河相夫婦
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ジリリリ……ジリリリ……
スマホの着信音を昔ながらの黒電話がならす音をしており、それが目覚まし時計代わりになった状態で目を覚ました。
「なんだ……もう昼過ぎなのか? こんな時に掛けてくるのは隠見だな。誰が【ボーダーライン】に参加するのか決まったわけか」
早朝まで埠頭を探索したせいで寝不足気味だ。その収穫は全くなかった。時間帯により変化があると思ったのだが、あの世界、赤い空には時間は関係ないのだろうか?
スマホを確認すると、予想通り、隠見の名前が表示されている。
「……ん? 隠見が選ばれたのなら、直接事務所に来るはずだよな」
河相宗の家を訪ねた時もそうだが、電話するよりも事務所に来て、直接話すのが隠見だ。そうしないのは何か問題が発生した? 上司の命令を無視して、【ボーダーライン】に参加を決めた? もしくは、隠見のスマホを持った誰かが
着信は切れる事はなく、俺は隠見の電話に出る事にした。
「何ですぐに出てくれないんですか!! こっちは色々あって大変なんですよ。良い情報と悪い情報があるんですけど、どっちから聞きますか?」
電話に出た途端に怒られてしまったが、いつもの隠見と変わりはなさそうだ。だが、電話の向こう側が騒がしいのは警察の中で何か起きた……新しい事件が発生したのか?
明らかに俺へ伝える情報の重要度は悪い方が高いと想像出来る。それが隠見が事務所に来る事が出来ない原因の一つかもしれない。
「良い情報なんて、お前が【ボーダーライン】に入る事が決まった事ぐらいだろ」
「……そうなんですけど、そこは私に言わせてくださいよ。それと素直に喜んで貰えたら」
体験版でさえ危険だと判断出来たのに、それに隠見を参加させるのは、今更ながらに申し訳ない気持ちになっている。捜査零課の上司も俺に協力させるとすれば、隠見に白羽の矢を立てるだろう。
「あれを一度経験したら、素直には喜べないが……それよりも俺に伝えたい本命の悪い情報は何だ? 【ボーダーライン】関連か? 今、隠見は何処かの現場にいるんだろ?」
「【ボーダーライン】関連があるかはまだ不明ですけど、私がいるのは昨日訪れた河相邸です。……河相夫婦が亡くなりました」
あの母親が亡くなった? 息子が死んだからといって、自殺するような奴じゃなかった。しかも、現場が河相邸になると事故とも考えにくい。
「殺しか? 母親からしてあの態度だ。父親の方も恨みを買って……という事だろ」
父親の方は貿易会社の社長と言っていた。人間関係によっては殺意を持つ人間も出てくる。
「一課もそう思ってるみたいで、河相宗の事故も殺人として方向転換するらしいんですけど、あのゲームは全くの無関係って」
河相宗の後にその両親が殺されたんだ。連続殺人と思うのも仕方がない……が、体験した者として言えば、【ボーダーライン】が無関係とは思えない。
「だからこそ、私の【ボーダーライン】の参加を了承してもらったんですよ」
河相宗が別の理由で死んだのなら、【ボーダーライン】は怪奇事件を調べる捜査零課が引き続けるのも道理だ。
「それが妥当だろう……ん? 河相邸には無数の監視カメラがあっただろ? あれに犯人は映ってないのか」
「監視カメラ家の中にもありましたよ。こんな場所に!! と思うのもあって……けど、犯人は映ってないんですよ。どの監視カメラにも」
それは監視カメラが何処にあるのかを把握していたからか? 河相夫婦の知り合い、何度も河相邸を訪れた人物。
「もしかしたら……『アレ』が関係してるのかなって。河相宗の願い……」
河相宗の【ボーダーライン】に願った事は『家族間の修復』、『兄弟の立場逆転』。クリアしていないのだから叶うはずはない。もう一つあったか……『両親の……』と言葉を濁していた部分は殺害と隠見は言いたいのか?




