隠見、体験版をする
「これは河相以蔵が【ボーダーライン】に何かしら関わりがあると思った方がいい。【神隠し】なのかもしれないし、VIPの可能性だってある。奴は俺と隠見が一緒に行動するところを見てたわけだからな」
あの扉が本当に使えるのなら、河相以蔵が中に入った可能性。それが【神隠し】の原因とも考えられる。VIPであるなら、あの文章が俺や隠見に向けての挑発とも取れる。
「あの時ですね。【ボーダーライン】に一度ログインすれば、私にも見えるようになるかを確認しないと……監視カメラよりも先に、ログインした方がいいかもですね」
体験版は最長で三時間。一度死んでしまえばログアウトになってしまう。それを先に確認するのも悪くない。下手に監視カメラを調べるのに時間を取って、体験版を出来ないのは洒落にならないからだ。
「なら、俺のPCを使えばいい」
「えっ!? 一緒に体験版をしないんですか? 折角のハンデを使わないとか」
事務所にはパソコンは二台ある。勿論、両方ともVRコードをセット出来るやつだ。もう一つのPCを隠見に使わせればいいのだが。
「本番じゃないんだ。体験版で一緒に行動するのは、長くプレイ出来るかぐらいだな。そのハンデがVIPが仕込んだとして、その通りに動くのも尺だ」
隠見には10000Gが最初からあるとはいえ、品評会であれば、一人で行動した方がスパチャを貰える可能性は高い気がする。二人で行動すると、視聴するVIPは増えるかもしれないが、分散する気がする。
「二人でした方が、あっちの都合が良いとも取れる。隠見が一人で体験版をしてる間、色々と調べてみたい。勿論、逆もしかり。俺がプレイしている間に、隠見にして欲しい事もある」
【ボーダーライン】をしている間、その映像をPCで見る事は可能なのか。それによって、VIP達はそれを見ている事になる。スパチャもそうだが、チャットにコメントを打つ事も可能なのか。
「そこまで言うのなら仕方ないですね。PCをお借りしますよ。……動けないからって、邪な事はしないでくださいよ」
VRゲームは意識をゲームの方へ移動させるのだから、現実側では無防備の状態になってしまう。この時に殺された場合、意識はゲームの中に取り残されるだろうか……勿論、試すつもりはない。
「そんな事するか!! お前は体験版の中で出来るだけ生き延びる事を考えておけよ」
「冗談ですよ。緊張を解すためですからね。真実さんから注意点はありますか?」
「VIP達のコメントをどう受け取るかだ。奴等の機嫌次第でスパチャ、Gを貰える事が出来るからな」
「了解です。私の行動で何か掴んでくださいね」
隠見はPC、自身の体にVRコードを繋げた。すると、操り人形の糸が切れたように、スッと意識を失い、椅子にもたれ掛かった状態だ。
「これは……河相以蔵の部屋の風景と同じだ」
【ボーダーライン】の最初の場面が、河相以蔵の部屋と同じW elcome to Borderlineと表示され、その下には扉が描かれている。その扉が開かれたのは、隠見がその世界に入った事を意味するのだろう。
一番最初にするのはアバター決め。といっても、ほぼ変更出来ないのは知ってる。どう呼ばれるか? 仮面を付けるかどうか?
「隠見も同じ声の奴と話す事になるのか……うおっ!!」
PC画面に映ったのは、真っ暗な映像の中に人の顔の輪郭が。それは隠見の顔だった。




