2章 秘密
俺達は外はテルの庭に出た。ホテルの遊具はブランコや滑り台、アスレチックなどだった。遊具は大きくて中学生でも満足できるほどだった。そこには一緒にバスに乗っていた人も数名混じっていた。
「うわ!すっげー!」彪流が大声で言った。
「…!」誠君も目を丸くして黙っていた。
「見てないで遊ぼ!」俺が言うと2人は頷いた。そのまま遊具で遊び始めた。滑り台も早くて長いし、ブランコも大きくて、もう最っっ高!
もう何時間くらい遊んだだろうか。空は青からオレンジ色に変わり始めた。
「ふあー…」彪流が大きなあくびをした。
「もう疲れましたね。早くホテルに戻らないと温泉に入る時間が無くなってしまいます。」「そうだな。」そう言ってホテルに戻った。昼間は気付かなかったがシャンデリアがピカピカと輝いていた。
「それでは……6時30分にロビーにて集合しましょう。」「うん!」俺はポケットからルームキーを取り出して部屋に入った。カバンから温泉セットを取り出した。
ジリリリリン!ジリリリリン!と電話が鳴った。吃驚して転びそうになった。慌てて受話器を取ると
『黒宮様、お食事の準備が整いました。6時30分から7時30分までにお越しください。』という内容だった。今の時刻は6時25分だった。
…、えーー!は、速く温泉入らないと!
廊下に出ると速くいこうと足踏みする彪流と誠君がいた。
「は、速くいこう!」「はい!」「遅いぞ、剣」「わりーわりー!」そう言った会話をしながら小走りで銭湯に向かった。
着いた…て、え!?い、入り口でか!入り口は馬鹿に大きくて、温泉はすーーごく大きいということが雰囲気からして分かる。
「ほえー…」「ちょっと!ボーっとしてないで早く入りましょう!食事に間に合わなくなってしまいます。」
「そ、そうだな。」誠君の言葉にハッとした。脱衣所は50人は裕に入れるくらいの大きさの部屋だった。ロッカーも数え切れないほどあった。がいちいち感心している暇はない。そのまま服を脱いで大浴場に入った。そこは本っっ当に広くておしゃれで綺麗で高級ホテルという事がますます伝わってくる感じだ。
湯舟につかると疲れが一瞬で取れる感覚がした。温度もちょうど良く気持ちい。思わず眠ってしまいそうだ。30分間くらいつかって湯船から上がり、脱衣所で浴衣を着た。首にバスタオルをかけて廊下に出た。
「いやー、気持ちかったなー!」「はい!会話をしたり明日の予定を立てることすら忘れてしまいました。」2人の言う通り温泉はめっちゃ気持ちかった。
「このまま夜飯食うか?」俺が聞くと2人は笑顔で頷いた。
廊下を歩いていくと昼間お世話になったガイドさんが歩いていた。その方向は食堂の方だったのでガイドさんも晩飯を食べに行くのかと思い声をかけようとした。が、言葉を飲み込んだ。ガイドさんは【立ち入り禁止!】と書いてある場所に堂々と入っていった。一瞬、スタッフルームか何かかと思ったがそうではないとすぐに分かった。スタッフルームはその部屋のすぐ右隣にあった。じゃあ、一体あの部屋は何なんだ?
「あれ?ガイドの人なんであの部屋入ったんだ?」彪流も気付いたようだ。
「確かに不自然ですね。スタッフルームではなく、看板に立ち入り禁止と書いてあるにも関わらず入るなんて。今日何度かあの部屋を見かけましたがこのホテルの店員さんもあの部屋に入るところは見ていません。」誠君が言うならそうだろう。ていうか何であの部屋は立ち入り禁止なんだ?スタッフルームでもないし倉庫や金庫にも見えない。
「酔ってるんじゃないの?ほら、ロビーにビールとか売ってただろ?」「確かにそう――…」「そんなはずありません」俺の話をさえぎって誠君が言った。
「…何故?」「あの人はしっかりとバランスを崩さずに歩いていましたし、誤って入ったというよりは、わざと入ったようにしか見えませんでした。」んー…じゃあ何であの部屋に入ったんだ?
「秘密…」彪流がぽそっと呟いた。
「秘密があるんじゃないかな!」大声で言う彪流。秘密?なんのだ?
「確かに何かありそうですね…。僕は色々な企画に参加したことがありますが、あんな人は初めてです。新しい人でもないと思います。」「どうして?」「あの人は緊張もしていませんし、喋り方もしっかりしています。」そういうもんなのかなー、と思ったが誠君が言うならそういうことにしよう。まあ俺は小5の時にこのクラブに入ったので、あまり詳しくないからだ。
「ていうか、従業員さんとかに言わなくていいの?」彪流が言った。その通りだ。これは子供だけで行動してはいけない。
「待ってください。」「…ん?どうしたの?」「僕、この部屋に興味があります。幸いにも今、周りに人はいませんので中に入ってみましょう。」え?誠君がこんな事に首を突っ込むなんて。
「なんか俺も気になるなー。見てから大人に言おう。」「ちょ、え!」彪流まで…
「行きましょう剣さん。」「ッチ!もし見つかったら責任は誠君がとれよな。」「誠でいいです。責任は取りますよ。」こうして、部屋に入ることにした。こういうやつでひどい目にあうドラマとか見たことあるから不安だな。
部屋の中は暗くて、先には下る階段につながっていた。階段は結構長くて、薄気味悪かった。
「不気味だなー。」「先を急いで足元がおろそかにならないように気を付けましょう。」こんなところがホテルにあるなんて。
「そういえば俺、もしもしのためにって母さんが懐中電灯持ってるんだった!」彪流が言った。
「では先頭をお願いします。」「…え?」そのまま彪流が先頭に立った。
「ちょ、ちょっと待って!怖いんだけど。」「?どういうことでしょうか。」「ゆ、幽霊とか出そうじゃん。」「お前、バスの中でもそんなこと言ってたよな。」「そ、それは――…うわ!」彪流は会話に集中し過ぎたのか、足を滑らせて階段から転げ落ちてしまった。そのまま床まで転がり落ちてしまった。
「大丈夫か?」「彪流さん!」俺達が上から言うと下から悲鳴が聞こえた。
「うわーーーーー!」彪流の声だ。
「どうした!?」俺達は急いで階段を駆け下りた。階段を下り終わると、彪流が目の前を指さしていた。その方を見るとそこには、…墓場があった。
「…え?」「ほら…ネットで読んだこと…本当だったんだ」彪流は震えながら言った。
「そ、そんな事ってあるんですか!?とりあえず、警察に連絡を…」誠の顔に驚いた表情が浮かんだ。「圏外です。」おかしい。なぜ高級ホテルにWI-FIが通っていないのだろうか。一旦ロビーに戻って…
『で?今状況は?』ななめ左後ろから低い男の声がした。
一瞬ビクッとしたが、左後ろには頑丈そうな鉄の扉があった。その中から声がする。
『んー、そうですねー…。まあ、上手く騙せています。』ガイドさんの声だ。
『フーン。気付かれていないよな?』また男の声だ。その会話から推測するに、2人は何か企んでいるように聞こえた。
『もちろんですとも。では引き続き、計画を進行させます。』ん?計画って…
その瞬間、扉の奥からガチャリと鍵を解除する音が聞こえた。
ヤバい!見つかったらお終いだ。そう思って全力で階段を駆け上がった。俺に付いてくるように彪流と誠も階段を上がり始めた。
階段を上り終わって、すぐ部屋から出た。俺は彪流達が部屋から出たのを確認して食堂に向かった。
後ろを振り返ると、ガイドさんがこちらを見ている気がした。しかしすぐにバスの中と同じような笑顔で銭湯側に歩き始めた。それを見て俺は怖気を感じた。
いやー、今回は長めでしたね。




