隠見なら分かるのか」
こうなった以上、俺がプレイしている時に、隠見に確認して貰うしかない。
「視点は隠見の目になってる……それも当然か」
隠見自身の姿を確認するにしても、鏡でもあれば別だが、山の中だとそうそう見えるものではない。声が聞こえないのは、前にアイツが言ってた通りだ。勿論、俺の声が隠見に届かないのも同じ。
「この映像をVIP達が見てる……いや、別の映像があるか」
この視点はプレイヤーと一緒で共感出来るかもしれないが、罠に陥れる等は難しい。VIP達は上空の視点、神視点、カメラ視点のように何処からでも見えるようになっていると考えるべき。
「チャット欄も無ければ、キーボードも何も反応なし。VIPになる方法はなんだ?」
【ボーダーライン】のスマホで見れた【チャット】をPC画面に表示する事は出来ず、文字の入力も出来ない。本当にVIPは特別な方法でしか入れないのか?
【MISSION】が下山なのか、隠見は下の方へ移動していく。山中という事から自動販売機は存在せず、チュートリアルがちゃんと出来ているのか不安になる。
隠見の歩みはゆっくりだったが、徐々にスピードが上がっていくのが分かった。俺の場合は最初から【送り犬】がいて、そこから多数の犬が登場した。アレも何かきっかけがあったと思うのだか……
「まだ何も見えないか。何か音が響いてきているのか?」
隠見は度々後ろを振り向くが、何も見えない。赤黒の空が木々の暗さを余計に怖くさせる。こちらは映像だけだが、実際体験するとなれば、それ以上かもしれない。
「それとも、VIP達が何か言ってるのか?」
隠見はスマホも何度も覗くが、【チャット】の文字がボヤけた感じになっていて、見る事が出来ない。事実か嘘なのかは別として、何かが接近していると言葉にしている可能性はある。
「武器は……何も拾えてない」
木々、茂みの中から武器を探すのは難しい。【回復薬】や【麻酔薬】があったとしても、どんな物か分からないはず。
更にVIPの指示かは分からないが、隠見は真っ直ぐ進んでいたのを、右方向に方向転換。そして、先には崖が……隠見は何とか踏み止まったが、崖があるのを知って、わざとその道を教えた可能性が高い。




