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ボーダーライン ~人為と怪異の狭間~  作者: 迷探偵
第一章 開始前
15/98

瞬殺

「何かの合図か? 意味がない……とは考えられない」


 俺の後ろをついて来る犬に合図を送っている可能性はある。人間の俺がそれを解読出来るわけもなく、両方に警戒しなければならない。


「犬使いの殺人鬼が潜んでる可能性もあるのか」


 犬だけに気を寄せていると、殺人鬼に無警戒になりかねない。


「いや……今は体験版なんだ。失敗は何度も出来るはず」


 俺は【ボーダーライン】の洗礼を浴びるため、コンテナがの無造作に並ぶ場所へ向かった。


「木材に……鉄パイプ。チョコレートもあるのか」


 コンテナのいくつかは開いた状態で、中には武器や道具が置かれていた。その中で【鉄パイプ】を入手。スマホには入らず、直接手に持った形だ。【チョコレート】は自動的にスマホの中へ。食べる時に出す形だ。


「殺人鬼が隠れている様子はない……が、遠吠えの数は増えているのか?」


 俺がコンテナの中に入る……というより、足を止めるたびに遠吠えの数が増えている気がする。それも一匹が何度も吠えてるのではない。遠吠えの仕方、声が違う。


視聴中 300


            :

V6 そろそろ来るぞ

V236 ネタバレは禁止

V80 今の時点で詰んでるから

V589 ここからの攻略は神

V74 いやいや……体験版を上手く使うつもりだな

V112 評価ポイントはそれぞれ違う

            :


【チャット】によるVIP達のコメントが流れていく。VIP達は埠頭で起きる事を、別のプレイヤーで把握しているかもしれない。これを嘘と取るべきか、事実だと受け取るべきか。


「唸り声!? このコメントは間違ってなかったという事か」


 コンテナの上から唸り声が響いてきた。俺が外に出た時にでも不意打ちをするつもりなのか。俺についてくる犬は見える所に待機し、観察している。それも俺の隙を作るためなのか……


「唸り声、コメントを照らし合わせれば予測出来る」


 俺はコンテナの上から襲い掛かってくると判断する。攻撃に反応するため、バックステップでコンテナから出る。俺を追いかけてくる犬は襲い掛かってこないと踏んだ。



 俺がコンテナから出てくるのと同時に犬は噛みつこうと飛び出してきたのを、鉄パイプで迎撃。横腹を殴ぐったのだが、その一撃で倒れた。


「よし!! 正解だったわけだが……普通の野良犬だよな」


 襲い掛かってきたのは何の変哲もない野良犬だ。スピードがあったわけでもなく、大きさも許容範囲だ。コメントで騒ぎが起きるような事では……


「遠吠えじゃなく、唸り声が増えた……仲間が殺られたのを知って……あの犬はこのためのスイッチか!!」


 いくつもの威圧的な雄叫びを上げながら、野良犬達が迫ってくるのが分かる。


「犬の包囲網から埠頭を脱出するという事か。殺人鬼を相手にするだけじゃないわけだ」


 俺は駆ける。犬全てを倒す程馬鹿じゃない。クリアは【埠頭の脱出】だ。あの犬は……スピードを上げて追いかけてくるが攻撃してこない。


「くそ……まるで障害物レースじゃないか」


 コンテナの中に隠れる犬、何処から飛び出してくるかも分からない。更に遮蔽物をドラム缶の階段で昇る、倉庫と倉庫の隙間を抜ける。簡単に逃げられないように仕組まれている。


 尚且つ、犬の速さは人間を越える。迎撃する分、スピードと体力を奪われる。ましな事といえば、犬の種類、体格により追いつかれる時間に差がある事だ。


「何度と噛まれたが……本当に痛みが消えるんだな」


 犬に腕と足を噛まれ、痛みが走った。それは現実で受ける痛みと同等か。それを【麻酔薬】……缶に入った飲み物を口にするだけで痛みは消えた。だが、血は止まる事はなく、感覚が少し鈍ったような気もする。


「……っと!! 大丈夫か」


 転がっていた石に引っ掛け、不細工にも転んでしまった。タイミング良く、襲い掛かる犬がいなかったのが不幸中の幸いだったのだが……いつの間にか俺は空を見ていた。


 視点は回転していき、首が取れた人の体を確認。あれは……俺の体であり、首だけが飛ばされた。【麻酔薬】で痛みを感じず、何も分からなかった。


 ただ、俺の死体の側には巨大な犬が……あの犬の姿は消えていた。

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