後ろからついてくる
「次は……そろそろ交代する頃合いか。ちょっとした怪我をしてみるつもりだったが」
この場合は自傷行為になるのか? VIP達が見る分には注目されるか、引かれるかのどちらか。それを気にしての交代……消えるわけではなさそうだが……
「ちょっと待て。自販機に売っていた【ドッグフード】は一体何なん……だ?」
【回復薬】、【麻酔薬】、【ボーガン】や【ナイフ】の意味は分かる。だが、【ドックフード】だけが異彩を放っている。使用方法なんて、犬に食べさせる事ぐらいしかないのだが……
犬がいた。俺の後ろ、数十メートルは離れている。何処に行くわけでもなく、こちらをジッと見ている。
「この犬に餌をやればいいのか? それを買うGは無くなってしまったんだが」
俺の声を発してた奴から返事はない。自分の意思で後ろを振り返った事からすると、本当に消えてしまったのか。
「可哀想だが、あの犬は放っておこう。体験版というが、他に何をすれば良いんだ?」
VIP達の評価を得て、Gを得るための体験版なのか? 【チャット】欄を確認してみる。
視聴中 250
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V25 最初は犬相手か?
V436 どんな風になるのか楽しみ
V179 動物虐待になるぞ
V551 鬼ごっこならぬ犬ごっこ?
V95 実は犬ではない説
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視聴者の数が増えている。謎の犬の登場にVIP達も盛り上がりをみせている。
「あの犬が殺人鬼とでも言いたいのか?」
俺は犬の方へ近付いてみる。体験版では死亡は反映されず、ログアウトするだけで終わる。試しに、犬の方へ近付こうとしたが、犬の方が距離をとってくる。
「犬の方が警戒して、俺に近付いてこない……奴等は間違ったコメントで俺を騙そうとしてるのか?」
あの犬は逆に殺人鬼が登場した際、助けてくれるキャラかもしれない。俺が前へ進んでいくと、犬も同様に動き出す。
「【ログアウト】するためのセーフティゾーンという場所を見つけておくべきか。体験版に何か目的は……【MISSION】 を確認してみるか」
体験版であるなら、最初から【MISSION】が用意されていてもおかしくない。周囲の確認を怠らず、【MISSION】の有無を確認する。
「あった……【埠頭からの脱出】。成功報酬に2000Gが支払える。引き継ぎは可能と……」
俺の事務所がある埠頭と同じであれば迷う事はないが、易々とクリアさせるわけがない。それにアイツは埠頭内部を弄くってあると言っていた。
すでにトラックで道を塞いでる場所が見えている。その先には無数のコンテナがランダムで置かれているが、迷路という程でもなさそうだ。他にはゴミと呼ぶべきか、それとも道具として使用出来るのか、色々な物が無造作に捨てられている。
「あの場所を通らないと埠頭から出る事は無理だな。それに……明らかに出てくる場面だ」
コンテナの物陰、トラックの中、殺人鬼が隠れる場所は十分にある。ヘルメットは不意打ちを警戒して装備しておこう。
視聴者 280
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V478 ミッション内容確認
V83 そんな装備で大丈夫か?
V223 かくれんぼタイム?
V222 止まるんじゃねぇ!!
V354 早く凄惨な場面を
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トラックを壁にしてコンテナ周辺を再度確認。セーフティゾーンは見当たらない。どんな場所かも分からないが、体験版にはない可能性もある。
「遠吠え? あの犬……じゃない」
俺の後をついてくる犬は一定の距離を保ち、ジッとしている。吠えているのは別の犬だ。犬の数が増えているのか?




