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神(自称)からの宣戦布告

「んしょっと…よし!これでバッチリ!待たせたなトウマよ!もう大丈夫だよ!」


 数分後、紙袋を被り直し、神(自称)はようやくこちらへと振り返った。


「……そうなんだ。バッチリなんだ。へー…」


「どうしたの?」


隙間からはハラハラと幾本もの髪の毛が、早くもこぼれ落ち始めていますよ神様(銀髪)。

だけど、それを突っ込むつもりはもうなかった。


「…………うん。お前がそう言うなら、もうそれでいいよ…」


 というか、突っ込みたくない。なんかもう、疲れたのだ。


「じゃあ神様。どうぞ、続きを話してください。もうなにも言いませんので」


「?トウマちゃんがそう言うならいいけど…じゃあ話すね」


 先を促す俺に、キャラ作りを忘れ、素で答える神様(自称)。

 うん、もうどうでもいい。神の正体もわかったし、さっさと言いたいことを話させて、早く寝たい。

 そんな考えが思考の大半を占めつつあった俺のことを、いったい誰が責められるというのだろうか。


「さて、私がここにきたのは言うまでもなく、その幼馴染に関することでだ。具体的に言うと、三雲冬真!君に説教しにきたんだよ!」


ビシリと俺を指差す神(自称)。

神が人を指差すな。行儀悪いぞ。


「はぁ…説教すか」


「隣の家に住む超絶ウルトラスーパー美少女……そんな子が幼馴染とか、ハッキリ言ってお前はSSR級の幸運の持ち主だ。しかもお前を好いてるというのだぞ?そのうえ向こうから告白までされるとか、もはやSSRを通り越してUR級のラッキーさだろうに、何故断る!?」


 そう言って憤慨する神様(怒り)。

 いや、例え安っぽくない?もっと上手い言い回しあったろ。

 てか自分をSSRとか、自信過剰すぎでは?まぁ合ってるんだろうけどさぁ…なんかこの世の不条理を感じるわ。


「えー…あの時も言ったけど、花梨のことは幼馴染としか思えないし…」


「何故に!?可愛いし性格いいし、おまけにトウマちゃんに常にべったりなんだよ!?普通意識するよね!?私なんて幼稚園の頃から意識しまくりだったよ!?」


 なんかいきなり衝撃のカミングアウトが始まった件について。

 神だけに神ングアウトってか。いや、笑えん。

 しかし神(自称)も神(自称)でなんかぶっちゃけてきたなおい。

 ある意味互いに本音で話し合ってると言えなくもないが、こんなシチュエーションでの本音トークとか嫌すぎるぞ…


「えー…マジで?」


「マジだよ!?ずっと好きだったんだよ!?マジで気付いてなかったの!?」


「いや、全然。いつも後ろをちょこまかついてきて、なんか犬みたいだなって……」


「犬扱い!?ペットと同じ目で私のこと見てたの!?」


「うん。そんで可愛がってたら、気付いたら保護欲にランクアップしたっていうか。恋愛感情に発展する要素が思い返せばなかったなーって…」


「――――――」


 そこまで話すと、神(自称)は絶句していた。

 なんていうか、傍目で見ても真っ白に燃え尽きているのがよくわかる。

 ちょっとつついたらサラサラと灰になって崩れ落ちそうだ。


「犬…私、ペット…銀髪…保護欲…恋愛感情……私、犬…犬レベル…ふ、ふふふ…ふふふふふ…」


「あ、あのー、かり…神様?」


呆然としながらも、ブツブツと何事かを呟き始める神(怖い)。

中身が誰かわかっていても、紙袋のせいでめちゃくちゃ異様な雰囲気を醸し出している。

見る人が見れば、呪いの現場と勘違いしてもおかしくないほど、今の神(自称)は闇のオーラを纏っていた。


「…………トウマよ。私は決めたぞ」


あまりの異様さに、なんと声をかけるべきか迷っていると、やがて神(邪神)は立ち上がった。

その背中には、決意の炎のようなものが陽炎のように揺らめいている。


「え、決めたってなにを…」


「本来はあってはならないことだが、このままではあまりにも幼馴染が不憫すぎる…というか、許せないよ!ペットとか!女の子とすら見られてなかったなんてぇっ!!!元々引き下がるつもりはなかったけど、もう決めた!絶対決めた!ずぇーっっったいくっつける!!我が神の力を持って、絶対幼馴染に惚れさせてやる!!!」


紙袋を被った神(自称)は、そんなことを一気にまくしたててきた。

相変わらず凄まじい負の念が噴出しているが、それはそれとしてなにを吹っ切ったような、ある種の清々しさを感じてしまう。


「トウマちゃんのほうから、私のことを好きって言わせてやるんだから!!!明日から覚悟してろよ、このヤロー!!!」


その迫力に気圧されていた俺にとんでもない宣言をした神(自称)は、勢いよくドアを開けるとそのまま階段を駆け下りていく。


「あ、おい。おま、紙袋被ってる状態で走ったら危な…」


「絶対私が勝っあ、うわらばばばばば!!!!」


い、言わんこっちゃない…アイツコケて滑り落ち寄った。

ゴンという鈍い音ともに着地音がするが、紙袋のせいで容態はいかんとも把握できん…あ、でも立った。とりあえず大丈夫っぽい。やっぱ頑丈だなアイツ。


「いったぁ…でも、負けるもんかぁぁぁっっっ!!!」


めちゃくちゃ元気な叫び声を残し、神(自称)は家を飛び出していく。

それはまぁいいんだけど…


「え、もしかしてまたあれくるの…?」


神の力とか言ってたし。なんか今回限りじゃないっぽいぞ。


「め、めんどくせぇ…」


思わず嘆息していると、ふと隣からまた叫び声が聞こえてくる。

言うまでもなく、それは俺の幼馴染のもので……


「お、お母さーん!?しっかりしてー!?」


「……………」


 …………あの紙袋被ったまま帰ったなら、そうなるよね。うん


「傷は浅いから、泡吹かないでよぅっ!助けてトウマちゃーん!?」


…………俺は知らん。俺はなにも聞かなかった。


「もう寝よう…」


 残念すぎる幼馴染の涙声を聞きながら、俺は制服を脱ぎ捨てると、無常すぎる現実から目をそらすべく、さっさと眠りにつくのだった。

次回から新展開となります

感想やブックマーク。↓から★★★★★の評価を入れてもらえるとやる気上がってとても嬉しかったりしまする(・ω・)ノ

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― 新着の感想 ―
[良い点] 更新お疲れ様です! [気になる点] なんか私、花梨のCVは悠木碧で、花梨ママのCVは日笠陽子で脳内再生されるんですよw 花梨ママ「冬真君、娘がアホでごめんねぇぇぇえ!orz」 実際どん…
2021/05/07 22:07 退会済み
管理
[良い点] 面白いですね。 [一言] ここで泣いていれば...
[一言] 本日の勝敗 「冬真の勝ち」 ポンコツ花梨ちゃん奮闘記(笑)はまだまだ続く 頑張れ花梨、負けるな花梨。
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