3. いざ征かん、かの地へ。
無事に逃げきった皇女殿下、身分を隠して隣国で行動しています……
皇宮の中で宰相の馬鹿息子に襲われかけ、教わったとおり思いっきり蹴り上げて、全力で逃げて、国境の橋を渡ったところで……どうやら私を探して追ってきたらしい4人組に見つかりそうになったけど。
勇猛果敢で親切なお嬢さんのエリーザさんに助けられて、今「女子寮」とかいう建物の客間で休憩させてもらってる。
「ここは今、10歳前後の見習い達や家が遠くて通えない人が住んでいます……私は女子寮の寮長エレナです」
このエレナさんという人が襟元につけている徽章に見覚えがあったので、お母様から預かった物の内2つを取り出してみた。
お祖母さまの赤いのとエレナさんの襟元のは、古さ以外同じだった。
「……それは!どなたの持ち物ですか?」
お母様が言ってらした通り、私の年齢では持てない物だという事で持ち主を訊かれ。
「赤いほうは祖母の、青いほうは母の物です」
そう言うと、エレナさんは
「……失礼します。私では対応できないお話になるかもしれませんので、上の者を呼んで参ります」
と言って、寮から大急ぎで出ていった。
何なのかしら?
すぐ戻ると言って本当にすぐ戻って来た人を、私は初めて見たかもしれない。
エレナさんが連れて来たのは、何となく見覚えがあるような雰囲気の、エレナさんと同じ位の年代の男の人。
襟の徽章は、お母様のと同じ青。
赤をつけてるエレナさんが上の人と言ったという事は、青をつける人のほうが階級が上なのね。
「お待たせしました。本当なら母がお伺いするべきなのですが、あいにく出ておりまして。館長補佐のモーガン・テイラーと申します」
「もしかして……森の中で会ったテイラーさんっておじさまのご子息でいらっしゃいます?」
私、自分が名乗るのを忘れてつい訊いてしまった。
「おじさまのご子息なんて丁寧に言われたの28年生きてきて初めてだよ……にしても、よくおわかりで。顔が完全に母似なんで、父としか会ってない人に言われた事1回もないんです」
なんだかとてもとんでもない事をサラリとおっしゃってる気がするのは気のせいでしょうか。
「髪と目の色と体つきがとてもよく似ておいでですわ……あ。私はガーネットと申します。家名は、今はご容赦くださいませ」
今は、まだ言えない……と思った。
「ところで、ひとつおうかがいしたいのですが……私は母から、この徽章と同じ紋章を看板として掲げている建物を訪ねるよう言われているのですが、ここはその建物と関係あるのでしょうか?」
そんな気がしたので、訊いておかねばと。
「この徽章を身につける事ができるのは、薬剤師の資格試験に合格した者のみ。徽章の紋章を看板として掲げているのは、薬剤師が所属する薬剤師館です。そしてここは、テイラー&テイラー薬剤師館女子寮です」
モーガンさんが答えてくださる。
「ああ、では……館長補佐とおっしゃいましたわね。母から館長かそれに準ずる方に渡せと言われ預かった手紙がございます。お受け取りくださいませ」
私はどうやら、探す手間なく目的の建物に着いていたみたい。
ならば。
お母様の手紙をお渡しして、リンド準男爵家へ連れて行っていただいt……え。
「エレナ、大至急母さn……じゃねえ館長に伝達。まずこれ読んでもらって、それから夫人に頼んで伯爵様にお渡ししていただいてくれ」
手紙を見ていたモーガンさんがエレナさんに、手紙を封しなおして渡した……どういう事?
お母様の手紙が、伯爵様って方に渡るの?
「いただいたお手紙の内容が、薬剤師館だけでどうこうできる問題じゃないって事です」
よほど私がキョトンとした顔をしていたのか、モーガンさんが端的におっしゃった。
「少し時間がかかると思いますので、ゆっくりしててくださいね……ここは女子寮、本当なら自分はここにいちゃいけないんで退散します。長居したら寮長がとっても怖くなっちゃうんで」
ニヤっと笑って肩をすくめ、スッと出て行っちゃった……エレナさんとモーガンさんって、どういうご関係なのかしら。
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薬剤師が薬剤師の身分を持たない人に重要な連絡事項を託す際、基本的に肌身離さず身につける徽章をその人に託す事になってる。
その、徽章を託された人が来た……その時点で重要な情報伝達があるという事。
そう判断して、私は「上の者を呼んで来ます」と言って寮から出たわけだけど……館長のマリリン先生はシェルビーホール薬剤師館への納品と称して伯爵邸へ伯爵夫人のところへお茶しに行っちゃってる……となると。
「あとはモーガンしかいないわね……どこ行った?」
とはいえ幼児期ならともかく今は、自宅兼薬剤師館兼森番小屋の調剤室か鍛練場か馬小屋かを場当たりすればいるはず……私が7~8歳の頃からの「モーガンを探す=居場所を推測する」習慣は、たぶん30過ぎたと思われる今でも抜けやしない。
寮から調剤室までの間に馬小屋と鍛練場があるわね……覗いて行けばいいか。
モーガンは調剤室で解毒剤の研究中……と言えば聞こえはいいけど、この姿が実験中の狂科学者にしか見えないのよねぇ。
私やベテラン薬剤師達は約10年これを見てるから平気なんだけど……入りたての見習い女子や若いCクラス候補生女子が見ちゃったら一度は必ず泣くのよ、いろんな意味で怖いから。
「今、手とめられる?緊急なんだけど」
「どの程度の緊急?」
「エリーザ様が森から連れていらした15~6歳位の女の子が、青と赤の徽章を持ってたの」
それを聞いただけで、狂科学者から館長補佐の顔になった。
そういう変わり身の早さはすごいと思う。
「知ってる子?」
実験用の上着を脱ぎながら訊くモーガン。
「いいえ知らない子よ……もう1回着るつもりならハンガーにかけなさい。着ないなら洗濯に」
脱ぎ捨てようとするから、一声追加。
「わかってるよ……ったく仕事と関係ない部分じゃオレいまだに信用ねえんだなぁ」
ええ、油断すると服は脱ぎ散らかす物は食べ散らかす……モーガンが7歳位まで私が後始末してた気が。
育児を卒業したベテランおかあさん薬剤師達に「本人のためにならないから手を下すのはやめなさい」って言われて、口うるさく言うだけにしたけど……もう28なんだったわ、忘れそうになるけど。
「で、その人は今どこ?」
移動しながら訊いてくる。
「女子寮の客間」
「……オレ入っていい?」
「お話をうかがう間だけなら」
本来は男子禁制の女子寮だから、いくら役職持ちであっても理由なくば男は入れません。
「了解、寮長殿」
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昔はクロードとお母上の家だった女子寮の客間にいたのは、服装以外とうてい庶民とは思えない所作の女の子だった。
森の中で父さんと会ったっていう結構胆の冷える状況だったはずなのに、あの容貌に一切言及しない時点で推して知るべしってとこだ。
ガーネットとだけ名乗ったこのお嬢さんは、お母上から預かったという手紙を差し出してきた。
封を切って中を見た……こんな上質感たっっぷりのご立派な封筒と便箋を使って手紙を寄越せる人は、国王陛下かそのご親族位のもんだぞ。
サン・トリスタン王国薬剤師館・館長様。
不躾なお手紙をとんでもない方法にて差し上げるご無礼をお許しください。
私は、タリア・ローウェル・ルブランと申します。
子細あって、ルブラン帝国皇嗣妃になっております。
現在まで細々と帝国で薬剤師をこっそりやってまいりいましたが、このところ夫と義父の体調がすぐれない状況が続いております。
私がどうにかしてやりたいのですが、当方に薬の素材を届けてくれる業者は年に4回しか入国を許されておらず、かつ先日帰路に就いたばかり。
その上何を盛られているかの判別も今の私では子の体調に影響を及ぼす可能性があるので出来ない状況です。
誠に勝手で不躾なお願いでございます。
薬剤師を派遣していただけないでしょうか。
この手紙の差出人は、皇嗣妃。
皇嗣妃の義父、っつったら……皇帝、だよな。
で、ガーネットさんはお母さんからの手紙を持ってきた。
……って事は。
ガーネットさんはルブラン皇帝の孫か!
どおりでオレをあのおじさまのご子息だなんて丁寧に言うわけだよ、育ちの良さ最強じゃねえか。
「大至急母さn……じゃねえ館長に伝達。まずこれ読んでもらって、それから夫人に頼んで伯爵様にお渡ししていただいてくれ」
手紙を封筒に入れ直してから、オレはエレナに指示をとばした。
おあつらえ向きに今日の母さんの行き先は伯爵邸だ……どうせさっさと納品済ませて伯爵夫人のとこでまったりしてんだろ今頃。
まったりタイムを奪って悪いが、思ったより早く事が進むかもしれない。
準備だけはしておこうか。
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さっさと納品を済ませて、伯爵邸本館でアリアドネとお茶を飲んでいたら、エレナがきた。
聞けば、徽章を持った人が手紙を持ってきたと。
その手紙を渡され、一読して……驚いたのなんの。
同期の薬剤師ローウェルが隣国ルブラン帝国の皇嗣妃になってた。
どういう経緯で薬品取扱行商人が皇嗣妃になったのか問いただしたいところだけれど……手紙の内容を見るに、それどころじゃない。
それにエレナからの情報だと、ローウェルの娘……すなわち皇嗣殿下のお嬢さまが、護衛もなく1人で手紙を持ってきたんだとか。
「確か、帝国の皇嗣殿下のお子さまは……上のお子さまはエリーザと同い年のお嬢さまだったわね」
「それと今年で6歳の坊ちゃまは大々的にお披露目されてたっけね……それから手紙には書かれてないけど、もしかしたら妃殿下は今妊婦さんだよ」
「え」
「妊婦薬剤師がやっちゃいけない職務があってね、要はそれをやって欲しいっていう依頼なんだよ、この手紙は」
元通り便箋をたたんで封筒に入れ直し、アリアドネに渡した。
「伯爵様に直接渡してもらえる?機密文書並みの内容だから、できるだけ人目につかないように」
アリアドネが怪訝な顔をした……頼み方がおかしいのはわかってるけどさ、仕方ないんだ。
隣国の内政に関わる重要な書類みたいなもんなんだよこれは。
それから、エレナに指示を。
「今すぐ戻って、完全装備で伯爵邸に来るようモーガンに伝えて。悪いけどエレナも完全装備でまた来て。お手紙のお嬢さんも、外出できるようであればできればお連れして」
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アリアドネから受け取った隣国の皇嗣妃殿下からの手紙を一読したが、どうやら薬剤師同士でないとわからない表記になっているとしか思えないので解説してもらわねば。
「マリリンはモーガン君とエレナさんをここへ呼んでいたわ。あと、皇嗣令嬢……っていうのかしら?お手紙を持ってきたお嬢さんも」
「人数が多いな……では、広間に入ってもらおう。薬剤師がからむ話なら、イリーナにもいてもらおうかな」
「なら、シャルルとクロードもいてもらわなければいけないわね」
広間には、シャルルとクロードの他にルブラン帝国皇帝陛下のお孫様のガーネット様・テイラー&テイラー薬剤師館の3人・元テイラー&テイラー薬剤師館のイリーナと……ちょうど来あわせたエミリーさんとアルフ君もいた。
ちびっこ達も4人。
「子供達はどうしましょう?」
「侍女と御者にみさせましょう」
アリッサとその従兄弟達の4人位なら、既婚者でなくとも育児経験のあるうちの者なら大丈夫……なはずだ、たぶん。
「すみません、レイモンドとハロルドは食い物でなんとかなります。ガブリエルは……やっぱり食い物ですかね……口に物が入ってる間は静かです……すみません」
いやアルフ君、謝らなくていいよ……6歳3歳1歳の男の子なんてそんなものだろう。
「食べてるか走ってるか寝てるかしかしないです、うちの3人。今日は晴れてるからお庭の芝生に放牧してくださってかまいません……行ってはいけない場所に入り込まないようにだけお願いします」
エミリーさん……息子君達を放牧と言ったね。
「追いかけるのは体力の無駄遣いにしかなりませんので、おやめになってください。特に侍女さま。上の2人は遠くからでもオヤツあるわよと一言大声で呼べば確実に戻ってきます」
アリアドネとマリリンさんとエレナさんが噴き出し、クロードとモーガン君とアルフ君の目が泳いだ……幼い頃オヤツで釣られた3人組か君達は。
「いい?大人のいう事ちゃんときくんだよ?」
「はあい!」
すっかり肝っ玉かあさんの貫禄がついてしまったエミリーさんがいうと、息子君達は元気に返事をして侍女と御者についていった。
「あ……おーいレイ、ハリー!ここの芝生はむしるんじゃねえぞ!」
アルフ君が子供達の背に向けて叫んだのを聞いて、アリアドネとマリリンさんがこらえきれなくなったらしく大笑い。
「アルフ君の口から『芝生をむしるな』って聞けるようになるとはね!」
君は、芝生をむしっていたのかい?
「モーガン達もいずれは叫ぶ羽目になるって」
……全員やってたのか。
「さて……大人だけになったところで、大事な話をしよう」
真剣な話をしなければならない。
「ルブラン帝国に住んでいる薬剤師の方から手紙が届いた。こちらのお嬢さんが届けてくれたわけだが……お嬢さん、ガーネットさんといったね。あなたにわかる範囲で、説明を足していただきたい」
エミリーさんがハッとした顔をして頭を下げた……さすが帝国出身なだけはある。
「祖父と父は、2週間ほど前から急に体調を崩し始めました。母のもとを年に4回訪ねてくれる王国の行商人のおじさま達は3週間前に帰国なさいましたので、追加で注文できなくて困り果てておりました」
ガーネットさんは大きく息を継いだ。
「母はこちらの方々にご無理を申し上げましたのでしょうか?」
「いいえ。旧知の仲間からの救援要請ですので、すぐにでも行ってあげたい……ところですが、お国では外国人を排斥しようとする勢力がのさばっているとうかがっています。そこへよそ様からお預かりしているお嬢さんを送り出すわけにはいかない」
マリリンさんが、いやにはっきりと言う。
「ですが。うちの薬剤師館にはよそ様からお預かりしているお嬢さんではない薬剤師が1人いるのでご安心ください」
……そもそもお嬢さんの範疇でもないね。
「モーガンにエレナを助手としてつけて向かわせます……うちの娘じゃないけど、他のよそ様のお嬢さんとは一線を画してますので」
親が探しに来ないまま20年以上経過した預かり子だから、もうテイラー夫妻の娘の扱いかと思っていた。
「薬剤師派遣の件はこれでよいとして……ガーネットさん、あなたのお祖父さまとお父さまに今何かがあったらお国は大変な事になるのだよね?」
含みをもたせて訊いてみた。
「……はい。祖父が身罷れば父が継ぎますが、その父まで身罷れば弟が継ぐまでの間叔母と私が間をつなぐ事となります」
「確か叔母さまはお独り身でいらしたな」
「はい。若い頃はいろんな意味でよく襲われたと申しております……もちろん生命その他に何事もなく解決しておりますが」
「ガーネットさんご自身は?」
「先日襲われかけましたが、ことに及ばれる前に蹴りあげて逃げて参りました」
「それは……その、蹴った足はご無事で?」
「いまだに多少の不快感が残る程度で、無傷でございます」
「それは……ようございました……」
よかったのか、よくなかったのか……蹴られた側は自業自得だろうけど。
「教わり方がよかったんだと思います。微笑んで油断させて近づき、両手で肩を押さえ込んでまずはひざで。あげた足を一歩ひいた勢いをのせて逆側の足を振り上げてもう一撃……と入手した教本に書いてございました」
私を含め、モーガン君以外の男が全員青ざめた……二度蹴りされたのか。
「あー……お役に立てて何よりです。たぶんその護身術教本、うちで作ったやつです」
モーガン君が言った……ああそうか、この場合のうちは薬剤師館じゃなくて森番小屋のほうだ。
「父が言うのを母が横で書き取ったものです」
「では……表紙裏のあれも?」
「あれは……大事なこととはいえ、あまり声高におっしゃらないでください。いくら何でも、その……品がよくありませんので」
ああ、あれだね……悪意をもって近づく男の股間に責任をとる必要はありません。つぶれようがちぎれようが、それは襲撃者の自業自得ですっていう、あれ。
マーサとハンナに渡すべくもらった時に見てしまって縮むかと思った覚えがある。
「基本的に男性には見せないようにしてるんですが……」
「男が言っても説得力ないよ?」
クロードがつっこむも。
「オレは体をはった制作者側だ」
ぼやくモーガン君。
「実際にそう動けるかどうか、やってみたんだよ」
「え」
「できない動きを書いても仕方ないからエレナとモーガンで試したんだ……それこそうちにいっぱいいるよその息子さんで実験なんてできないからね」
モーガン君にジットリとにらまれたマリリンさんが笑った……笑うところじゃない気もするけど。
――――――――――――――――――
ガーネット嬢……いやガーネット皇女は今国に戻るのは危険だとの父上の判断で、しばらく伯爵邸に滞在していただく事となった。
「私、リンド準男爵領に行く予定だったんですけど……祖母の実家があるとかで」
「ああ、あの子宝の聖地みたいなリンド領……今でなくてもいいでしょう。ここから離れていますので、手薄な警護でお送りするわけにもまいりません……うちの娘ならともかく」
父上、最後に本音がもれています……。
「国境の橋から先、皇宮までの道がおわかりの方はいらっしゃいます?」
皇女がお尋ねになる。
「私は熟知しているので目をつぶってでも行けますが、今は橋を渡れませんので……」
元帝国民のエミリーさんが言う……怖い怖い、アルフの目が怖い。
「ゲイブがお兄ちゃんになるからな、連れて行きゃしないよ」
モーガンが安心させるように言った。
「チャールズ引っ張って行きゃいいと思うので、呼んでもらっていいですか」
「え、今いるの?」
「おそらく今頃カートランド大街道に向けて歩いてると思います。馬車代を王都でのんじゃった罰として、歩いて帰ってもらってますから」
きびしい……いや、当然か。
「ガーネット様がいらっしゃるとわかったら腰ぬかして自力歩行できなくなると思いますので、そこだけ内緒にして呼び戻してください……おそらく最速で進んでいてもハマー大街道に出るか出ないか位だと思います」
案内人も決まった……本人の同意はまだだけど。
「クロードには、私の名代として先方で会談してきて欲しい。もちろん、先方の体調が戻ってからだが。2度も案内をお願いするのは心苦しいので、一緒に行ってもらえるかな」
案内人の同意はまだだというのに話を進めてしまう父上。
「それはかまいませんが……」
「なに、護衛ならモーガン君がいるじゃないか」
「え、この全闘技大会オール出禁のチンピラ剣士が護衛ですか」
「言ったな!おい、表に出ろ決着つけてやる」
「ハンデをよこせよ、レベルが違いすぎるんだから」
口論になりかけた……が。
「ハイ今はそこまで!ガーネット嬢がビックリなさってるじゃないか」
アルフがいつものようにクロードとモーガンの頭をはたいて言った。
この友人歴28年の2人の口論に割って入れるのは、友人歴23年のアルフ位のもんだ。
「アルフ君。ガーネット様もだけど、あなたの奥さんもビックリしてるわよ」
エレナさんが笑いながら言った……本当だ、ものすごくビックリしてる。
「……アルフが、伯爵家のご子息叩いたぁ」
小声でつぶやいてる。
「大丈夫、あれ位は私が知ってる5歳からずっと……クロードが伯爵家のお子になる前からだもの、やめられっこないわよ」
エレナさんの説明に、エミリーさんさらに驚いた顔になった……え、知らなかった?
誰も言わなかったっけ?伯爵家の家族構成……言ってなかったみたいだね。
――――――――――――――――――
僕は、モーガン達にくっついて橋を渡って帝国へ行く事になった。
皇帝陛下か皇嗣殿下と極秘で会談をしてくるという指令だ。
これまでに他領で領主と極秘会談は何度かやったけど、他国の元首とは初めてだ。
だけど何とかなるでしょ、お父さまの委任書簡も持ってるし。
でも。
この3人組……知らない人にはどういう関係に見えるんだろう?
身分を隠したつもりが、会話と手紙の内容で即時バレちゃっています……が、誰も口に出して言わないw
みんなオトナwww
そして。
派遣が決定していきます。
(なお、文中にあります「上質感たっっぷりの」の「っ」が1こ多いのは誤りではなくわざとです。一般庶民が普段づかいになどとうていできないような超高級品を見た庶民モーガンの感想なので)




